9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方

ドル円が一時157円台に到達した。ユーロ円も180円台に到達しており「日本売り」の様相だ。背景にあるのが政府の財政ファイナンスへの期待である。日本が財政を拡張すると金利が安い円を借りてそれをドルに変えて金利が高い国で儲ける「円キャリートレード」ができる。そしてその対価を支払うのは日本国民だ。円安が進めば進むほど貯金が目減りし高い輸入品を購入させられる。これが高市総理を選択し自民党政権を選択した国民に対する「ご褒美」なのだが、高市総理を支える人々はそもそも経済を勉強しないので仕組みに気がつくことさえできない。

TBSは1ドル=157円台つける 約10か月ぶり円安水準 対ユーロでも最安値更新で「背景にあるのが財政悪化懸念です」と書いている。補正予算規模は当初から更に膨らみ20兆円規模になりそうだ。次に植田総裁、片山財務大臣ら(省かれているのは先日答弁に苦労した城内実大臣)の会談の話が出てくる。最後にアメリカで12月の利下げが見送られるのではないかという観測が出ている。

日経新聞はやや中立的。財政悪化は「懸念」とされている。3者会談で具体的な話がなかったために介入の警戒感が薄れさらにFRBの議事要旨で円安が加速したとの筋書き。つまり156円から157円に移った要因はFRBの議事要旨である可能性が高い。それでも「円相場、157円台に下落 財政悪化への警戒感と米利下げ見送り観測で」と財政悪化要因が原因の一つであるという認識には変わりがない。

背景にあるの高市総理大臣の前のめりな姿勢である。台湾問題でわかるように安倍総理の後継であると強調したいあまり「強い日本」にことさらにこだわる傾向にある。さらに自分が安倍総理を支えたあと非主流化したエコノミストや政治家の「お神輿」になっているという意識があるのだろう。やたらと強い日本にこだわるところがある。

おそらく国が一方的に成長産業を指定しても多くの国民は恩恵を受け取ることができない。そればかりか円安や中国との関係悪化を通じて国民生活に悪い影響が出始めている。

こうした状況はそこそこ政治や経済に詳しい人なら「まあ予測できたよね」範囲だろう。すでにリスクヘッジは終わっているかもしれない。

しかし一般国民は高市総理の明確なスピーチに心を動かされ、岸田・石破両総理大臣よりも期待できるのではないかと考えている。このため高市総理に対するメディアの批判は埋め込まれてはいるが具体的な批判は避けられてきた。

なお今回の原因の一つになったのが、日銀植田総裁、片山さつき財務大臣、城内実なんとか大臣(実際のタイトルは経済財政担当相)の会談である。TBSでは城内氏は「ら」扱いだ。基本的な構造が改善されないなかで為替介入に向けた発言をしてしまうと「実弾=外貨」を消尽することになる。片山さつき財務大臣が「何も言わなかった」ことで、当面為替介入はないんだなと言うことになった。

ではこのベネフィットは誰が受け取りコストは誰が支払うのか?ということになる。

アメリカなど外国で稼いでいる企業は円安によって利益が膨らむのでトクをする。すでにアメリカ株に資産をを移している富裕層もそれほど困らない。もっともトクをするのは資金調達コストが安い円を借りて海外でぼろ儲けしさらに安くなった円を返す海外の円キャリートレーダーだろう。

一方で株に資金を回す余裕がないような人々は単に輸入品の物価が上がるだけに終わる。稼いでも稼いでも実質賃金は目減りしてゆく。ただこういう人たちはそもそも経済の仕組みを知らず勉強するつもりもない。だから「高市総理が国を強くしてくれるはずだ!」と期待してしまうのだろう。

おそらく高市サポーターの中にはこの構造を見抜いている人もいるはず。つまり自分はこっそり海外で資産運用しながら「高市総理頑張れ!」などと言っているかもしれない。その意味では騙される人の自己責任ということも言えるのだろう。彼らは高市総理が強力な物価高対策を打ち出してくれることに期待をしているが、実はその物価高対策そのものが物価高を作っている。

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