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「アメリカ合衆国は崩壊しつつある」論がさらに説得力を持つことに

11〜17分

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エマニュエル・トッド氏は、かねてより「アメリカ合衆国は瓦解しつつある」と主張してきた。日本にも一部に熱烈なファンがいるが、一般には聞き流されてきた説である。しかし、この論が今まさに凄みを持って立ち上がりつつある。背景にあるのが「セーフティネットの脆弱さ」と、「成長しなければならない」という教義の脅迫的側面だ。

トランプ大統領は「イランの戦争をどう終わらせるかはネタニヤフ首相といっしょに決める」と語っている。もともとトランプ大統領は「騒ぎを起こす係」であり、理屈を与えるのは部下の役割だった。しかし今回の件では、国務省とマルコ・ルビオ国務長官が理論化に失敗してしまった。そこで「理論がしっかりして見える」ネタニヤフ首相を頼りにしているのだろう。

CNNはバンス副大統領が「戦争賛成派に転向した」と書いている。しかし実際には、空爆直後に賛成を表明したわけではなく、約72時間の沈黙があったとされている。副大統領という立場を考えれば、この沈黙はかなり異例だ。

つまり、政権の行動を正当化する論拠をすぐには見つけられなかった可能性がある。しかし副大統領がいつまでも沈黙を続けるわけにもいかず、最終的には政権の方針を擁護する立場を取ったと見ることもできる。

こうした経緯を踏まえると、今回の戦争ではネタニヤフ首相の強い働きかけによってトランプ大統領の意思決定が急速に進み、アメリカ政権内部の説明や理論構築が追いついていない可能性が浮かび上がる。

今回の特集の一環として別に書いたイスラエルの項目で「イスラエルはコストを負担しない」と書いた。イスラエル国内でも戦争による犠牲者が出ており、経済活動も影響を受けているため、これは必ずしも正確ではない。しかし、アメリカ合衆国が負担する有形無形のコストに比べれば「まだ軽い方」と言える。トランプ大統領がネタニヤフ首相と協力すると決めたことで、「Make America Great Again」というトランプ大統領の主張は嘘だったのではないかと考える人が増えていくだろう。

経済的な問題については別のエントリーで検討するが、政権の内外で「精神的」な打撃は広がりつつある。エマニュエル・トッド氏も「バンス副大統領の沈黙に注目すべきだ」と主張している。

CNNも、バンス副大統領とルビオ国務長官が従来の主張を取り下げ、イラン攻撃を正当化する動きがあるものの、国内を説得できるかどうかは未知数だと伝えている。

トッド氏のナラティブに従えば「対ロシア、対中国での敗北の鬱憤を、弱い国を叩くことで晴らしている」ことになる。しかしアメリカ国民は、やはり「今何が起きているのか」と戸惑いを隠せない。自分たちがどこに向かっているのか、側近や支持者ですら確信が持てないのだ。

こうした精神的混乱は、すでに国内の治安や社会秩序にも影を落とし始めている。

ニューヨーク市長の邸宅近くで爆破騒ぎがあった。ISISの仕業の可能性があるが、そもそもマムダニ氏はイスラム教徒である。

もっとも、ISISといっても組織的な運動体とは限らない。脆弱なセーフティネットしかないアメリカ合衆国では、「成長ゲームから脱落したらそこで終わり」と考える人も多い。ダウンタウンに広がるホームレスは軽蔑すべき存在と見なされがちだが、「一歩間違えば自分もそうなるかもしれない」という危うさがある。こうした人たちが「社会破壊」のためにISISのマニュアルを利用している可能性もある。

以前のエントリーで「イランは、リーダーが『隠れている』と打ち出し、イスラム的最終戦争神話を利用するのではないか」と書いた。しかし結果的にモジタバ師は生き延び、リーダーとして選出された。つまり現実路線を打ち出し、破れかぶれの終末戦争論は採らなかった。一方で時事通信は、福音派の中で最終戦争論が広がりつつあると報じている。もちろん「あくまで一部」なのだろうが、現在の経済成長ゲームには持続性がなく、これ以上耐えられないと感じている人々がハルマゲドンに救いを求めているという見方も、完全には否定できない。

格差の拡大と終わりなき経済成長への追求が、「もう耐えられない」という出口を求めている。その結果、この心理が海外に輸出され、殺された家族の復讐という強い動機を持つ反米政権を誕生させ、さらにはNATO加盟国であるトルコへの攻撃にまで発展したことになる。エマニュエル・トッド氏の議論は「アメリカ内部崩壊論」だが、この混乱は世界に輸出される可能性がある。

さらにトランプ大統領が目的のためには「政敵の惨殺も厭わない」というナラティブが広がれば、アメリカの共和党議員に強い恐怖心を植え付けるだろう。つまり「トランプに逆らえば自分たちもどうなるかわからない」という恐怖が広がる可能性がある。

トランプ大統領は「石油価格の高騰など愚か者が心配することだ」と主張している。アメリカ合衆国の有権者がこれをどのように判断するのかにも注目が集まる。

トランプ氏は8日、自身の交流サイト(SNS)への投稿で「イランの核​の脅威が排除され​れば石油価格⁠は急速に下落する。短期的な価格上昇は、米国と世界の安全と平和のために支払う、ごくわずかな代価​だ」と主張し、「そう思わないのは愚か者だけだ!」と述​べた。

イラン戦争で原油急騰、各国が対策に奔走 備蓄放出も(REUTERS)

今回の記事はテーマが多岐にわたるため「特集」として扉ページを準備した。


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