立憲民主党・維新・国民民主党が党首会談を行った。もともと維新と国民民主党はゆ党戦略に傾きつつあり合意が得られる可能性はなかったため結果に驚きはない。
今回、最も残念だったのは立憲民主党が政権担当能力を示せなかった点にある。立憲民主党が抵抗勢力が陥りがちな罠にハマっていることがよくわかったが、残念なことに立憲民主党にはその自覚がなさそうだ。
おそらくこのままでは立憲民主党が政権を担当することはないだろう。
ゆ党戦略に傾斜する玉木雄一郎氏代表にはそもそも最初から協力のつもりはなかった。しかしSNSで「総理大臣から逃げたのではないか」と批判されたこともあり形式的には党首会談を受け入れた。
結局、玉木雄一郎氏の想定通り、立憲民主党は綱領改訂や一時停止を通じて殻を破ってみせることはできなかった。安住淳幹事長は「政権交代という大義の前ではそれ以外の問題は些末なことだ」と噴飯ものの国家観を披瀝。政権交代が目的化している立憲民主党の現状を暴露してしている。
立憲民主党は「今のところ平和安全法制は違憲になる運用をされていないから当面問題にならない」という認識を示し、綱領の変更に難色を示したとも伝わる。当面以外の問題が起きた瞬間に内閣は崩壊しますがやれるところまでやりましょうと言っているわけで、乾いた笑いも出てこない。
今回の本筋からは若干ずれるのだが、まず平和安全法制そのものについて整理してゆきたい。
安倍政権は閣議決定による解釈改憲を行い平和安全法制を成立させた。専門家たちは一部違憲の疑いがあると指摘していたがこの問題は10年経っても解決しておらず憲法改正議論が必要だ。
憲法改正においては立憲・参議院を中心に神学論争的な抵抗勢力がいる。このため国会議論も立憲民主党内での整理も進んでいない。
当初この文章を書き始めたとき「これはトランプ大統領のプレッシャーなのだろう」と決めつけたのだが、あとになって実はオバマ政権時代だったと気がついた。そもそも安倍政権はアメリカからの強いプレッシャーをあたかも重大な国家機密であるかのように隠してきたが、今のそのプレシャーがなんだったのかはよくわかっていない。
安倍総理大臣は「集団的自衛権の問題が解決してからアメリカは何も言ってこなかった」と発言したという記憶がある。ところがこれは村上誠一郎氏のかなり感情的な発言であって真偽が確認できない。
当時の状勢がどうだったのかがよくわからないうえにトランプ大統領の時代になって要求がどう変化したのかもよくわからない。だから、いまアメリカの要求がどのような状態にあり、どのような判断を下すのが我が国にとって損出が少ないのかも分析できないということになる。
蛇足と断りながらこの問題について触れたのは、野党である立憲民主党には情報が伝わっていないため、野党としての戦略が立てられないという現実があるからだ。
このため外交に関しては野田佳彦立憲民主党だけでなく小泉進次郎農水大臣も「外務省からブリーフィングを受けないと判断ができない」というような発言を行っている。
我が国は民主主義国と言いながらも実はアメリカ合衆国が許容する範囲でしか民主主義敵決済が許されていないという現状がある。このため玉木雄一郎氏が「外交安全保障政策」を持ち出した時点で自動的にゲームオーバーになってしまうのである。
つまり今回立憲民主党が綱領を変更しなかったことを以て「立憲民主党が政権能力を示せなかった」と分析するのはいささかかわいそうであるという見方はできるだろう。
では生活者目線を優先させてはどうか。
蓮舫氏はまずは政策に直結する物価高対策を実施すべきであると言っている。そもそも国家的な基本戦略が一致しない政権が物価高対策ができるのかについて検討したい。
おそらく「手当の充実」のレベルの問題解決は実現可能だろう。つまり補正予算・本予算を通じて手当を拡充するようなインフレ救済内閣を作ることはできる。しかしここで問題になるのが財源である。仮に新しい政権が財政拡張に傾くと市場は長期金利の上昇を予測し、物価高対策が物価高を作る。立憲民主党はこの問題を解決できるのか。
仮に今回現実的な政策連携を行うならば蓮舫説を一部取り上げて「インフレ対策を1〜2年程度行い成果が出ても出なくても一旦連携を取りやめる」という時限協定を加えるべきだった。
つまりデフレ経済からインフレ経済に移行する中で鎮痛剤的緩和措置を目指すという「痛み止め」内閣だ。
蓮舫氏や辻元清美氏などにこれを説明できるだろうか?と考えた。おそらく経済の基礎を理解していない人たちに根本的な問題を説明するのは無理なのではないか。つまりインフレ対策がインフレを招くと彼らが理解するのは難しいのではないかと感じる。
実は同じジレンマを玉木雄一郎氏と高市早苗氏も抱えることになる。
玉木雄一郎氏は大蔵官僚なのでおそらくこれを理解している。ところが自民党の中に高い壁があることがわかっているため「自分は安心してヒーローになれる」と考えているようだ。ところが高市早苗総裁は(おそらく無自覚に)インナーを税調から引き剥がしてしまった。
後は世論次第ということになる。
当然一般有権者は高市早苗氏の財政拡張政策を支援することになるだろうが、その結果として長期金利の上昇が起きる。投資家としては資金が返ってきさえすればいいが国民は物価高に苦しめられることになってしまう。国民がこれに耐えられるか。おそらく答えはノーだろう。
高市早苗氏は成長戦略ついてまとまった考えがなく「日本の成長を喚起する政策を財務省が考えるべきだ」と言っているがこれは実現しないだろう。公明党との協力において菅義偉氏は一切動かなかったようだ。背景にあるのは麻生太郎氏らに対する反発だ。つまり敵対勢力とみなされた財務省が高市総理を支援するとは考えにくく、むしろ「派手な失敗」を喜んでしまうのである。
これは民主党が政権を取ったときにも起きたことだ。当時の官僚たちは民主党政権を泳がせておいてあとになって泣きついてくるのを待っていたのではないか。結果的に野田総理は消費税増税を受け入れざるを得なくなり財務省の身代わりになって世間から猛烈に叩かれている。
