反社会組織と吉本興業 – 運命の別れた双子

吉本興業の芸人たちが「反社会勢力とつながっている」として一斉にテレビから締め出された。今日はこれについて考える。






もともと、反社会組織と芸能界にはつながりがあった。つながりがあったというより一体だったと考えられる。吉本興業と山口組に100年のつながりがあるという記事を見つけた。これを読むと「興業」と「反社会勢力」がつながっているように思える。だが、実際には反社会勢力の前身は興業もやっていたし労働組合のような色彩も持っていた。共産主義というイデオロギーと結びついた過激な労働運動は鎮圧されたが、イデオロギーとの結びつきがない方はいわゆる「虚業」と呼ばれていたサービス産業と結びついた。

「食えない職業」になったヤクザという記事に神戸芸能社という記述が出てくる。

傘下組員にも土建、港湾荷役、金融、不動産などの会社を興させたことで、山口組は暴力装置を持つ企業集団となった。そして、双方を組み合わせて巧みに全国制覇に乗り出す。50年代以降その道具となったのは、神戸芸能社の看板スターの美空ひばりであり、田岡三代目が日本プロレス協会副会長として「西の興行」の面倒を見た力道山だった。

「食えない職業」になったヤクザ

美空ひばりの名前があるが神戸芸能社が面倒を見ていたのは美空ひばりだけではなかった。お笑いだけでなくプロレスのようなスポーツ興業も音楽も暴力団と完全に切り離しはできなかった。例えば昭和のレコード会社にも「反社対策」の人たちがいて「その筋の人たちとの調整」を担当していた。地方興業の調整もイベントも「そういう人たちのとの関係」なしには成立しなかったのである。

これが変わっていったのは、芸能がスポンサーの広告によって成り立つようになったからのようだ。つまりテレビの登場によって表の企業と結びつくことでテレビもまた「身綺麗にする」ことを求められるようになったということになる。今回も、アメトーーク!から「きれいな」スポンサーが撤退している。企業はSNS経由で炎上するのを恐れたのかもしれない。社会の不満が悪者叩きに向かいかねないことを企業とテレビはよく知っているのだ。

かつての芸能界はこの辺りをきっちりと分けていたようだ。

なべおさみが「ヤクザと芸能界、全部バラすぞ!なべおさみが見た昭和の大スターたち」という記事を書いている。映画のスターたちは反社会的なつながりが表に出るのを嫌って私生活を表に出さない人たちがいたのだという。映画からテレビの移行期には、テレビのカタギの人たちに迷惑をかけないように、テレビではカタギのふりをしていたということになるだろう。

テレビでは木村太郎が「歌手をお嬢と呼ぶことがその筋の人のステータスになっていた」と言っていた。アナウンサーたちは木村太郎が美空ひばりを名指ししたとは思わなかったようだが、ある世代の人たちにはそれが誰のことなのかがすぐにわかる。

テレビが大勢の芸能人を抱えるようになると、芸能界はクリーンになった。チケット販売も「近代化」され地方の興行主に頼らなくても興業が行えるようになった。こうして芸能界は「普通のサービス産業」になったかにみえた。

しかし、こうした芸能界の出自は時々ヒョッコリと顔を出す。島田紳助が芸能界からいなくなったのは2011年のことだそうであるが、今回もまた同じようなことが起こった。

今回の吉本新喜劇の件は、テレビが抱えられなくなった芸人がかつていた場所に戻っていったというだけの話でもある。もちろん、テレビではなくYouTubeなどのインターネットメディアに進出する人もいるが、先祖返りする人もまた多かったのだろう。だが、SNSによって緊密に結びついた時代にはかつてあった「優しい隙間」はないので、彼らはそれが露見すれば消え去るか忘れてもらうまでいなくなるしかない。

この間吉本興業は近代化に向けた何も努力をしなかったし、これからもしそうにない。吉本興業の会長は遠く離れたバンコクで記者に「教育が悪かった」と語ったそうだ。つまり彼らは一切変わるつもりはないということである。お笑い芸人に依存する以上テレビもこれ以上の追求はできないだろう。

吉本興業がやったのは「研修」と「禁止」だけだ。生活を保障するギャラを払わず契約書もかわさないという前近代的なやり方は残り続け、それを誇らしげに語る芸人もまだ多い。千原ジュニアさんの言い分を認めると「労働契約を交わしてしまうと生活保障をしなければならなくなる」からなのだろう。

