農水大臣が農水族の江藤拓氏から小泉進次郎氏に代わった。同じタイミングでJA全農長野が備蓄米を2990円で売り出したそうだ。マスメディアを入れて備蓄米の消化ぶりをアピールしたかったのだろうが、結果的に「やはり備蓄米を隠していたのでは?」と疑われても仕方ない状況になっている。
SNSではなんで急に安く?と「察し」た人が増えているそうだ。
改めて調べてみた。4月末に行われた3回目の入札では全農が97%を落札している。そして、この時点の過去2回の備蓄米は1割しか店頭に届いていなかった。発表したのは農林水産省でありメディアもJA全農を取材していない。
石破総理は玉木雄一郎氏との党首対談の中で「どこにどれだけのコメが滞留しているのかがわからない」としていた。仮にこのコメが自主流通米を指すとすれば「市場調査もしていないのにコメの値段が下げられるはずなどないだろう」という気になる。
しかし仮にこれが備蓄米を意味しているとすれば、石破総理はなんとなく状況がわかっていたはず。つまりJA全農が何らかの理由で備蓄米をせき止めていたことを知っていた可能性がある。精米設備が足りないからかもしれないし、あるいはコメの全体としての価格低下を恐れたのかもしれない。
JA全農は今回の大臣の交代劇にかなり慌てたのではないか。
例えばこんな一例がある。小泉進次郎氏は肥料の生産資源に高い手数料が付いていることを問題視しておりJA全農の株式会社化を検討していた。今回の一連の騒ぎでこのときの対決が再びクローズアップされている。保守派の中にはライジングスター進次郎氏が魔法のように問題を解決してくれるのではないかという期待があるのだろう。
農水族の影響を受けた国は肥料価格の高騰に対して5戸以上のグループに限り7割支援をしますというようなことをやっている。千葉県(国と地方で別々に補助が出るそうだ)は「5戸以上の農業者グループや、従業員5人以上の農業法人が取組実施者として申請することも可能です。以下の「取組実施者(JA、肥料販売店、農業者グループ、地域農業再生協議会)のみなさまへ」の欄をご覧ください。」とわざわざ書いている。
農協の経営基盤は徐々に弱体化しつつあり農林中金も投資の失敗の損切りを急いでいる。そんななか経営に危機感を抱き「備蓄米でコメの価格が下落しては大変」と考える地方組織が出できたとしても何ら不思議はない。
しかしながらそのやり方があまりにもあからさまだと却って「やはり真の抵抗勢力は農協だったのだな」と言われかねない。
日本人は自己改革を嫌い問題を単純化したうえで「誰かのせい」にしたい。今回の流れは明らかに諸悪の根源は農協であるという方向に向かいつつある。2009年の自民党の下野を知っている人は炎上の恐ろし差を身にしみて知っているはずだ。小泉農水大臣はテレビで盛んに「(農水族のドンの)森山氏の信任を得ている」と宣伝しておりメディア戦が始まっている。こうなると小泉氏をヒーローにしたくない人たちが「受動攻撃」的に強い抵抗を行うことになる。
国民の願いは単にコメの価格が安定することだが、おそらく政治家と農協の当事者は「そんなことはどうでもいい」と感じていることだろう。