アメリカ合衆国とイランの戦争は、単なる中東の軍事衝突では終わらなかった。イスラエルの国内政治、イランの体制変化、アメリカ社会の混乱、そして日本の政治と経済にまで影響が広がり始めている。
特に重要なのが成長の痛みに耐えられなくなったアメリカ合衆国と継続する戦争の痛みに耐えられなくなったイスラエルの思考停止ぶりだ。国際法のもとの秩序に依存する日本も安全保障の基盤が大きく揺らぎつつある。
組織の意思決定に責任を持つビジネスリーダーは、今回の戦争を単なる軍事衝突として捉えるべきではない。そこには文化的・心理的要因が複雑に絡み合っている。感情や溢れる情報に流されることなく、冷静に状況を見極める必要がある。いま私たちの社会がどのように変わりつつあるのかを考えることが求められている。
本特集では、その変化の背景にある構造を静かに読み解いてみたい。
もともとイスラエルのネタニヤフ首相は、国内の政治危機を乗り越えるために強い敵を必要としていた。結果としてアメリカを巻き込み、トランプ大統領を戦争に引き込むことに成功した。一方、イランでは最高指導者ハメネイ師の後継としてモジタバ師が登場し、革命後のイランでは本来あり得なかった世襲体制が成立する可能性が出てきた。戦争は体制を揺るがすどころか、むしろ強化してしまった側面がある。
アメリカ国内でも混乱は広がりつつある。エマニュエル・トッド氏が長年唱えてきた「アメリカ崩壊論」は、これまで半ば思想的な議論として扱われてきた。しかし政治的混乱、社会不安、テロの兆候などが重なり、その議論は以前よりも現実味を帯びてきている。
そして、この混乱は日本にも無関係ではない。トランプ大統領の強硬姿勢は原油価格の急騰と株価の下落を引き起こし、日本経済にも衝撃を与えた。トランプ大統領との関係を政治基盤の一つとしてきた高市政権にとっても、この事態は大きなジレンマを生み出している。
つまり今回の戦争は「中東の戦争」ではなく、むしろ世界政治の歪みを一斉に露出させる出来事になったと言えるだろう。
金融市場の激しいん反応を受けてトランプ大統領はCBSテレビのインタビューに答え戦争はほぼ終わったと表明した。その後自身のゴルフコースから共和党議員に向けて同様のメッセージを発信したようだ。これを受ける形で原油価格はやや落ち着気を取り戻している。今回もトランプ大統領を止めたのはアメリカの民主主義ではなく金融市場だったことになる。今後のイランの反応にも注目が集まる。

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