総裁選挙では日本を世界の中心で輝かせる国にするという威勢の良い言葉が飛び交っている。
一方で日本政府はパレスチナを承認しなかった。岩屋外務大臣は時期の問題と釈明しているが軍事的にアメリカに依存する日本が独自外交を展開できないのは明らかだ。
そんな中、高市早苗氏が「保守」の気持ちを引き留めようとあの手この手で頑張っている。党内で孤立傾向にあり世論の沸騰を期待しているのかもしれないが期待外れに終わるだろう。
このところ、いわゆる「ネット保守」と言われる人たちの行動原理を探っている。どうやら記事の内容を一切読まずに見出しだけで反応しているらしいということがわかってきた。
心情に合致する見出しを集めて「自分たちは日本人の一員である」というかりそめの一体感に心酔しようとしているようだ。これは日本人特有というわけではなく、アメリカのMAGAムーブメントでも見られる。
自分が何者でもないと考える人がなにか強いものにすがりたくなる気持ちはわからないでもない。これは「政治的ドラッグ」と言って良いだろう。副作用は現実が見えなくなることと社会の深刻な分断だ。
これをうまく利用したのが安倍晋三総理大臣だった。民主党に選挙で勝ち、株価が上昇に転じたという事実を利用し「民主党という悪夢に打ち勝った」と主張。そのまま心情に合致するメッセージを発信し続けた。そしてこれは新型コロナという政治的状況に忖度してくれない得体のしれないなにかが社会を席巻するまでは有効な政治的ドラッグだった。
安倍総理の手法の欠点は「心情を作り出している現実に直接働きかけることができない」という点にある。自民党は今や負け組政党であり他の政党に盛んに秋波を送っている。この現実に「保守」は苛立ちを抱えている。
それでは自分たちは勝てていないという心情を持った人たちはどんな行動に出るのか。それが他者の妨害である。女性が権利を主張すると「それはわがままである」とバッシングに走る。最近、トランプ政権が外国人バッシングを加速させていることもあり外国人バッシングも彼らのお気に入りのメニューに加わっている。
心情的に「勝てる」ゲームを求めているので内容は特になんでも構わないわけだ。勝てなければ相手を負けさせればいい。
高市早苗氏は彼らに「内容」を語っているが、これは無意味である。そもそも対象となる人達は内容など読まないからだ。
高市早苗氏はまず食料消費税ゼロを打ち出した。特に現役世代は現役世代VS高齢世代という図式でこのゲームを認識している。社会福祉(高齢世代)より生活者(現役世代)」を支援するというポジションは彼らに「勝ち」を意識させる。
しかしこれでは麻生太郎氏の支援が得られないと感じた高市早苗氏は消費税減税は即効性がないと態度を変えた。
さらにネットの番組で「即効性がないからほかを優先するだけであって消費税減税を排除するものではない」と説明を変えている。
最新情報では「赤字国債やむなし」と主張。他4候補と意見が異なっている。財務省派の麻生太郎氏らと実際にいるかどうかもよくわからない「保守」の間で板挟みになっているのだろう。
こうした高市早苗氏の揺れの理由については推察するしかないが政調会長時代に派閥の意見を聞かず独自人事を押し通したことも影響しているのではないかと思う。自民党の議員たちは誰を応援すれば分配が得られるかを強く意識している。このため独断専行に走りかねない高市早苗氏に警戒心を持っているのではないかと感じる。
