「高市早苗首班でこれからは日本のターンだ」というコメントを貰い頭が悪いなあと思ったのだが意外と気に入ってしまった。この言い方を借りると玉木雄一郎のターンが始まりそうだ。なぜそうなってしまうのか。
立憲民主党が「玉木雄一郎首班でもいい」と言い出した。公明党が政権離脱する可能性が出てきたことで、立憲民主党・維新・国民民主党で首班が取れる可能性が出てきたからである。ちなみに首班指名は次のようなルールで行われる。
- 過半数を取った人が出ればその時点で指名完了
- 過半数が出なければ決選投票が行われ数が多かったほうが首班
- 衆参で意見が合わないときには話し合い
- 話し合いが上手く行かなければ衆議院の議決が優先
である。つまり衆議院で一番多くの議員の支持を集めた人が勝つ仕組みになっている。これまでは公明党が自民党に協力する前提が置かれていたのだがこの前提が崩れつつある。
まずはドライな情報からまとめる。立憲民主党は玉木首班の可能性を示唆するも榛葉幹事長が難色を示したと時事通信が書いている。
玉木雄一郎氏が立憲民主党の首班指名を受け入れない理由は3つ考えられる。
- 仮に首班指名を受けたとしても「政権内少数派」に置かれる。野田佳彦代表は党内にいるサンクチュアリ(主に社会党系議員から構成される)の意見を抑えられておらず、玉木氏も同じ境遇に置かれることは明らかだ。
- 自民党も国民民主党に期待しているため、双方を競わせて「高く売れる」方に協力したほうがトクである。
玉木雄一郎氏が出した答えは「自分が高く売れる状態を長引かせる」ことだった。石破総理を温存したままで国会を開き「政策審議」を行えと要望した。このサスペンデッドな状態が長引けば長引くほど活躍の舞台は増える。つまり第3の理由は「決まらないほうが玉木氏にとってオイシイ」からである。
おそらく玉木雄一郎氏は現在の状況で政権を担当してしまうと国民に痛みを伴う改革を飲ませなければならないということがよくわかっているのだろう。ヒールは自民党に押し付けたい。
ただしそんな令和スーダラな玉木雄一郎氏を一概に批判する気になれない。実は最新の統計によると実質賃金が8ヶ月連続でマイナスになっている。また高市トレードの影響で急速に円安が加速。ついに153円線にタッチしそうなところに来た。かなり公算が高いとされていた日銀の利上げが難しくなっているからだ。円安が進めばおそらくインフレ懸念が高まり更に自民党が批判されることになる。
バブル経済崩壊後の日本政界は国民生活そっちのけで小沢一郎を中心にした不毛な政界椅子取りゲームを行ってきた。こうした不毛な議論を避けて「国民生活について考えるべき」という主張には一定の説得力がある。
ただ締切がなくなれば「自民党のお気持ち」を確かめたい公明党は政治とカネの問題でまとまらなくなり「首班指名は補正予算の後」ということになってしまうかもしれない。つまり自民党総裁でない人が総理大臣として政府を率いる前代未聞の状況が生まれるということになる。