千原の発言は芸能界全体の意識の低さを表している。生活保障をしないで「頑張って真面目に乗り切れ」と個人の資質の問題に落とし込んでしまい、問題があった時には「個人が悪かった」といって切ってしまう。日本の悪いところが全部出ている対応だ。そして千原はそれを「外資の参入障壁になっていて好ましい」とまで言い切っている。成功者の部類に入る人は知らず知らずのうちに旧体制を擁護してしまうのである。

もともと芸能人は「こうした意識の低い人たちなのだ」と考えて、芸能人をみるということも可能なのだろう。ただ、最近ではそうもいかなくなっている。お笑いタレントの方が「身近で視聴者目線で」政治を語れるというような風潮もあり、テレビ局に代わって正義の側にたちに社会罰を下す代理執行者の役割を担うことも増えている。

このためテレビは表向きの清廉さを演出するためには「かつていた場所」に戻ってゆく人たちを切り離すか「なかったこと」にし続けなければならないのである。

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日米同盟破棄報道の真相について考える

先日、Bloombergの日米同盟(正確にはアメリカの日本防衛)放棄報道(英語原文)が話題になった。この「真相」について考えた。






出元は3人と複数であり確実性が高そうに見える上に「あの経済紙ブルームバーグ」が書いているのでそのまま受け取った人も多かったのかもしれない。Twitterでは張り切ってトランプ大統領の野望について推理している人もいた。

この騒ぎを見ていて、そういえばマイケル・ブルームバーグさんは政治家だったんだよなあと思った。これがまたかなり複雑な経歴の方のようだ。もともとは民主党だったが共和党からニューヨーク市長選挙に出るために共和党に転じて市長になった。その後2期だった任期を3期に伸ばして再選し任期満了で退任した。

市長退任後はBloombergのCEOに復帰するが、民主党に復帰して大統領選挙に出るのではないかと伝えられた。だが、民主党は現在候補が乱立しており出馬を諦めたようだ。民主党が分裂したままではトランプ大統領に勝てないからだろう。現在では環境問題にお金を使う「いいお金持ち」になったようだ。

Bloombergには「創始者であり過半数の株主である」と書かれているので、Bloombergは実は反トランプ陣営の新聞社なのである。そう考えると「本当に情報提供者は三人はいたのか?」ということも含めて疑問に思えてくる。

日本では辺野古の問題について「土地に価値がある」というようなことを言っていたという発言が削除されているという話があった。

Abe reached a deal in 2013 with Obama to move the base out of Okinawa as early as 2022 if a replacement could be constructed. But Trump believes the land underneath the base is valuable for development, and has told confidants the real estate could be worth about $10 billion, the people said.

安倍は2013年にオバマと2022年までに代替施設ができれば沖縄の外に基地を移すというディールに到達した。しかし、トランプは基地の下の土地は開発価値があり不動産価値は100億ドルくらいあると腹心に話していると人々は語った。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-06-25/trump-muses-privately-about-ending-postwar-japan-defense-pact

トランプ大統領はFOXのインタビューで「日本との同盟は不公平だ」と語っているので、日米同盟に不満があるのは確からしい。だが、この記事だと大統領ではなく不動産屋として話をしているように聞こえてしまう。「なんかいいそうだ」というのがポイントなのかもしれない。さらによく考えてみると、FOXで日本の悪口を言っているとわざわざ伝えているのも実はBloombergなのだから、多分Bloombergは日本を意識して記事を書いているのだろう。

マイケル・ブルームバーグさんは自分が大統領になりたいわけではない。トランプ大統領を追い落としたいのだ。もし大統領になりたいなら民主党の候補者選定に参加していたはずである。そして、トランプ大統領を追い落としたいのだからあらゆることをするだろう。

これをアメリカ人に聞いてみた。フェイクニュースだという人が二人いたが、もう一人はBloombergは信頼できると書いていた。政権内部に不満がある人がリーカー(通報者)になる可能性があるということである。もしその読み通りなら、偶然3人が同じリークをするとは思えないので日米同盟についてなんらかの意思が働いていて「絶対に秘密を守ってくれる」陣営の新聞から情報を出したのだと見ることができる。つまり政権内部の駆け引きはそれほど熾烈になっていてバランスが危うくなっている可能性があるということだ。

これがリークなのか確実に知っている人が一人いる。それがトランプ大統領である。もしリークだと気がついているなら「この中に通報者がいるのだ」と怯えながら残りの任期を過ごすことになるだろう。

もうひとつ言えるのはアメリカ人があまりにも2020年の大統領選挙に夢中になっているということである。つまり、すべての報道やアドバイスは誰かの思惑がらみである可能性が高いことになる。信頼性は確実に落ちているのだ。

