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【疑問氷解】なぜリベラル連合政権などありえないのか

7〜11分

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読者意向調査の結果「リベラルが結集して新しい政権を」という声が高かった。一応真剣に考えたのだが「ありえない」という結論に至った。本気でリベラル結集を望む人たちは、これを参考にしたうえで行動を練り直せばいいということになる。

組織票が目減りする中で無党派層・市民運動票を奪い合う構造があるため協力体制が作れない。組織票が回復しなければこの傾向は今後ますます激しくなるだろう。

時事通信が比例票の行方について書いている。立憲民主・国民民主・参政党がだいたい同じくらいの票を取っている。立憲民主党は前回の参議院議員選挙と同じくらいの得票だったのだが衆議院選挙と比べると票が落ちている。おそらく政権選択選挙だったために立憲民主党への政権交代を望む人がそれなりにいたのだろう。またお灸をすえるために戦略的に立憲民主党を選択した人もいただろう。

と根拠なく書いたあとでバックアップするための記事を探したところ朝日新聞の記事を見つけた。

以前「立憲民主党ピコピコハンマー論」というのを書いたことがある。立憲民主党の存在意義は「政権の選択肢であり続ける」ことなのだ。

時事通信は今回の選挙では立憲民主党と国民民主党の連合系候補の明暗が別れたと書いている。国民民主党は手取りアップで現役世代を惹きつけた。この票が結果的に労働組合系の候補の当選につながっている。つまり労働組合の支援票だけでは勝てなくなっている。

連合の芳野会長は「蓮舫氏の擁立で労働組合系の人が押し出されるのは困る」と主張していたとされる。週刊誌は面白おかしく「女の闘い」を書きたて連合が否定の声明を打ち出す騒ぎとなった。

ここからも連合が組織の既得権を維持するために無党派や市民運動に頼っている事がわかる。連合の票が落ち込めば落ち込むほど獲得競争が起こり「協力しない理由」が生まれる。

蓮舫氏は今回の選挙で33万票を集めている。市民運動系の人々が結集したと言ってよいだろう。すでに分析したように生活が苦しくなれば包摂主義を掲げたリベラル勢力は躍進できないと予想できる。他人の人権に配慮する余裕がなくなるからである。

元の消費者運動に戻ると言う選択肢もあるが現在の女性たちは労働力として経済に組み込まれているため市民運動に関わる余裕がない。おそらく新しい消費者運動・市民運動はネットを活用するなどして忙しい消費者を活動に動員する必要がある。そして活動の中心は(スタグフレーションが続くと仮定するならば)人権でなく消費者防衛になるはずだ。

こうした状況では労働組合が市民運動や無党派を奪い合う形となるためリベラル勢力の結集などできないということになる。単に腹を立てる人もいるかも知れないが、裏を返せば「協力する体制」さえ作れればよいことになる。ただし、今のところその兆候はない。

おそらく今回最も懸念されるのは前回の衆議院選挙と比較して比例票が落ちているという点にあるのだろう。

政権交代を期待する人は最も手っ取り早い方法として野党第一党を選択するものと思われる。つまり立憲民主党はそのつもりがなくても「自分たちは政権を狙っているのだ」と言い続けなければならない。現在大連立が囁かれているが、おそらく自民党と手を組んだ時点で「最も商品価値があるイメージ」を売り渡してしまうことになる。いつかは政権が取れるかもしれないと言う見込みだけが立憲民主党のウリになっている。

一方国民民主党にはそのような縛りはないため「身内」と協力するよりも自民党と部分的に手を組んだほうが有利になるだろう。国民民主党は政策に自由度を持ち無党派層を獲得する施策を打ち出すことができる。そしてこれは国民民主党だけでなく立憲民主党の中にいる小勢力にも同じことが言える。

つまり彼らには協力しない動機はあっても協力する動機がない。仮にトランプ関税により海外で稼ぐ企業の地位が凋落すれば連合の求心力はますます失われ遠心力のほうが大きくなる。

リベラル系勢力の結集を願う人達はこれらの点を踏まえたうえでそれを乗り越える方策を考える必要があるということになる。応えが見つかった時点でコメント欄などで教えていただけると幸いだ。