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「アメリカは裏切るかもしれない」 VS 「ヨーロッパは根本的に間違えた」

10〜15分

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トランプ大統領のウクライナ和平問題が揺れている。ドイツのシュピーゲルが「アメリカは裏切るかもしれない」というヨーロッパ首脳の発言をリークで伝えている。一方でトランプ政権は「ヨーロッパは自らの文明を破壊する「間違った」政策を推進している」と批判する文書を発出した。実は欧米はもはや価値観を共有する同盟ではない事がわかる。

こうした状況を踏まえるならば高市総理の不用意な発言の数々はある日突然日本人の安全・安心を脅かすリスクを高めているということが言えそうだ。

シュピーゲルのリークは時事通信などでも伝えられていた。ウクライナ和平についてヨーロッパの首脳が「アメリカに裏切られるかもしれない」と話し合っていたという内容だ。リークであることから外交的な対立を避けつつ世論に対してヨーロッパ首脳の態度を伝えようとした狙いがあるものと推察できる。要するにアメリカに頼ってばかりでは危険だから自分たちで防衛に取り組むべきだということをいいたいのだろう。フランスは志願兵制度を復活させることにした。ドイツもまた兵役制度を復活させようとしている。つまりヨーロッパの中核国では軍拡の動きが起きている。

この報道は一連のウクライナ和平問題の一環としてお伝えするつもりでいたのだが、今度はトランプ政権の国家安全保障に関する文書が異例のヨーロッパ批判を展開しているというニュースを見た。安全保障の文書としてはかなり異様な文明批判だ。

と言っている。

ヨーロッパはアメリカ合衆国に依存した安全保障政策を推進してきた。アメリカ合衆国の「撤退」はNATOに及んでいる。2027年までに基本防衛をヨーロッパ側に移管するとしている。完全撤退ではないが役割を縮小しようとしているようだ。これに対する反発がヨーロッパで高まっているということになるが「これまで頼り過ぎだったのに援助を打ち切られると怒っている」のは少し虫が良すぎるのではないかという気もする。

問題はアメリカサイドの反発の理由である。よくわからないのだ。

  • まずアメリカ合衆国は中国の脅威に十分な予算を振り向けることができないことに苛立っている。
  • 逆にヨーロッパがアメリカ合衆国に過度に依存するのも気に入らないようだ。

ここまでは「合理的に」推察できる。

ところがこれが文明批判に発展している理由がよくわからない。トランプ政権が問題を整理できていないことがよく分かる。

これまで我々はトランプ大統領のSNSによる「口撃」を情報飽和の作戦だと考えてきたのだが、こうした入り混じった反発は彼らがそもそも問題を整理できていないことを意味しているようにも感じられる。

興味深いことに今回のシュピーゲルの報道はアメリカ合衆国ではThe Hillを除いてあまり大きく伝えられていないようだ。アメリカ人がそもそも同盟問題にあまり興味を持っていないことがわかる。また議会も財政問題と足元で広がる「アフォーダビリティ問題」で頭がいっぱいになっておりとても、ヨーロッパや世界の防衛を肩代わりできるような状況ではなさそうだ。

一方で日本では時事通信がこの問題を取り上げている。元々日本には見捨てられ不安がある上に、ヨーロッパやアメリカと足並みをそろえておきたいという気持ちが強いのだろう。

しかしながらアメリカの防衛文書については「中国脅威論を念頭に」「アメリカ合衆国がインド太平洋問題にコミットした」というような伝えられ方をしている。つまり色々な不安はあるものの「結局アメリカ合衆国は日本を守ってくれるだろう」との考えを強化する方向で理解されていることから「思考停止のための情報を意識的に拾う」傾向が強いことがわかる。

実際には

  • 有事の際に日本はアメリカの防衛力に頼ることはできず
  • アメリカを苛立たせないためにも防衛力の貢献を示し続けるしかない=将来負担を覚悟しなければならない

という意味合いがある。

しかしこの意味合いはおそらく「なかったこと」にされるだろう。

もう一つわかったことがある。中国は今後人口が減少すると考えられている。つまり国力が低下する可能性が高いわけだから次第に脅威ではなくなりそうだ。しかしアメリカ合衆国は今後中国の脅威が増加すると考えている。

これを合理的に考えるならば

  • 国力が低下しつつあったロシアの指導部が強硬策に転じたのと同じように
  • 国力が衰退する中国の存在もまた脅威になるだろう

ということになる。

実際にプーチン大統領はウクライナの戦争で妥協するつもりは一切なさそうだ。議論が進めば進むほど欧米の亀裂が浮き彫りになるというプーチン大統領にとっては有利な展開である。

トランプ政権の稚拙な外交政策はインドを必ずしも説得できていない。インドは中国と対抗するためにアメリカの協力を必要としているが、ロシアの安い天然資源にも期待を寄せている。現在プーチン大統領はインドを訪問し防衛関係を再構築する協定を結んだ。

声明文は「インドの自立への熱望に応え、パートナーシップは現在、共同研究開発、および先進的な防衛プラットフォームの生産へ向けて新たに設定されている」と述べた。

ロシアとインド、防衛関係を再構築へ 首脳会談受け共同声明(REUTERS)

南アフリカも「白人を差別している」とアメリカ合衆国から一方的に批判されG20 から排除されかけてる。こうなると南アフリカもロシアに接近するだろう。実はロシアは全く国際的に孤立していないのだ。

南ア、白人を人種差別と主張する米政権の圧力に屈せず=南ア外相(REUTERS)

こうした様々無状況を考え合わせると中長期的な国際戦略が混乱しているトランプ政権下では高市総理の不用意な発言が容易にコントロールを失い日本人の安心・安全を脅かしかねないということがわかる。

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