今回のエントリーは魂のレベルによって3段階に読み解くことができる。1つは高市早苗さんには外交はムリだ、いやいや発言を引き出したオカダ某がケシカランという読み方。魂のレベルが低い当ブログはどうしてもこの読み方をしてしまう。しかし少し視野を広げるとアメリカ合衆国の情報統制の問題が浮かび上がる。さらに時代背景を考えるとSNS時代に「外交についてはお答えを差し控える」という戦術はもう通じないとわかる。どうしても情報が独り歩きしてしまうからだ。
トランプ大統領が高市総理に電話をしてきた理由が明らかになった、中間選挙で不利な状況に追い込まれているトランプ大統領は成果を必要としている。しかしながら中国は台湾問題に腹を立てておりアメリカ合衆国に直談判をしたようだ。そこで高市総理に電話をして「いいか、ことを荒立てるなよ」とやんわりと釘をさした。REUTERSの記事を読むとトランプ大統領が切実に成果を期待している事がわかる。
来年秋に中間選挙を控え、米国経済への影響を考慮して対中関係改善を図るトランプ氏の姿勢を強く表した発言とみられ、中国との対応で米国の後ろ盾が欲しい日本には目算が狂った形だ
トランプ氏、高市氏に日中関係の状況悪化望まずと伝達 25日の電話会談=関係筋(REUTERS)
おそらくこのときに日本を過度に刺激するのも好ましくないと思ったのだろう。不安にさせないように「友だちだからいつでも電話してきていいよ」と付け加えるのも忘れなかったということになる。日米同盟を毀損したくない高官たちの配慮も伝わってくる内容になっている。カードと捉える人もいるのだろうし伝統的な国防戦略を守りたいという人もいるだろう。
「トランプ大統領とうまくやっている」ことが高支持率の背景にあるため木原稔官房長官は「この報道は事実ではない」と釈明するのが精一杯だった。中国と国際社会に対しても「事実と異なる」との釈明に終止しておりそれ以上の戦略的なアプローチが見られない。だから詳細を聞かれても「お答えしかねる」というしかない。
過去にも総務省文書問題で舌禍事件を起こした高市総理には国際問題を扱う力量も資格もないことがわかる。ただこれを指摘すると支持者たちは「問題を引き出した立憲民主党の岡田克也氏が悪い」「予算委員会を差配している枝野幸男委員長が悪い」と言うだろう。
一方で視野を少し拡大するとそもそもホワイトハウスの情報管理能力に何かしらの問題が生じていることがわかる。これまでこうした外交的な通信が表に出ることはなかったがトランプ政権では実に様々な混乱が生じている。最近ではウィトコフ氏とロシアの電話が漏れているがこの問題については別のエントリーで解説したい。
おそらくこれまでも日本とアメリカの間にはさまざまな行き違いがあったのだろうが「外交問題についてはお答えを差し控える」という答弁が用いられることが一般的だった。しかしSNSなどで情報の断片が飛び交う現代ではこうしたやり方は逆効果だ。
これまでアメリカのシンクタンクも自民党の政治家たちと緊密に連絡を取り合い舞台裏の黒子に徹していた。非公開の会合は「アメリカのシンクタンクが裏で自民党を操っている」という陰謀論を招いたが世論には大きな影響は出ていなかった。
しかしながらアメリカの保守シンクタンクは状勢の変化を踏まえて直接日本のメディアの取材に応じることが増えている。公開された場所で語らないと切り取られた報道が憶測を呼ぶ上に現代の政治スピードについてゆけないと考えているのかもしれない。
中国側の情報発信を見る限り彼らは継続的に日本世論に対して「いざというときにアメリカは日本を守ってくれるでしょうか?」と揺さぶりをかけているように思える。冒頭にご紹介したREUTERSの記事の「高官」の発言もこれを意識したものになっているように感じられる。アメリカもまた日本の世論を動揺させたくないのだ。
ディール志向のトランプ政権はそもそも日本がいいようのない不安を持っているという意識は持っていないのだろう。ただただ成果を上げるためのシナリオにこだわり水をさされることを嫌っている。一方で高官たちは見捨てられ不安を持っている日本がトランプ大統領の情報発信の不在を不安に感じて予測不能な行動に出ることを心配しているかもしれない。しきりに「大統領は日米同盟を大切に思っている」と主張している。
いずれにせよ高市総理は台湾問題で反省も学習もしておらず「自分は言いたくなかったが状況に言わされた」と苦しい釈明をしている。危機管理能力のなさは証明されたと言って良い。
また今のところアメリカのシンクタンクのアドバイスに従って「戦略的なパッケージ」をアメリカに提示をしているという形跡もないようだ。ただただ支持率を気にしてその場限りの釈明に終止している。誠に情けない限りだ。
