本日は関税問題について3つの文章をまとめた。まずは石破総理の精神状態に付いて書く。どうやらかなり危ない状態になっているようだ。関税交渉の内容を曖昧にしたままで秘密にし「自分が関税交渉を履行しないと日本は25%関税に逆戻り」と周囲に説明し総理大臣の椅子にしがみつきたいようである。
読売新聞が赤沢氏から報告受けた石破首相「私とトランプ大統領で合意を確実に実施することが重要」という記事を出している。読売新聞は合意文書の作成は必要ないからトランプ大統領と石破総理が面談することはないとの官邸側の説明をそのまま書いている。
この記事のおかしさを説明するためにはまず日米の合意の隔たりについて書かなければならない。おそらく読売新聞は背景事情がわかって書いているはずである。盛んに背景事情についての報道が出ており日本語でも豊富な記事が読める。
アメリカ側のファクトシートでは「法的義務をもたせる」となっている。アメリカ側は日本が口約束で交渉を乗り切ってきたことがわかっているのだろう。Bloombergなどが全文を日本語で公開しているのでぜひ読んでみるとよいだろう。
一方で赤澤経済再生担当大臣は「法的な義務を負うような文書は作らない」で「国民に説明できる文書だけを作る」としている。少数与党状態であるため国会の説明を乗り切れない可能性が高い。このため国会を通すような作業は行いたくないのだろう。「説明責任」という曖昧な言葉で法的な義務の履行を避けようとしていることになる。
さらに別の記事で、赤澤経済再生担当大臣は具体的にどのような枠組みで合意の履行を管理するかについては話し合われた記憶がないと言っている。実際に話し合われなかったのか嘘をついているのかは不明だが、おそらく説明するつもりはないのだろう。記憶にございませんとは要するに「いろいろな事情があってあるとは言えません」という永田町の方言だ。
普通に考えてこんな無茶苦茶が通るはずはないため普通に考えると関税は25%に逆戻りする。あるいは報復関税でもっと高い税率が課されるかもしれないが、これも石破総理を放置したペナルティと考えるほかない。
ここで思い浮かんだのが国民民主党との一連の交渉だ。自民党は連合を自分たちの支持母体に組み入れたいという気持ちがあり国民民主党を巻き込んだガソリン税制の協議体を作った。しかし地方自治体の反発を考えると国民民主党の提案を飲めるはずはなかった。
普通に考えれば行き詰まりは明確だったのだが、2023年11月に協議が開始されると国民民主党は衆議院選挙まで降りるに降りられなくなってしまう。国内では意外と誰が考えても落とし所がない曖昧な「合意」がなんとなく成り立ってしまう。
問題はこれがアメリカ合衆国に通じるか通じないかである。特に問題が大きいのは80兆円ファンド問題だ。ABCニュースによるとトランプ大統領は日本は15%の関税枠を勝ち取るために前払いした(to pay up front)と説明しておりこれを「ボーナスのようなものである」と言っている。どうやらベッセント財務長官を出し抜く対ラトニック商務長官が総説明しているようだ。根拠は別の記事で書く。
もちろんアメリカ合衆国でもファンドの設立には数年かかるということは理解されているためこの話をまともに受け取る人はいない。問題はトランプ大統領がまともかどうかさっぱりわからないという点にある。
“But now, if some of the countries that pay 25% or more on orders complain, remember that Japan was willing to pay up front the $550 billion for that privilege of negotiating with the United States of America,” Trump later added.
Trump admin live updates: Trump denies wanting to cut subsidies for Elon Musk(ABC News)
石破総理はこの国内では意外と通用するごまかしをアメリカ合衆国との間で展開しようとしている。そして誰にも説明することなく「私が合意を結んだのだから私が履行する」と宣言してしまった。
ただし自民党ももはや石破総理のもとで一枚岩にはなれない。青年局は石破総理に退陣を求めている。また総理大臣経験者会談もかなり悲惨なものだったようだ。前回は安手のシェークスピア悲劇と書いた。長老たちが協力して石破延命に出たように見えたからである。だが翌日に田崎史郎さんが出てきて「麻生さんと岸田さんは辞めろと言いましたよ」と触れ回っていた。石破総理は勝手に総理の椅子にこだわっているだけで自分たちは関係ないと言いたかったのだろう。
次の総理大臣は(それが自民党系なのか非自民党なのかはわからないが)は巨大な爆弾を抱えることになった。
