時事通信と共同通信が「茂木敏充氏が石破総理に退陣を要求したぞ!」と書いている。だが実際にはこの記事のタイトルは誇張されたもの。内容をよく読むと記事の中には「厳しい口調で退陣を要求した」という記述はない。
実際にYouTubeを見ると茂木敏充氏は実際には総裁選をやり直せと言っているに過ぎない。自民党の地方組織も様子見状態で石破総理退陣要求は思ったほど盛り上がっていないようだ。
読売新聞の号外や毎日新聞の観測記事など、マスメディアだけがなぜか異常に石破退陣論を盛りあげているが、有権者の視線はどこか冷ややかである。
背景にあるのはおそらく「自民党が次世代の解を持たない」からだろう。もともと日本の安定を望んでいたのはアメリカ合衆国。共産主義陣営と対峙する中で自由主義の成功を宣伝する必要があった。ところがアメリカ合衆国にはもはやその意志がなくしたがって自民党もアメリカにフリー・ライドして成功の果実を国内分配しつづけることはできない。
だが、メディアもこうした分析はせず、単純明快な「石破おろし」を期待している。
だから、今回もメディアはタイトルで煽っている。
茂木敏充氏のYouTubeでも確かにサムネに赤が多用されており「ケジメをつけないと!」となっている。
実際の内容を見ると鈴木貴子氏が茂木敏充氏をボスと呼び一生懸命に頑張った選挙戦をお互いに称え合うという極めて情緒的な内容になっている。永田町特有のグルーミングである。これが地方政治にどっぷり使った自民党の体質であり感覚なのだろう。
選挙戦の最後に茂木さんは泣いたそうだ。鈴木貴子氏は「なんと情に厚いリーダーなんでしょう!」と言っている。「どうぞご自由に」としか思えない。
茂木氏と鈴木貴子氏は最後にトップリーダーも含めて選び直しを行うべきだと主張。これを永田町流に解釈すると「石破総理に退陣を突きつけた」ことになっている。
確かに今回の石破おろしは麻生・茂木会談が起点になっており取りまとめたのも旧茂木派の議員だそうだ。これが事実上の退陣要求だと考えても大きく間違いではないだろう。
では実際に石破おろしの動きはどこまで広がっているのか。
共同通信が聞いて回ったところによると47都道府県のうち
- 辞任が必要:12
- 辞任の必要なし:3
- わからない・無回答・情勢を見極めて判断する:28
だったそうだ。
全部を合わせても47にならないので無回答の都道府県連があった上に28が「みんながどうするかを見て決める」と言っているとわかる。要は様子見なのだ。都道府県連は分配装置なので「下手に意見表明をして損をしては困る」と考える人達が多いのではないかと思う。
茂木氏は退陣要求は明言していないのでしたがって自分が総裁選に出るとは言っていない。だから茂木氏自信が将来のビジョンについて語ることもなかった。
自民党の総裁選挙はいろいろな人が出てきて日本の将来について語り「なんだか期待が持てそうだなあ」と夢をふくらませるために使われることが多かった。今回もおそらくそのような総裁選挙になることが予想される。これまで漠然と情緒的に夢を売り込めばなんとかなっていたということだ。トランプ大統領の言うように日本の政治はアメリカにスポイルされてきた。
しかしながら有権者は「目の前の物価高はどうしてくれるの?」「これまで日本は良くなりますよってさんざん言われてきたが良くなっているようには感じられないのだが?」と考えているはず。
さらに
どっちなんだ! とりあえず消費税とガソリン税を下げるのか下げないのか!
とイライラしている人も多いことだろう。
そんな中「未来」について語られても腹が立つばかりかもしれない。
現在の様子見の現状を見ていると石破おろしを正面から言い出す人がほとんどいないことがわかる。
現在両院議員総会の署名は森山幹事長に提出されており「署名が整っているかどうか慎重に見極めている」最中なのだそうだ。下手をすると筆跡鑑定に1年間時間がかかりますなどとむちゃくちゃなことを言いだしかねないのではないか。そんな気がする。そんなものパラパラとめくれば記者たちの目の前で確認できたことだろう。ちゃっちゃと片付けて次に進むべきだ。
