現在、ドル円相場が150円から147円に触れている。一体何があったのか。実は雇用統計が大きく修正された。
まず関税政策が大混乱している。当初8月1日から関税が変わることになっていたのだが通関システムへの通告が間に合わなかった。結果的に8月7日から新しい関税が発効することになった。
ところが関税税率に一貫性がない。対カナダの関税は35%で対スイスは39%だった。スイスは「一体何がいけなかったのか」とかなり動揺しているようだ。トランプ大統領は見せしめを作って「自分たちの意向に従わないとどうなるか」を見せつけた格好。
このため企業は事業計画が立てられなくなり、雇用状況が急速に悪化していた。しかし教育関係の雇用が順調なため「アメリカの経済は引き続き好調」ということになっていた。
実は今回この教育関係の雇用が実際には創出されていないことがわかった。このため速報値が大幅に修正されあたかも「雇用が蒸発」してしまったように見える。速報値と実測値のズレがなぜ生じたのかは説明されておらず単に季節調整とされている。
雇用の急速な落ち込みじたいは「解放の日」ショックと考えることができる。今回の速報値はここからは回復しているようなのだが統計修正のために一気にアメリカ経済が不調に陥っているのではないかと考える人が出てきた。
トランプ大統領の思考回路は極めて独特だ。
トランプ大統領はまず自分の政策はうまく行っているべきと考える。統計はそれを裏付けるものでなくてはならない。今回統計が引き下がったことに激怒し統計の責任者を解雇すると息巻いているのだそうだ。統計のチームはバイデン大統領によって組織されたため政治的に歪んでいるからなのだそうだ。
そして雇用統計が冷え込んでいるのだからFRBが議長の職権を制限し独自で利下げを進めるべきだとしている。
もともとFBRが金利を引き下げられない理由は2つある。関税によってインフレが加速する可能性があること。さらに雇用統計が思った以上に好調だったことである。
トランプ大統領が経済の好調さを宣伝すればするほどFRBは金利を引き下げることが難しくなる。一方で雇用統計の真の姿が明らかになり関税の影響で雇用が悪化しているとわかれば9月に開かれるFOMCでは金利の引き下げが決まるはずだ。
今回の一連の騒動は様々な問題を含んでいる。雇用に限らず様々な統計部局はトランプ大統領に睨まれることを恐れて政府に都合が悪い統計を自主的に出さなくなるかもしれない。FRBは政府統計をもとにした情勢判断ができない上さらに次期議長候補はトランプ大統領の意向に合わせて金利を引き下げるべきだと意見表明した。猟官運動の一つと考えられる。
トランプ大統領の関税政策が明らかになり木曜日のダウは330ドル安だった。今回関税政策の影響で雇用が急速に落ち込んでいることがわかり一時700ドルを超えてダウが下がり、最終的に542ドル安で着地したそうだ。つまり2日で872ドル下がったことになる。
