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【極右政党?】共同通信の主張は正しいのか

11〜16分

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共同通信が「「極右政党が躍進」 英BBC放送が報道」という記事を出している。ヨーロッパの通信社は本当に参政党を極右と言ったのだろうか?

実際にBBCの記事を読んでみよう。BBCは「the small, right-leaning Sanseito party」と表現している。小さく右に傾いた参政党と訳すことができる。

他にも分析記事はあるのかもしれないが少なくとも検索をした限りはBBCが参政党をFar-rightと表現した記事は見つからなかった。ただしあとになって「記事のタイトルが極右になっている」という指摘をもらった。

毎日新聞はフィナンシャル・タイムズが参政党を極右と呼んだとは書いているがBBCの表現は記事をそのまま踏襲した書き方になっている。

このフッテージでは日本研究者(BBCではなく)が極右政党が台頭したとしている。ただこの研究者も様々な問題に解決策がないためその不満の受け皿になったというような分析をしている。「罰するために代替選択肢に投票した」というような言い方。

共同通信は社説代わりに発言を拡大解釈してしまうことがある。おそらくは共同通信自身が参政党は極右だと言いたかったのではないかと思った。社説がないのではと思ったのだが社説セクションは持っているようだ。ただしこれは共同通信が地方紙の社説を集めたもので共同通信の社説ではない。そんなに意見が言いたいなら社説を作ればいいのではないか。通信社にも表現の自由はある。

確かに今回の参政党の躍進を懸念する記事は多く出回っている。例えばCNNも右翼ポピュリズムと書いている。これは参政党側の「MAGAやAfDの運動を参考にした」とという発言を引用したものである。アメリカ合衆国はすでにMAGAムーブメントがかなり広がっており「日本にも同様の動きが広がったのではないか」と懸念しているのだ。

確かにドイツとフランスのメディアも参政党を極右と表現している。BBCもし敵があったようにタイトルでは極右としているようだ。

ただ、ここから先が少し変なのだ。明らかに極右的な主張を展開しているので「一体日本で何があったのだ?」と考えるキャスターたちは日本でどんな動きが起きているのかを熱心に専門家から聞き取ろうとしている。ヨーロッパと同じ動きが日本でも起きていると証明したいのだろう。

ところが日本とヨーロッパの動きをよく知っている人たちはヨーロッパの移民排斥運動に比べると日本の外国人排斥運動がそこまで本格的なものではないと知っている。そもそも外国人の数が全く違うため、彼らには「今ここにある危機」には見えない。

このため司会者たちが「日本で一体何が?」と聞いても全く話が噛み合わない。

このギャップを最も端的に捉えたのがBloombergである。【コラム】参政党は不満の受け皿、MAGA派とは異なる-リーディーとしており実態のある外国人排斥運動ではなく単なる不満の捌け口に過ぎないと看過している。

確かに天賦人権の軽視や外国人排斥などが一大ムーブメントに発展する可能性はゼロとは言えない。今後日本が経済的に低迷すればその動きは加速し「日本のラストベルト化」が進行するだろう。しかしながら、運動体を見ているとどこかサッカーの試合のようにも見えてくる。参政党代表の発言はどこかあっけらかんとしており周囲を呆れさせている。憲法草案を読んだことがない候補者がいると言ってみたり、国民主権の不在が気になるなら書けばいいじゃないかとも主張する。どうやらそれほど深刻な問題とは考えていないようだ。

普段はばらばらになっている人たちが選挙期間中だけつかの間の結束感を得る。そして試合が終わればまたバラバラの市民に戻ってしまう。その結びつきは極めて情緒的なものだ。

そもそも代表が「日本ファーストは選挙期間だけのスローガンだ」と主張しており、単なるお祭り民主主義で終わる可能性も否定できないのではないか。ただ、政治がすべて面倒を見るからみなさんは難しいことは考えなくていいという「自由からの逃走」という「福音」は危険だと感じる。

マスコミが過度に参政党を警戒するのはおそらく彼らが政治から排除されている・最初から興味がない人たちと対話したことがないからだろう。

普通の市民は外国人よりも遠い存在なので突然選挙で大きな塊が可視化されると巨大な化け物に見えるのかもしれない。左派リベラルの人たちにはぜひなぜ自分たちの主張が受け入れられなかったのかを見つめてほしいのだがその願いは届きそうにない。アメリカ民主党の凋落を見ているとリベラルの凋落がどんなに危険なものなのかを痛感させられるのだが日本のリベラルたちは自分たちの「正しさ」が伝わらないことに苛立ちをつのらせ続けている。彼らは2012年から10年以上もずっと苛立っている。かつて「安倍政治を許さない!」と言っていた人たちは今はどこにいってしまったのか?

いわゆるインテリと呼ばれる人たちも救いがたい。

玉川徹氏などは「投票率が上がるのも考えものだ」と主張している。直裁表現は避けているが自分たちの言う事を聞かない無知な有権者は寝ていてほしいということなんだろう。誇張だと思う人もいると思うので一応ソースをつけておく。本当にそう言っており番組の参加者たちも特に異論は挟まなかった。

あるいはこれが本物の化け物なのかそうでないのかは今後の参政党の「活躍」ぶりを見ればわかる。立花孝志氏のように政治運動にあまり興味がなく選挙運動がメインになっている政治家もいる。単なるお祭り民主主義なのか深刻な排斥運動なのかは今後慎重に見極めるべきで安易なラベリングに頼るのは却って危険だ。

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