イスラエルのガザ侵攻回避に向けて静かに方向転換を図るアメリカ合衆国と世界

ハマスの暴力的なテロ攻撃から始まった今回の一連の騒ぎだが、内容が知られるようになるにつれてイスラエルへの国際世論の反発が強まっている。もちろんそんな法廷はないのだが「国際世論法廷」の被告席にイスラエルが座らされその後見人としてアメリカ合衆国が連座しそうな状況になっていた。

そんななかバイデン大統領に代わってブリンケン国務長官が侵攻抑止に向けて動き出しているようだ。中国などと連携し侵攻を止めようとしている。この動きに国防長官も参加しイスラエル軍隊に働きかけている。さらにマクロン大統領はイスラエルに代わり国際的な仕組みを適用ハマス掃討を行うべきだと提案する。さまざまな侵攻回避の動きを受けて原油市場わずかながら反応している。

あとはアメリカ国内の政治をバイデン大統領がどのようにまとめることができるかにかかっている。アメリカの政治は内向きになりがちで国際世論とは異なった世論が形成されることがある。

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イスラエル支援の共同声明で日本はG7から仲間はずれにされたのか。それとも面倒なことには関わらない方が正解なのか。

バイデン大統領と日本を除くG7諸国がイスラエルに対して共同声明を出した。とにかく仲間はずれが心配になるマスコミは松野官房長官に「これはどういうことなのだ」と質問したようだが、松野官房長官の説明はどこか釈然としない。これは日本外交の失敗だと認識されるのではないかと感じたのだが、Yahoo!ニュースのコメントは意外なものだった。面倒に関わらずにすんだと考える人が多い。仲間はずれは怖いが面倒なことには関わりたくないと考える日本人が持っている独特の政治的センスを感じる。「どちらが正しい」かを自分で考えた結果議論になる欧米とは全くセンスが異なっているのだ。

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「ガザ地区はエジプトにくれてやる」とイスラエル アラブ側は断固拒否の構え

前回のエントリーでは2005年のイスラエルのガザ撤退から総選挙を経てイスラエルがガザ地区に侵攻するまでの経緯をおさらいした。結果的にイスラエルは国際的非難を浴びハマスを掃討できなかった。

今回の作戦でイスラエルはガザ地区とハマスをどうするのだろうか?と思ったのだが、どうやら「エジプトに管理させたい」ようだ。入植を諦めてハマスを無害化した上で管理責任からも逃れたいとのことである。ただアラブ側はこの主張を額面通りには受け取っていないようだ。目の前に土地が現れればイスラエルはそれを自分のものにしたいと思うだろう。アラブの懸念にはそれなりの妥当性がある。

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【おさらい】ガザ地区がハマスに占拠されるまでの経緯

REHACQでイスラエルとパレスチナ代表の「言い分」を聞いた。最も食い違っているのがガザ地区がハマスに占領されてしまった当時の経緯だった。パレスチナ側は「ハマスはPLOに加盟していないから選挙に参加すべきではない」と主張したが、西側が聞き入れなかったと言っている。結果的にハマスが勝ってしまうと西側は援助を引き上げてしまいイスラエルも和平交渉もしないという姿勢に転じたと主張する。さらにパレスチナ自治政府はガザから追い出されてしまう。封鎖され孤立した結果「ガザはテロリストの巣窟になった」のだという。一方でイスラエル側は「有効な選挙など行われていない」という立場のようだ。この双方の言い分を聞くと、なぜ今ガザがこのような状態に置かれているのかがわかる。と同時に今回のイスラエルの作戦の意図も見えてくる。長くなるのでイスラエルの作戦の意図については別のエントリーで紹介する。

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イスラエルが自国民を近隣イスラム諸国から呼び戻す動き ガザ侵攻は秒読みも嵐の前の静けさ

土曜日はユダヤ教の安息日にあたる。このため、ガザ侵攻に目立った動きはなかった。ハマス側はアメリカ人の人質を解放し、グテーレス国連事務総長がガザを訪れラファのゲートから支援物資がガザに入っている。