日本人は「マスメディアというのは中道でなければならない」と信じ込んでいる。だから、外国のメディアと外国の選挙の動向がそのまま日本に入ってきてそれが日本の政治に動揺を与えかねないということはなかなか想像しにくい。かといって、こうした報道をすべて無視していいとは言えない。我々は疑いを持ちつつも本当のことはわからないというかなり不確実な状態に耐えなければならない。

とにかくアメリカさえ信頼していれば大丈夫だとしてきた安倍政権はオバマ大統領からトランプ大統領に変わっても変わらぬ盲従の姿勢を示してきた。そしてトランプ関係者とのパイプがなかった政府(外務省はクリントン側が勝つと思っていたようだ)も「安倍首相と大統領の個人的な関係」に頼ってきた。

普通日本人はアメリカがこれほど分断されているとは思わないはずだ。だからこれが一番確実なやり方のように思える。だが、深刻な分断を抱える側からみれば「誰でもいいのか」ということになりかねない。今までメリットだと思っていたものがリスク要因になりつつある。

この安倍首相依存の安易な姿勢は日米関係をさらに悪化させる可能性があると言えるだろうし、イランとアメリカにどっちつかずの態度を取ったことも、中国に安易に近づいたこともこの後大きな禍根を残すに違いない。しかしよく考えてみれば全方位にいい顔をして「いい奴と思われたい」という外交の安倍の一番「いい点」なのである。

周囲が不確実な文、日本はこの先「自分たちがどうしたいのか」を鮮明にして国際社会と付き合う必要があるのだが、よく考えてみればそれは日本人の一番苦手なことなのかもしれないし、少なくともみんなに嫌な顔を見せたくない安倍首相にとって一番苦手なことなのだろう。

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日米安保条約破棄とシーレーン独自防衛

アメリカのトランプ大統領が「日本と中国はシーレーンのタンカーは独自で守るべきだ」と発言した。そしてそのあとで「トランプ大統領が日米同盟破棄を仄めかした」と重ねた。さらにFOXテレビでも日米同盟は片務的だと今度は大統領自らが発言したようだ。G20直前であること、2020年選挙キャンペーンが始まったこと、イラン情勢の悪化などを含め様々なフレーミングで憶測することが可能である。






このニュースからわかるのはトランプ大統領が総合的な戦略を持っておらず、個別のディールをつまみ食いする「その日暮らしの」大統領だということである。日米同盟をネタに日本を恫喝すればある程度のベネフィットを得ることはできるだろうが、アメリカの中東でのプレゼンスがリスクにさらされる。沖縄の基地は中東の後方支援基地の役割を果たしているからだ。これで喜ぶのは中国だ。アメリカがグアムに「後退」すれば自由度が増すからである。日米同盟支持の識者たちは困惑気味である。

次にわかるのはトランプ大統領がたくさんの「オトモダチ」に勝手にしゃべられせているということである。Bloombergの記事は3人の「匿名の人々」がネタ元になっている。同じことは中東でも起きており、娘婿クシュナー氏のパレスティナ「救済」ディールをポンペオ国務長官が「うまく行くはずがない」と揶揄して問題になった。このためなのかイスラエルもパレスティナもクシュナーの登場する集まりには参加しなかったようだ。

話を本題に戻して、シーレーン防衛について確認する。

一方、トランプ氏はツイッターへの投稿で「(ホルムズ)海峡から中国は原油の91%、日本は62%、他の多くの国も同じように輸入している」と指摘した。「なぜ米国が他国のために無報酬で航路を守っているのか。こうした国々がいつも危険な旅をしている自国の船舶を守るべきだ」と不満を漏らした。「米国は世界最大のエネルギー生産国になった。そこにいる必要すらない」と米軍展開に消極姿勢を示した。

「タンカーは自国で防衛を」 トランプ氏、日中に要求 

この62%というのは間違った数字のようだ。細かく刻むことで「ああ、この人知っているな」という印象にはなるが、実際には8割を依存しているそうである。しかし、発言自体は合理的だ。

ホルムズ海峡はアメリカには関係がない。さらに日本は安全保障をアメリカに依存しているという弱みがある。さらにアメリカ民主党が支配する下院は予算を下ろしてくれそうにない。そうなると議会を説得するよりも日本を恫喝した方が「お財布」が得られる可能性は高い。トランプ大統領としてはイランにプレッシャーを与えられれば、そのお財布がどこにあってもよいのだろう。こうしていろいろなところに働きかけをして結果的に「何か当たればいいな」というのがトランプ流といえる。そして成果だけを強調して話すことには自己催眠的な効果も持っている。信念が周囲からの拍手で強化されてしまうのだ。

