9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


「ラスボス」宮沢洋一税制調査会長の退任は朗報となるか

12〜18分

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昨日位置日のニュースを見ていて視聴者はネガティブなニュースに疲れ「景気のいい話」を期待しているのだなと感じた。難しいことは考えたくない。これからは「日本のターンだ」と思いたい。ということでタイトルを景気のいい話ふうにしてみることにした。

昨日の夜から今日の朝にかけて人事の話が盛んに出てきている。麻生太郎氏と萩生田光一氏が復権し「古い自民党が復活するだろう」というトーンで語られるものと見られる。

一方で「就任しない」人の話はそれほど注目されないのではないか。自民党税調会長の宮沢洋一氏が税制調査会会長を「受けない」と伝えられている。政調会長に経験を積ませる意味で小林鷹之氏が内定したことを合わせてもおそらく自民党の税制・政策議論はかなり混乱するだろう。

関係者によると、宮沢氏は続投要請があっても固辞する意向だという。大蔵省(現財務省)出身で、税制に関する知識と経験の豊富さから、税のスペシャリストとして党内外で存在感を発揮してきた。減税派と対立してきたことから交流サイト(SNS)では「ラスボス」とも呼ばれた。

自民党の宮沢税調会長交代へ 在任8年、財政規律派(共同通信)

宮沢洋一氏は宏池会岸田派の参議院議員。今回の総裁選挙は宏池会・岸田派の敗北、麻生派・茂木派の復権なので次の目がない。さらに地元でも次男が公認候補に選ばれず、政界に居続けるモチベーションもなくなってしまった。宮沢さんは「日本のため」を思っていたのだろうが、有権者はそれを理解しなかった。

巷では麻生・鈴木ラインが財政健全派なのか積極財政派なのかに関心が集まっているがその板挟みになるくらいなら逃げてしまったほうがいいと考えたのかもしれない。

宮沢洋一氏は「税制のプロ」と呼ばれており宮沢氏を説得できなければ自民党の税制を動かすことはできない。つまり大きな壁だった。岸田総理も石破総理もこの壁を突破できなかった。しかし今回は麻生・鈴木ラインで国民民主党との連携が進むものと考えられている。

このため財務省は戦々恐々としているのだという。高市早苗候補はマスタープランのアイディアを持っておらず財務省に丸投げしたい。

私は財政健全化が必要だということを一度も否定したことはございません。大事に決まってます。大切なことは成長することであって、財政健全化そのものが目的じゃない。日本の財政当局、財務省には是非ともこれをやったら成長します、経済規模が10年で倍になりますよいうぐらいのマスタープランを示していただきたいと思ってます。

自民党総裁選に出馬表明!高市早苗氏のプロフィール、政策は?【総裁選2025】(選挙ドットコム・ヤフーニュース)

財務省は高市早苗新総裁が財務・税制を理解しているとは考えておらず、麻生副総裁が高市氏を抑えてくれることを期待しているようだ。しかし前回見たように麻生氏も鈴木氏も選挙事情に合わせてメッセージを巧みに変えてきた「前科」がある。

実は財務省は小泉総理大臣に「賭け」ておりレクチャーしてきたそうだ。結果的に小泉進次郎氏の政策は「特徴がない丸い」ものになってしまい、党員たちの高市シフトにつながっている。細かいことを考えたくない有権者はとにかく政府が自分たちの暮らしを支えてくれることを期待している。

財務省では、陰に陽に関係者らが小泉氏を支えていた。2024年の前回総裁選に出馬した加藤勝信財務相は、小泉陣営の選対本部長に就任。財務省関係者によると、同省出身の複数議員が支え、小泉氏への政策レクチャーにはつながりのある財務官僚も加わった。小泉氏の総裁就任に備えて、財務省関係者が連立を想定する政党との折衝も水面下で続けた。

崩れた財務省の「小泉シナリオ」 積極財政の高市新総裁に戦々恐々(毎日新聞)

この文章は「とにかくおめでたい気分に浸りたいおめでたい人たち」に向けて書いているので現実派の人たちの懸念にはあまり触れないが、「トラスショック」なみのことが起きる可能性があるということは知っておいたほうがいいだろう。厳密には株価は下がらないので「日本経済の中進国化」である。高いインフレに悩むアルゼンチンやトルコでも株価だけは好調なのだ。

REUTERSの記事を読むと、公明党の連立離脱が囁かれる中で予算編成になかなか入れない事態も想定される。時間がない中で「まるでコンピュータのような」宮沢洋一氏がいなくなってしまうと、穴だらけの予算が編成される可能性がある。

今回、マスコミは総裁選挙を大きく外した。田崎史郎氏に代表される派閥取材型の選挙報道が機能しなかったからである。今回は税制・政策ともに非伝統型になってしまうので、予算編成報道についても同じような混乱が起きるだろう。

公明党を繋ぎ止めておくためには財政拡大が必要。また国民民主党には「ともに責任を取る」考えはなさそうだ。ライバルの維新との連立の可能性もなくなり渦中の栗は拾わず財源問題を自民党に丸投げし「失敗したら取って代わる」ほうがトクなのだ。

つまり、現実派の人たちはTACO(Takaichi Always Chinkins Out)を睨みつつ「高いインフレが起きても崩れない資産」へのシフトが求められる。

ただこの文章はとにかくおめでたい気分に浸りたい人たちに向けて書いている。例えて言えば株も持っていないのに「株価が上がってさあめでたい」と言っているような人たちだ。

宮沢洋一氏はまるでコンピュータと言われていた。過去の税制についてさまざまな知見を持っており、聞かれるとそれを瞬時に引き出すことができる。これって何かに似ていないだろうか?

それはAIである。

ということで高市政権は今後議事録や経済データをすべて掻き集めて「税務政策のAI化」を急ピッチで進めるべきだ。机の上でありとあらゆる方法をシミュレーションすれば「この話は宮沢氏に聞いてみないとわからない……」という手間を避けることができる。

おそらく最後まで見た人は「いやいやいや……」と感じるだろうが、宮沢洋一氏の退任をチャンスに変えるためにはそれくらいの大胆な政府効率化が必要だろう。

シミュレーションは非常に大切だ。

経済の基礎を理解している人たちは日銀総裁が労働供給制約を懸念していることがわかっているはずだ。つまり高市氏の政策が「当たる」と日本はかなり高い確率で高いインフレに悩まされることになる。ただ日本は軍部の敗戦シミュレーションを無視して戦争に突入していった過去がある。猪瀬直樹氏が『昭和16年夏の敗戦』をまとめたのは1983年のことだそうだ。