断片的で印象にのみ基づいたSNS言論が蔓延するとどうなるんだろうかと疑問を持っている人も多いはず。今回はトランプ大統領がコーラ問題に介入したというお話をお伝えする。糖分のとりすぎは良くない気がするが、トランプ大統領によればサトウキビから作った砂糖のほうがコーンシロップよりも体にいいそうだ。
トランプ大統領がSNSで「コカ・コーラ社がサトウキビを使うことを決めた!」と発表した。コカ・コーラ社は否定はせず「大統領の熱意に感謝する」と声明を出しており、近く技術革新について驚くような発表をすると予告するにとどめた。
アメリカ合衆国は工業的に抽出されるコーンシロップよりもサトウキビを使った砂糖のほうが健康的であると言うイメージがあるようだ。ただ、この主張は科学的には証明されていないという。いずれにせよ科学的な実証は余り重要視されず印象が極めて大切である。このため思い込みによる意思決定が決定が乱発される。
そもそもなぜこのような話が出たのかはわかっていない。Axiosによるとコカ・コーラ社はアルミ関税についてトランプ大統領に働きかけている最中だという。その中で近々技術革新があるという話が出たのかもしれない。
- Trump’s Coke push will cost thousands of farm jobs, corn group warns(Axios)
- Trump says Coca-Cola has agreed to use real cane sugar in Coke(Axios)
トランプ大統領はこれはいい話を聞いたと飛びつき自分の成果として伝えた可能性がある。
日本では「トランプ大統領に誠意を持って話をすればきっと日本の立場をわかってもらえるはずだ」という期待があった。しかしながらトランプ大統領は常に「どうすれば自分の人気が上がるのか」だけを考えて話を聞いている。このため重要なお願いについては話を流しどうでもいいところに反応してしまう。
なおトランプ大統領はコカコーラファンとして知られている。
CNNによれば執務室のデスクに赤いボタンが付いた木箱が置かれているそうだ。これはダイエットコーク・ボタンと呼ばれる。このボタンが置かれると執事がダイエットコークを届けることになっている。ダイエットコークには砂糖が使われていないため日本では「人工甘味料は体に悪いのではないか」という印象があるがトランプ大統領は気にしていないようだ。そもそも一日に何回もコーラを求めるのは中毒ではないか?という気もする。
こうした中毒も印象が作り出している。すでにサトウキビが使われているメキシコではコーラは体に良い飲み物と信じる人達がいる。彼らは二型糖尿病になってもコーラを飲み続けるそうだ。栄養学的に無知ということもあるのだろうがマーケティングキャンペーンが浸透している証なのだろう。
そもそもマーケティングキャンペーンは大量の情報を送り込んで事実とは別のイメージを植え付けるために設計されることがある。コカコーラは単なる味付き・色付き砂糖水だが大量の広告露出によってすっかりおなじみの人気飲料になっている。当然だがテレビや雑誌などもこうしたマーケティングキャンペーンに加担し様々な消費中毒を作り出している。
断片化されたSNS言論が蔓延するとすでに消費中毒・印象中毒に陥った人々は更に極端な意思決定を行うようになる。テレビが作り出す中毒が麻薬ならばSNSは合成麻薬といったところ。
少なくともアメリカ合衆国はすでにこの状態に陥りつつある。成果はすべて自分のもので問題はすべて他人が作り出したものなので、いかなる協業も成り立たない。
トランプ政権内部では今でもエプスタインファイル問題が大きくクローズアップされている。トランプ大統領はもとの支持者たちを「バカ」と呼び、民主党政権下でずさんな管理をしてきたエプスタインファイルが信頼できるはずはないと絶叫している。ファイルには罠が仕掛けられており自分に不利な内容が含まれていると言う印象をつけようとしているのかもしれない。事実は重要視されない。どこまでも印象が大切。だから一度破綻した物語はいつまでも混乱し続ける。
こうした不安定な状況に流されないためには印象に左右されない落ち着いた言論空間を維持する必要がある。場所は喫茶店でもテレビでもSNSでも構わない。いずれにせよ崩れてから慌ててももう遅いのだから早めに手を打つ必要がある。SNSばかりを悪く言う人達はそもそも普通の人たちの声を聞いているのだろうか?
