赤澤経済生成担当大臣が帰国後のインタビューに答え今回の交渉の内幕が徐々にわかってきた。要するに重要なことは何も決まらないままだったようだがトランプ大統領が成果を焦ったことで交渉がぐちゃぐちゃになってしまったようだ。
どうやらアメリカ側の高官もトランプ大統領がどうすれば関税交渉を受け入れるのかがよくわかなくなっていたようだ。赤澤経済再生担当大臣をラトニック商務長官の自宅に呼び予行演習をさせたと読売新聞は伝えている。
結果的にトランプ氏が双方の担当者を執務室に招き交渉結果に筆を入れると言う図式を作り出すことになった。つまりディールごっこを演出することでトランプ大統領の自尊心を満足させようという戦略だったことになる。トランプ支持者に向けて交渉の天才トランプ大統領という偶像を作り出そうとしたのである。
これは交渉が妥結していないヨーロッパにとっては悪夢の前例だ。高官たちがまとめてきたディールが土壇場になってトランプ大統領に書き換えられるということを意味している。
トランプ大統領はエプスタインファイル問題を抱えており普通の精神状態ではない。トランプ氏の名前がファイルに記載されており5月には報告も上がっていたようだ。児童買春の記述もあったことから司法省側はこれ以上ファイルを公開することはないと約束したという。ウォール・ストリート・ジャーナルが内幕を報道し現在訴訟騒ぎになっているが「5月に報告が上がっていた」と言う報道は訴訟後に出されている。つまりウォール・ストリート・ジャーナルはかなり報道内容に自信があるのではないかと思う。裁判になれば何が報道根拠だったのかが明るみに出てしまう。
トランプ大統領はエプスタインファイルについて質問されるとオバマ氏の名前を連呼しロシアの選挙介入疑惑が!と叫びだすと言う状況が続いている。実際に政権はオバマ元大統領の訴追を検討し始めているとAxiosは伝えている。MAGAの批判の矛先をオバマ元大統領に向けたいのである。
Quoraで教えてもらったところによると薬価を50%や60%では駄目だ。いや、1,000%、600%、500%、1,500%下げるんだと主張しているそうだ。薬価の最恵国待遇プランだが製薬会社がこれを受け入れるかは未知数。そこで薬価の引き下げに応じない国からは自動車を輸入しないなどと言っているそうだ。そもそもディールとしても無茶苦茶だが、算数としても間違っている。100%引き下げると0ドルになるのでそれ以上引き下げられない。算数を理解していないかまともに寝ていないのだろう。
こうした精神状態のトランプ氏にまともな判断能力があるとは思えないが、部下たちはどうにかしてトランプ氏の機嫌を取る必要がある。石破総理は石破総理で崖っぷち状態。その間に立った赤澤経済再生担当大臣はおそらくかなり「いい人」のようだ。ヨーロッパの交渉団がとても応じないようなディールごっこに付き合ってあげたのだろう。
ラトニック商務長官は証券会社のCEO。財務長官人事ではベッセント財務長官とライバルだった。トランプ大統領はこの2名をくっつけることでライバルとして競わせようとしたのかもしれない。
結果的にトランプ大統領は交渉団の前で「指導力」を発揮。4000億ドルのディールを5500億ドル(80兆円)に引き上げた。また取り分も50/50から90/10に変えさせている。そしてアメリカ側のファクトシートによるとこれは法的拘束力を持った取り決めになる。トランプ大統領をヒーローにする舞台づくりを行ったのはラトニック商務長官はだった。トランプ大統領はこれを「前払い」としている。ラトニック商務長官も日本は市場参加権を80兆円で購入したと説明している。
“But now, if some of the countries that pay 25% or more on orders complain, remember that Japan was willing to pay up front the $550 billion for that privilege of negotiating with the United States of America,” Trump later added.
Trump admin live updates: Trump denies wanting to cut subsidies for Elon Musk(ABC News)
しかしながら赤澤経済再生担当大臣は日本の記者団の前では「法的な拘束力を持った文章は作るつもりはないとしている。この説明は石破総理の戦略に合わせたもの。読売新聞によると石破総理は法的な合意文書を作る必要はないからトランプ大統領と会談はしないと言っている。二人が会談した瞬間に破綻が表面化してしまう。
この綱渡り戦略は日本の国益ではなく石破総理の椅子を保持するための戦略に過ぎない。いわば日本の国益と将来の種籾を盾にして石破総理が官邸執務室に立てこもってしまったようなものだ。
では実際にはどんな約束があったのか。ラトニック商務長官は投資の枠組みは今後詳細を詰めることになると言っている。
おそらくベッセント財務長官は今回のディールが生煮えであると見抜いており定期的にチェックを行い履行されていないと確認された時点で関税が25%に戻ると言っている。
赤澤経済再生担当大臣は契約をどう履行するか話し合った記憶はないと言っている。永田町の方言で記憶がないとは「事実は言えません」という宣言。
これは日本側ではベッセント財務長官が状況を監督すると言う意味だろうと捉えられているようだが、ベッセント財務長官がトランプ大統領に聞かれて説明した時に、トランプ大統領が話が違うと怒り出したらそこでゲームオーバーですよという意味なのではないかと感じる。
もともと共和党に近い日本の関係者たちは盛んにファンドの話を持ち出していた。このときはベッセント財務長官の狙いは為替ではなくファンドなのだなどいわれていた。だがベッセント財務長官は一切手柄話をしなくなった。共和党関係者が石破政権に入れ知恵し「日本発信のディール」を仕込んだのだろう。しかし最終段階で10/90と言うとても日本が飲めない修正が加えられてしまった。
どう考えても破綻するディールだが、石破総理の国内向けの恫喝は一定の効果を生んでいるようだ。下手に石破政権をつつくと絶好調(TOPIXは一時史上最高値を更新したそうだ)の株価が急落しかねない。青年局も議決権のある議員総会の開催を求めなかったそうだし、立憲民主党は様子見。麻生・岸田両総理大臣も田崎史郎氏に愚痴っただけだった。
ただ長期的には破綻が不可避のディールであり次の政権(自民党なのか非自民党なのかはわからないが)に巨大な爆弾を背負わせたということになりそうだ。