だがやはり侵攻は秒読みのようだ。イスラエルはトルコ、エジプト、ヨルダンから自国民を呼び戻している。いざことが始まればかなり大きな反発が予想されるということをあらかじめ予期しているのかもしれない。ラファについて伝えるBBCも「むしろイスラエルはガザのアクセスを遮断しようとしているのでは」と懸念しているようだ。

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エジプトの大統領が「パレスチナ難民はイスラエルのネゲブ砂漠に退避させればいいではないか」と主張

パレスチナに住んでいる人たちはアラブ系のイスラム教徒である。近隣のエジプトとヨルダンは同胞を助けてあげるべきだ。だが、エジプトはラファを開けるつもりがない。これはどうしてなのか。欧米のメディアが解説記事を出している。両国はイスラエルが領地を広げるためにパレスチナ難民を周辺国に追い出そうとしているとみているようである。

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バイデン大統領がイスラエルを訪問 表は軽いノリだが裏はかなりエグかった

バイデン大統領のイスラエル訪問の直前にガザ地区南部にある病院が空爆された。死者数は大体500名前後といったところのようだ。この地域では史上最大の犠牲者と言われている。どちらが空爆したのかはよくわかっていない。ガザ側(ハマスではなくイスラム聖戦だとされている)がミサイル攻撃を行い迎撃をしたイスラエルのミサイルが落ちた可能性もある。そんな中バイデン大統領がイスラエルを訪問した。表向きはかなり軽いノリで行事をこなしたが、その背景でやっていることはかなり強烈だった。バイデン大統領の選挙キャンペーンの一環としては「まあこんなもの」なのだろうが、これはかなり内外で嫌われるだろうなと感じた。

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極めて乱暴にわかりやすくいうとガザ地区は人口220万人の巨大なガス室のような感じになりつつある

イスラエルのガザ侵攻が秒読みと言われている。国連からは人権侵害との指摘が出ているが、イスラエル掃討の意気込みは変わっていない。イスラエルはガザでの掃討作戦を有利に進めるために北部を更地にしてそこに一気に攻め入ろうとしている。ガザ地区南部にはラファと呼ばれる検問所があるのだがエジプトはこの扉を押さえていて外に人が出られない状態になっている。名目上は「イスラエルが空爆を続けているから」ということになっているが、エジプト政府の真意はよくわからない。いずれにせよ結果的にガザ地区は巨大なガス室のような感じになっている。パレスチナ人に逃げ場はなくこのままでは大勢の人が殺される。だが、一旦扉を開くと220万人の難民が発生する。すでに100万人が狭いガザ地区で難民化しているそうだ。

誰が扉を押さえつけ誰が中にいる人たちにひどいことをしようとしているのか。関連記事で調べて見た。

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中国はイスラム側に付きイスラエル非難にシフト イランも介入を示唆

ハマスの奇襲から始まったイスラエルとガザの諍(いさか)いが新しいフェイズに入りつつある。動向をじっと見ていた中国がアラブとイランに接近しイスラエル非難に回った。イランもレバノンで介入を示唆している。このようにしてアメリカに対峙する勢力は今回の衝突にまた別の意味を持たせようとしている。

中東に石油を依存している日本としてはできるだけ早期に事態を沈静化させアメリカ中心の世界平和を維持する必要がある。だが、そのアメリカのバイデン政権の対応はどこか心もとない。

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全てはテロリスト「ハマス」掃討のために イスラエルで挙国一致内閣が成立

ハマスがイスラエルを奇襲してから1週間近くが経とうとしている。

テロリスト「ハマス」は祝祭日のイスラエルの音楽祭を奇襲し多くの民間人を虐殺し人質を連れ去ったといわれている。しばらく政治危機にあったイスラエルは予備役30万人が動員され、挙国一致内閣も作られた。ハマス掃討に向けた陸上戦の準備は着々と進んでいる。

しかし、陸上戦による掃討作戦はまだ開始されていない。国際的な「集団的懲罰」への抵抗があるうえに、危機が去るとイスラエルの政治も再び流動化する。もともと奇妙なバランスの上に成り立っていた中東だが、足元で何か別の奇妙なバランスが作られ始めている。

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