2025年7月30日にMicrosoft企業業績が発表された。今回の注目ポイントはAI競争。投資家はMicrosoftを勝者認定しAmazonの株価は下落している。企業においてホワイトカラーがAIに置き換わりつつある事がわかる。
MicrosoftはAzureやその他のクラウドサービスの売上高が前年同月比で39%増加した。アマゾンの業績も決して悪くなかったが「他社に比べて見劣りする」という理由で株価が下落したそうだ。
予想外の業績に気を良くした投資家はMicrosoftの株式を買い進め、MicrosoftはNVIDIAに続いて4兆ドルクラブの2番目のメンバーとなった。
Microsoftの好調の原因は様々なところで語られているが、要するにビジネスユースでAzureへの囲い込みを行っているようだ。PCのOSからサーバーまでに一貫性をもたせ開発者にAzureを選択させる。スイッチングコストが高いため一旦プラットフォームが作られるとそれを変更するのは難しくなる。
AIはもちろんホームユースのユーザーの間でも使われ始めているが、ビジネスの現場で急速に広がっているようだ。すでにお伝えしているようにホワイトカラーの労働市場は急速に沈静化している。
アメリカは経済が加熱し人件費が高騰していた。優秀な人材を引き付けておくためには他者より高い賃金を支払い福利厚生も充実させなければならない。一方でトランプ関税の影響で事業業績見通しが立てにくくなっている。一旦雇用した人を雇い止めすることは難しいがAIであれば利用するリソースを削減するだけですむ。
Bloombergは各社ともデータセンターの増設を急いでいるとしているが要するに人からデータセンターへの投資の置き換えが進んでいるといえるのかもしれない。
社会的にはどのような影響が出るだろうか。
- エントリーレベルの仕事が削られることにより人材が育ちにくくなる。
- ブルーカラーに続いてホワイトカラーが削られることにより「分厚い中間層」に支えられてきた政治が不安定化する。
- 電力需要が逼迫する
など社会的な影響は多岐にわたるだろう。政治という文脈では日本はますますアメリカとの同盟に依存できなくなる。苛立った労働者はおそらくなにか代わりになるスケープゴートを探すだろう。
Microsoftもアマゾンも「隗より始めよ」とばかりに従業員の削減を計画している。
実際にMicrosoftのサポートに連絡をすると日本語ができないスタッフがサポートを担当することが多い。実はAIによる自動翻訳を使っている。またサポート文書の作成もAIを使って短時間でこなしているようだ。
これは日本人の感覚から見ると「真心がなくうけいれがたい」ように思える。特に顧客接点に「真心」を求める高齢の日本人は多い。
日本のホワイトカラーが極端なAI化を進めるかは未知数だが
- 日本でも「サラリーマン」の没落が進む
- 国際競争力をますます失う
という極端な2つのシナリオが確定していないように思える。
日本人は顧客接点に「真心」がなければと考える傾向が強い。だがそもそもスキマバイトなども広がっておりバイト店員などから構成される顧客接点はロボットのような対応しかできなくなっている。
例えばレジの自動化などありえないと思われていたが、人件費の高騰と人手不足が重なったことであっさりと自動レジへの乗り換えが進んだ。同じようなことはガソリンスタンドでも起きている。セルフ給油など危なくて仕方がないという評価だったがガソリン価格が上がるとあっさりとセルフ給油が増えた。もともと他人との関わりを嫌がり気軽に買える自動販売機好きというかなり極端な国民性なので、対人サービスに過剰な期待を持ちつつあっさりと機械化に馴染んでしまうという不思議な国民性がある。
その意味では日本は対応が遅れ競争力を失った後でサラリーマンの没落が進むという未来が待っているのかもしれない。
なお勝者もいれば敗者もいる。今回の敗者とされることが多いのはAppleだ。かつてMicrosoftはモバイル対応に乗り遅れた。当時はデザインが素晴らしいAppleがもてはやされたものだが、すっかり立場が逆転してしまっている。
Appleは明らかにAI競争に遅れを取っており、長年Appleを取材してきたBloombergの記者は「プライバシー配慮など競争に遅れた敗者の言い訳」と一刀両断だ。社内にプロダクトデザインの美しさにこだわる幹部たちが多いと言われておりAIの優秀な人材が他者に流れているという報道もある。
