アメリカ合衆国の政治課題の中心は今や「エプスタインファイル問題」である。要は陰謀論のブーメランだ。米国議会は2週間麻痺しておりそのまま夏休みに突入する可能性が高いそうだ。
このエプスタインファイル問題は日本では余り伝えられていない。なぜ陰謀論スキャンダルが政治の中心課題になるのかがよくわからないためだろう。
このところ夕方のABCニュースはエプスタインファイル問題で持ちきりになっている。ニューヨークのお金持ちたちの荒(すさん)んだ交友関係が少女売春というアメリカ人が最も嫌う問題と合わさり大騒ぎになっている。
関税のエントリーですでにご説明したように米国議会は2週間も麻痺状態でありこのまま夏休みに突入する。トランプ大統領は話題をそらせようと様々な情報発信を行っているが「誤魔化しているだけ」とみなされ相手にされなくなっているようだ。最新の「ニュース」はユネスコからの再脱退だ。
- House paralyzed over Epstein files for 2nd week in a row(ABC News)
- House bails early for its August recess amid Epstein files uproar(Axios)
少女売春と言うショッキングな問題を扱っているため「倫理的にかなり問題があるのだろうなあ」とは思うのだが、日本人にはこの問題はよくわからない。
そこはさすがBBCと感じた。イギリス人にとっても外国の出来事なので詳細に「なぜそんなに大きな問題なのか」と読者の疑問に応えている。
【解説】米保守MAGA勢力、なぜ故エプスティーン元被告の資料を極めて重視するのか(BBC)
民主党系の意識高い系の指図にうんざりしていたMAGAの人たちは「民主党こそ性的に紊乱(びんらん)している」という主張に傾いてゆく。つまり意識高い系の悪魔化を図ったわけである。トランプ候補(当時)はこれに乗り陰謀論を容認した。ネットでは次第に陰謀論が精緻化されてゆき「Qアノン」や「ピザゲート」という大きな物語がさかんに語られるようになった。
一方で民主党側は「トランプ大統領こそがエプスタイン氏と関係があったのではないか」と考えている。
つまり共和党(MAGA)と民主党はそれぞれの立場からエプスタインファイルの開示を求めている。
板挟みになった司法省は明らかに当惑している。
民主党からの攻撃をかわすためには「トランプ氏がエプスタイン氏に送った手紙などなかった」と証明しなければならない。このためエプスタイン氏への「やんちゃな」手紙を取りまとめたとされるギレーヌ・マクスウェルさんとの面談を予定しているそうだ。ギレーヌ・マクスウェルさんさんは現在収監中でエプスタイン事件の最後の生き残りとされているそうだ。
- Deputy Attorney General Todd Blanche will meet with Epstein associate Ghislaine Maxwell, Bondi says(ABC News)
- Wall Street Journal: Birthday letter to Epstein bore Trump’s signature, drawing of naked woman(CNN)
これまでお金の力で数々の裁判を乗り越えてきたトランプ大統領だが皮肉なことに「人民裁判的」的に民衆から裁かれようとしている。トランプ支持者たちの意見は割れておりかなりの混乱が見られるようだ。
なおAxiosは富裕層と貧困層の人たちの間に「気分の格差が出ている」との記事を紹介している。アメリカの経済は絶好調なのだが恩恵を得られるのは富裕層だけで貧困層はアメリカから切り捨てられようとしている。しかしトランプサポーターたちはこのような現実を見ようとはせず「サーカス」に夢中になっているのである。
