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【自民党は不公平】自国への投資はケチるがアメリカには80兆円を差し出す

13〜19分

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自民党・公明党政権はこれまでも日本の将来には投資をしてこなかった。食品価格が値上がりするなかで消費が停滞することがわかっていながら消費税の減税を嫌がり、ガソリン税減税も渋ってきた。また、そもそも公教育への投資も世界的に低いレベルにある。今の政権は日本の将来には全く出資しない政党だ。

にも関わらずアメリカに言われると簡単にぽんと80兆円を差し出してしまう。アメリカの将来の雇用を守るためのお金ならいくらでも準備できる。

この国の政治家たちはあからさまに不公平な状態にどのように対処するのか。今日本は岐路に立たされている。

と煽るのはこれくらいにして関税とそれに付随する80兆円ファンド問題について引き続き分析したい。煽った理由は文章の最後に説明するので野党の党首の方はぜひ参考にしていただきたい。

赤澤経済再生担当大臣がNHKの番組に出演し80兆円ファンドについて説明したそうだ。

赤澤大臣によれば日本政府が実際に出資するのは1〜2%程度。利益の90%をアメリカ合衆国が取るというのはその出資分の話に過ぎないつまり日本政府が実際に約束したのは8000億円から16000億円の間の話ということになる。Bloombergは既存の枠組みで賄える範囲を超えているとしているのでおそらく「法律改正を行うつもりがない」日本政府の想定はこの程度なのだろう。

ではこれは「事実」なのか。

ただこれがリアリティ・ショー政治に巻き込まれたことで巨神兵のように独り歩きを始めてしまったというのが今回の真相である。ポスト・トゥルースの時代において事実はこの暴れ出した巨神兵の方であり日本政府の認識などどうでもいいことだ。

つまり、第一の問題はトランプ大統領の頭の中の妄想(彼らはこれをファクトと呼ぶ)と日本側の計画が合致しているかどうかだ。合意文書が作られないうえに、25%関税に逆戻りするのかはトランプ大統領の頭の中の妄想との比較において行われる。

石破総理はトランプ大統領と会談するつもりはないようなので相手が「話が違う」と騒ぎ出した瞬間にすべてが崩壊する。巨神兵が暴れ出すのである。あるいは真水が「1%しかない」ことに対してトランプ大統領はまた狡猾な日本に騙された!と立腹するかもしれない。時事通信によればトランプ大統領は巨額の資金を得たと吹聴して回っているそうだ。

第二の問題は少し複雑だ。

赤澤大臣は「このままでは日本の利益が失われる」と言っている。主に自動車業界の当座の利益を指しているのだろう。これは自動車産業が国内で雇用を生み出し経済波及効果があるという前提においては正しい。しかし日本の企業はアメリカに工場を作り賃金も利益もすべてアメリカに還元されるようになってきている。

確かに当座の利益は守れるかもしれないが今回のファンド話は日本政府が保証人になってすでに進行している日本の経済の空洞化をさらに進めますと宣言しているに等しい。ダイヤモンドオンランに「長期的には日本の利益が失われるだろう」という記事が出ている。

そもそも日本政府は大阪から繊維産業が流出したときも家電産業が中国製に置き換わったときも何もしなかった。厳密には対処しようとしたが経済産業省が絡むと事態は悪化の方向に進む。液晶パネル事業などがその一例だ。

わかりやすく言えば石破政権は地方創生どころか地方破壊を進めていることになるがそもそも石破政権には戦略的アプローチがない。このため個別政策の整合性をベンチマークできないのだろう。

そもそも日本がこれまで蓄積してきた利益が日本国内を素通りして海外で運用されることが問題なのだからこれを何らかの形で還元して戻す必要があり、そのために今回のファンドを戦略的に利用することはできた。

政府は税以外の財源を得ることとなり日本の将来世代に向けた投資の原資を得ることができるようにもできた。さらに日米同盟の安全保障の連帯をトランプ大統領の好むビジネスパートナーシップに変えることもできたのだろう。アメリカ合衆国政府にはとにかくお金がないのだからここはうまく立ち回るべきだった。

しかしこの2つの論点を読んで理解できる人がどの程度いるだろうかと言う問題がある。そもそもこの時点まで文章を読み進めることができた人はどの程度いるだろうか。

これまでの議論を見ているとどうも日本人は戦略的な思考を持たないようだ。

代わりに日本人が何に反応しているのかを観察していると「相対的な損得感情」に極めて敏感であることがわかる。要するに自民党は「あなたの利益」を優先してくれるんですか、それとも「あなた以外の利益」を優先してくれるんですか?と言う問題だ。

ということでこの問題を扇情的に説くならば

あなたの消費税・あなたのガソリン税の減税を渋っていた自民党はアメリカに要求されるとあなたの80兆円をやすやすとアメリカに引き渡してしまう情けない政党だ

と表現すればいいことになる。

公的支出の教育費割合 日本は8% OECD加盟国で3番目の低さとという記事がある。日本政府はとにかく未来に投資しない。だが、この不公平はこれまで世代間の不公平として語られてきた。国内問題は国内問題として処理されてきたからだろう。

OECDは「日本は公的な支出の中で教育費が占める割合が低く、将来世代よりも、高齢者に対してより多く投資している現状がある。日本は若者が減っていくからこそ、教育の質を高め社会を支える人材を育てる必要がある」としています。

公的支出の教育費割合 日本は8% OECD加盟国で3番目の低さ(NHK)


ただ、これまで政権を獲得する可能性がある政党はこうした「あなたとあなた以外」の分断を控えてきた。「明日は我が身」だからである。また日本人は強いものに対しては非常に屈折した態度をとるので今回の動きが反米運動に結びつくこともないだろう。戦略思考を持たない日本人は「自動車産業を守るのか」「将来の産業育成を守るのか」という二者択一もできないだろう。

眼の前にある問題を正面から解くことができないので議論はますます屈折する。そして根底にある「どこかモヤモヤとした気分」はいつまでも晴れない。

このようにいったん議論が屈折するとそれを解きほぐすのは極めて難しくなる。おそらく有権者はなんかモヤモヤした既存政党への不信感だけを持ちポピュリズムに傾斜するはずである。

扇情的に問題を煽る政党が出てきたときに与党や野党はどう答えるのか。もう一度考え直してみるといいだろう。

ポピュリズムは東京都知事選挙、兵庫県知事選挙(やりなおし)、東京都議会議員選挙、参議院議員選挙と政権選択に関係がないところから徐々に広がりを見せている。

おそらくこれは偶然ではない。インフレが始まったことでアベノミクスが氷漬けにしてきた問題が次々と浮上してきた時期に重なるのである。さらに国際戦略上日本を安定させてきたアメリカ合衆国そのものが日本の安定的な構造を破壊しようとしている。

おそらく石破総理は変化に対する回答は持っていないのだろうし自民党に石破総理に取って代わるビジョンを持った人もいないようだ。とはいえ野党に確たる答えがあるとも思えない。

ここは石破総理にすべての問題を押し付けたままで自分たちは何もしないというのが「政治家にとっての」最適解と言うことになるのかもしれないが、おそらくこれは国内に蓄積しつつあるポピュリズムを肥え太らせることになるだろう。