テキサス州知事が民主党議員の逮捕をほのめかしている。一方でニューヨーク州知事はこれは戦争だと宣言。Axiosはニューサム知事は核兵器を使うつもりだなどと煽り立てる。アメリカの政治的分断は本当に比喩ではない「政治的内戦」に発展している。
本日は8月6日。BBCはロシアとアメリカの間で繰り広げられている核兵器の恫喝を念頭に広島の特集を組み「このようなことは二度とあってはならない」としている。
しかしながらAxiosは「民主党は核攻撃へ」とアメリカ合衆国の政治的内戦を煽り立てている。冷静に記述するならば中間層が融解すると民主主義が成り立たなくなるといううべきなのだろう。
しかし、やはり目の前で起きている現実を見るとどこか切ない気分になる。アメリカの政治言論は分断のさなかにあり冷静さを失っているとわかるからだ。こうしたニュースだけを集めているわけではない。この手のニュースしかヘッドラインにならない。
民主主義の本場のハズのアメリカ合衆国で、一体何が起きているのか。
トランプ大統領の経済対策はあまりうまく行っていないようだ。このままでは中間選挙に負けてしまう。このためトランプ大統領はアボット・テキサス州知事を煽ってテキサスの下院の区割りを変えようとしている。選挙区を操作すれば5議席の上積みが可能なのだという。トランプ大統領は「我々にはその権利がある」としている。民主党の議員は抵抗のためにテキサス州を離れ民主党州と協力して反アボットキャンペーンを展開中だ。
アボット州知事は「民主党の議員を逮捕してテキサスに連れ戻せ」と息巻いている。確かにアボット知事はテキサスの捜査当局に命令を下すことはできる。しかし州外に逃げた人たちを捕まえるためにはFBIの協力が必要。テキサス州の上院議員はFBIの協力を仰いで民主党議員を逮捕すべきであると主張する。州の代表を「捉えて議会に引きずり出せ」と言っていることになる。
しかしながらニューヨークのホークル知事は「自分たちは戦争状態にある」と宣言。ニューサム・カリフォルニア州知事も住民投票をやって区割りを変えると宣言している。数カ月のうちに区割りを変えることができるかは未知数だそうだが、この政治的綱渡りをAxiosは「核攻撃」と言っているようだ。
冷静に考えるならばテキサス州が区割りを実施したうえで5議席取れなければトランプ大統領の敗北を印象付けることになる。トランプ大統領はおそらく自分の経済運営に自信を持っていない。だからこそなりふり構わない議席の獲得を目指すのだろう。日本を文脈に入れるならばトランプ大統領が政治的に困窮したときに関税を持ち出して日本から金を引っ張ろうとするだろう。
ただ「内戦」はこれで終わりではない。
日本では政治とカネの問題が話題になった。政治資金規正法の問題というよりは「自民党議員は自分たちの利益を優先する政治的に汚い政党だ」と印象付ける狙いもあったと考えることができる。
政治資金が潤沢に調達できるアメリカでは問題にならないが代わりに性的な規範に置き換わっている。共和党の一部の議員たちは「クリントン元大統領は少女に性行為を強制していたエプスタイン氏と関わりがあった」と煽り立てていた。民主党エスタブリッシュメントは「人の道を外れた醜い獣」だと言いたかったのだろう。
ところがどうやらファイルにはトランプ氏の名前もあったようだ。民主党がファイルの公開を求めると事態の沈静化を図ったジョンソン下院議長が夏休みを早めて議会を閉じてしまう。民主党はファイルを公開するように求めている。
召喚状の主語が「the House panel」となっていることが多いのでその狙いは定かではないが、クリントン元大統領の召喚はこの民主党の攻撃に対する共和党のカウンターのようである。the Hillは主語にGOP=共和党を置いている。つまり「どちらが醜い獣なのかはっきりさせようじゃないか」という落とし所のない闘争なのだ。
- House Oversight subpoenas Clintons, Epstein files(Axios)
- House GOP subpoenas DOJ, Clintons in Epstein probe(the Hill)
そんななかトランプ大統領は突然「オバマ大統領は選挙介入するロシアとつながりがあった」と根拠なく主張。司法省が現在この件を事件化できないか検討しているそうだ。
- 米司法長官、トランプ氏とロシアの関係めぐる大陪審審理を命令 誰が対象か不明(BBC)
- 米司法長官、オバマ政権関係者に対する大陪審調査を指示 16年のロシア選挙介入めぐり(CNN)
トランプ大統領が必死に民主党陰謀論を主張すれば主張するほど「彼はアメリカの政治運営に行き詰まりつつあるのだな」ということがわかる。それが更にアメリカの政治を泥沼に引きずり込む。ただ経済的には絶好調で株価は続伸を続けているそうだ。
