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「高市のせいでトリプル安」の衝撃

8〜12分

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これまで「高市総理の経済対策に対する評価には批判が埋め込まれている」と書いた。これが現実化しかねない状況が生まれている。株安、通貨安、国債安のトリプルショックが日本を襲った。厳密には株安と、通貨・国債を分けて考える必要があるが支援者はおそらく区別しないのではないか。

これまで「高市総理の発言は独り歩きしコントロールできなくなる傾向が強い」と分析してきたが、今回もその懸念は当たりそうだ。さらに高市信者たちの期待も総理大臣の選択肢を狭める傾向がある。彼らは応援団のつもりなのだろうが、実際には逆効果になっている。

TBSが「日経平均 一時1600円以上値下がり 財政悪化懸念で円・債券にも売り、円安・債券安で「トリプル安」に」という記事を出した。

厳密には

  • NY市場で株が売られた流れを受けて日本の株が売られた
  • 高市政権の財政拡張を予想して国債と円が売られた

ことが並列で書いてある。

おそらく見出しをそのまま読んで「財政悪化懸念で株も値下がりした」と考える人が出てくるのではないかと思う。つまり本来は「トリプル安」と書くべきではない。これが埋め込まれた批判である。

ChatGPTは「タイトルを読んでそう解釈したなら国内要因を過剰評価しており、円安も日米金利差の影響を受けている」と分析している。

REUTERSは政治的問題については触れておらずBloombergは少しだけ触れるといったように高市総理の政策についてどう扱うかはメディアによって違いが出た。ChatGPTの分析も「とはいえ日本国債だけが顕著に下がっている」というような記述も見られる。

株価については更に続落する可能性がある。

NY市場が閉じた段階でNVIDIAの決算が発表される。日本時間では11月20日の朝の6時すぎになるようだ。仮に決算の結果が市場の予測を上回らなければAIのバリュー評価が調整される可能性が高い。このところ、AI関連企業のトップが過熱ぶりを懸念する発言を相次いで出している。AI競争に参加ざるを得ないが「崩れたときに共犯者と思われたくない」という気持ちが強いのだろう。ChatGPTは日本のβが高いと言っている。アメリカで株価が下がるとその余波が増幅される傾向が高いというのである。

円と国債に関しては21日の補正予算の規模によって市場の反応が変わりそうだ。現在の金融市場は周辺の「補正予算の規模は大きければ大きい方が良い」という発言を織り込んだものであり、実際に政府がどの程度の予算を出してくるかはまだわからない。仮にここで市場予測よりも大きな予算が出てくると、更に円と国債が売られる展開もありそうである。

また、このところ米ドルと円が「セットになって売られる」傾向もあるそうだ。だからこそ対ユーロの値動きを見るのが重要なのである。

高市総理は対中国問題で落とし所を失っている。おそらくは戦略なき発言で中国を怒らせたが支持者の手前撤回もできない。現在は「これまでの政府見解とは違いません、どうかお許しを」と説明しているが、習近平国家主席には会ってもらえそうもない。

今回のトリプル安のタイミングと高市・植田会談が重なった。植田総裁の発言は無難なものだった。高市総理は「財政健全化の道筋も変わりありません」と言っているが耳を貸す市場関係者はいなかった。現在も円安が進行中である。

高市早苗首相は18日、政府税制調査会であいさつし、内閣として政府債務残高の対国内総生産(GDP)比を引き下げていくことで財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保していく方針を改めて示した。

債務対GDP比下げ財政持続を実現、市場の信認確保=高市首相

これまで高市総理を支持してきた人は外国為替レートや国債の価格・金利には無関心だった。株価が上がり続けているため「細かい勉強なんかしなくても株価はどんどん上がってゆくのだ」と思いこんでいる。さしずめゲームで大量得点が加算されるような多幸感に浸っているのだろう。

ここで株価が調整局面に入ると不安を感じることになるだろう。ハイテク株は(過熱傾向はあるが)長期期待に基づいて値付けされているのでバブル前に買った人は辛抱強く持っていればおそらく成長してゆくだろう。ただブームに乗った人はそれなりに大変な思いをするかもしれない。

高市総理大臣が21日の政策発表でどのような規模の予算を出し、そこにどんな理由付けをするかに注目が集まる。ここで対応を間違えると今度こそ「高市トリプル安」ということになってしまう。ここは慎重な対応を期待したい。

しかし高市総理に非がなくてもNVIDAの決算によっては株安が合成されメディアが埋め込んでいた批判が再燃するかもしれない。