9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方

トランプ大統領が「プーチン大統領は気が狂っている」と認識を示した。「うん、知っている」としか思えなかった。

ロシアは平然と「大統領もお疲れなんでしょうねえ」と言いつつ、据わった目でウクライナを殴りつづけている。

戦略志向を持たないトランプ大統領には問題は解決できず、したがってウクライナの状況は改善しないだろうが、トランプ大統領支持者は概ね満足しているようだ。アメリカの優位破壊運動に夢中になっている人達も多い。

トランプ大統領の戦略は1つしかない。それは相手を殴って妥協を引き出すことだ。驚いて応じてくる国も多いが、そもそも敵対している国には何ら効き目がない。

例えばカナダはチャールズ3世国王を招待し議会演説を行うことになった。アメリカ合衆国とは違う主権国家であると示す狙いがある。カナダの議員たちは国王演説が終わるまで一切の公務ができなくなるそうだ。新方針が示されるのを待っているのである。

トランプ大統領はヨーロッパとの会談でプーチン大統領を擁護してヨーロッパの首脳たちを呆れさせたと言われている。しかしメモリアルデイの一連のつぶやきでは「プーチン大統領は狂った」と指摘した。

そもそも戦後の国際秩序を守るべき立場にある常任理事国が主権国家を侵害しているわけで「狂っている」のは当たり前である。ロシアはトランプ大統領はemotion overload(感情的に過積載=いっぱいいっぱい)なんですねと平然と受け流した。

プーチン大統領は狂っているが狂った状態で淡々とチェスを進行している。狂気と冷静さの微妙なバランスがプーチン大統領ならではである。ヨーロッパとアメリカはバチカンでの和平会談を望んでいる。この提案を無視してトルコが主導する和平提案を準備している。しかし特に戦争に嫌気が差したわけでもなさそうでウクライナに大規模などローン攻撃を仕掛けた。

ロシアは相手を殴りつつ「私達は和平を望んでいるのです」と微笑んでいるのだ。狂気と言っても錯乱しているわけではない。目が据わった状態で他人を殴り続けている。

こうなるとトランプ大統領も無力なものである。SNSに対してこんなつぶやきをしている。

トランプ氏は「ウラジーミル・プーチンは気づいていない。私がいなかったら、ロシアにはすでに本当に悪いことがたくさん起こっていたはずだ。彼は火遊びをしている!」と述べた。

プーチン大統領は「火遊び」、トランプ氏が非難(REUTERS)

ただしトランプ大統領の岩盤支持者たちは外交面での行き詰まりには余り関心がないようだ。ハーバード大学からの資金を取り上げて職業訓練学校への資金に振り返るという提案が出ている。

なぜか日本にもこの提案を好ましく思う人が大勢いるようだ。学歴エリートたちに対する個人的な恨みが反映されているのかもしれないと思う。アメリカ合衆国からの人材流出は他の国に取ってはチャンスではあるが(日本の文部科学省も人材受入を各大学に要請している)アメリカ合衆国の優位性は損なわれることになる。

しかしアメリカ人は目の前の闘争に夢中になっており、これが長期的にアメリカ合衆国の優位性を損なう動きになるとは気がついていないようである。一度没落し始めた帝国が崩れるときというのは意外とこんなものなのかもしれない。

国連の常任理事国の1つが主権国家へのあからさまな侵略を始めたときには「こんな狂気が許されるはずはない」と驚き呆れたものだ。しかし2国目のアメリカがカナダの併合やグリーンランドの収奪などを公然と口にし始めると「いよいよ新しい状況を受け入れるべきなのだろうな」という気がする。3国目が出てきてもさほど驚きはないかもしれない。

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