高市総理の国会答弁をきっかけにした日中対立が激しさを増し、尖閣諸島周辺海域でのいざこざがBBCによって伝えられた。中国は「琉球(今の沖縄県と鹿児島県の一部)が中国に朝貢していた証拠が見つかったぞ!」として日本に揺さぶりをかけている。間違いを認めることができなず何の戦略も持たない高市総理は中国にとって国内引き締めのための便利な「道具」になっている。
国内経済が停滞している外に中国は敵を作ることで国内を引き締めたい動機がある。アメリカ経済に強く依存しているため対米強硬路線を取るわけにも行かず日本は「殴りやすい」存在だ。
高市総理就任前の日中家計は戦略的互恵=プラスサムゲームとゼロサムゲームの2つの選択肢があった。しかし戦略思考を持たず間違いも認められない高市総理はおそらく意図せず現状維持のボタンを推してしまった。今後日本はこれが縮小均衡の消耗戦に陥らないように慎重にマネージする必要があるだろう。
尖閣諸島では中国の海警局と日本の海上保安庁の間で「睨み合い」が続いているとBBCが伝えている。日本と中国の言い分はそれぞれ異なっており状況の厳しさがうかがえる。
日本のメディアではこのところ中国当局が歌手を「いじめている」というニュースが多く扱われるようになった。歌手の浜崎あゆみさんは観客の居ないステージでスタッフたちのために最初からアンコールまで歌いきりその健気さが同情を買っている。ONE PIECEの主題歌を歌う歌手の大槻マキさんはステージを途中中断させられた。
こうしたニュースは無意識のうちに昭和によく見られた戦中ドラマを雛形にしている。日本において第二次世界大戦は軍部によって戦争を強要された庶民の被害物語ということになっている。このときによく引き合いに出されるのが憲兵による歌舞音曲の迫害である。メディアはこうした文化的雛形を(おそらくは無意識なのだろうが)利用し自由がない中国のリスクを誇張していると言えるだろう。
一方で中国の主張もエスカレートしている。ついには琉球(今の沖縄県と鹿児島県の一部)が中国に朝貢していたという「事実」を発見したぞと騒いでいるそうだ。
確かに琉球は貿易の利益を求めて中国と朝貢関係を結んでいた。しかし仮に朝貢していた国がすべて中国に服属していたとなれば、朝鮮もベトナムも中国のものと言うことになってしまう。こんな理屈はもちろん通らない。
確かに琉球は独立国として中国と朝貢関係を結んでいた。島津藩は1609年に琉球侵攻を行い、奄美地方を直属の領土とし琉球を形式上は「独立」させておくことで両属という特殊な関係に置いていた。
島津藩はこの「両属」により貿易利権を独占し巨額の利益を得たとされている。藩の放漫財政もあり琉球はかなり厳しい搾取構造に苦しめられてきたという歴史を知っている人も多いだろう。
おそらく中国には「沖縄を揺らしたい」という狙いがあるのだろう。しかし簡体字への改変により以前の歴史文書が読めなくなっている。もしかすると中国は本当に「沖縄が中国と強い結びつきがあった」ということを日本が知らないと思いこんでいるのかもしれない。
高市総理は国会答弁の中に出てきた「戦艦」という言葉は間違いでないと強弁する閣議決定を行った。間違いを認めることもなければ失敗から学ぶこともなく、これといった戦略も持たない高市総理が中国外交を正常化させることなど不可能だろう。
一方で野党側にも「総理大臣の間違いを指摘して恥をかかせてやりたい」という邪な気持ちがあるようだ。自民党に批判的な古賀茂明氏は「意固地になって「台湾有事」発言を撤回できない高市首相の“暴走”に要注意! この先にある「総選挙」からの「徴兵制」という悲劇 古賀茂明」という噴飯ものの記事を書き、このままでは日本は徴兵制になるかもしれないと煽っている。
当ブログは「日本人には変わりたくないという気持ちが強くある」と主張している。これに対して、AIは心理学的に捉えるよりも「イニシャルコストを支払いたくない」と置くことで解決策を探るべきだと主張する。
しかしながら台湾を巡る議論を見ていると、誰もが「戦略など持たなくても現状維持さえできれば万事うまくゆくのだ」との油断があるようにしか見えない。国際関係は急激に変化しつつあり、この慢心は日本の安全保障上の大きなリスクになるだろう。

コメントを残す