ただ、これをあれこれ詮索してもあまり意味はないだろう。専門家の情報をいろいろ読んでみたが、そもそも一貫した戦略を分析するのを諦めているようだ。「その場その場で呟いているのだろう」という分析になっているものが多い。大切なのは話を裏読みすることではなく、トランプ大統領も日米同盟ももはや信頼できないということを知ることだけなのかもしれない。

こうなると日本は日本の国益を守るために早速与野党を超えて話し合いを始めた方が良いように思える。日米同盟破棄を通告されたりイランに宣戦布告されたら大パニックが起こるだろうから、今のうちに話し合っておいた方がいい。そのためには争点になるような議論は一時休戦すべきだろう。

例えば、仮にイランの海域で戦争が起こった場合、日本は戦争状態の海域でタンカーを守ることになる。これは専守防衛で片付けられるかもしれない。一方、立憲民主党は「周辺海域の専守防衛」を唄っているのだがこの説明は転換せざるをえないだろう。

我が国周辺の安全保障環境を直視し、専守防衛のための自衛力を着実に整備して国民の生命・財産、領土・領海・領空を守ります。領域警備法の制定、周辺事態対処の強化などにより、主権を守るため現実的な安全保障政策を推進します。

立憲民主党 – 外交・安全保障

しかし、そのためには立憲民主党の顔も立ててやる必要がある。ところが安倍総理大臣は国会総括で会見を開き「悪夢の民主党政権説」をもう一度披瀝し(彼は自民党総裁ではなく日本の首相として会見しているにもかかわらずである)憲法改正に意欲を見せてしまった。安倍首相は国際情勢が変わりゆく中、自ら話を複雑にしてしまっていることに全く気がついていない。

例えば、安倍首相がアメリカの顔色を伺ってイラン封じ込めに参加したとする。日本のタンカーはイランに狙われることになる。さらに集団的自衛の枠組みと専守防衛の枠組みが混乱する。集団的自衛の枠組みでは日本の自衛隊は敵地に近づけないが、個別自衛の枠組みではタンカーを守る必要があるというような具合である。しかし、ここで仲間割れしてしまえばその隙に中国がやってくる。この海路は中国に取っても重要で、なおかつ中国にはアメリカと対抗したい意欲がある。

石油が止まれば原子力という話になるだろう。すると護憲派と反原発が結びつきさらに厄介になる。「テーブルに着いたら負け」という空気が生まれれば、野党支持者は確実に支持を失うだろう。お腹が空いているのに全く妥協しない人たち人たちという印象がつくからである。ところが、自民党は強行採決で押し切ることを余儀なくされ。政治的なリソースは消費され決定は遅れ、したがって国民生活に大きな影響が出るだろう。

潮目は全く変わってしまったことは明白なのだが、当事者たちだけがそれに気がついていない。悲劇のように見えるし喜劇のようにも見える。これが喜劇であることを望みたい。

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立憲民主党の最低賃金政策と砂漠化しかねない日本経済

立憲民主党が参議院選挙を前に「最低賃金を全国一律1300円にあげるべき」という政策を打ち出したそうだ。これを「韓国のように失敗する」と指摘する識者がいる。本当にそうなのだろうか。






まず反対派の声を見て行こう。呆れるしかない最大野党の参院選公約という経済学者の議論だ。全国一律で最低賃金をあげると「韓国のように失敗する」と言っている。理由は小売業・飲食業が伸びているからだという。確かにこの産業は生産性の上げようがない。

実際に韓国では就職活動生を含んだ若者の4人に1人が失業状態にありアルバイトすら見つけられていないという。日本もそうなったら大変だという気持ちはわかる。韓国、最低賃金の衝撃でバイト19万件減少…青年失業率が通貨危機後初の10%台という記事で中央日報が詳しく書いている。

ではなぜ韓国では最低賃金の引き上げが失業率を押し上げたのだろうか。それは韓国の経済が単純だからだろう。就職できない人たちが周囲からお金をかき集めて「とりあえずできる」事業を開始することが多いのだという。レコードチャイナが韓国のチキン屋は世界のマクドナルド店舗より多い?韓国自営業の問題点に、ネットも共感という記事を書いている。

韓国では外食産業が簡単に始める人が多いが、生き残るのは30%程度だという。実際に韓国のバラエティ番組などを見ていると、お兄さん(ヒョン)に投資してもらって店でも出そうかという話が頻繁に出てくるし、実際に店を始めるリアリティショーなども放送されている。単純な経済で働いて生きて行こうと思えばとりあえず始められることをやるしかない。ちょっと料理が得意な人がいれば「店でも出せるのではないか?」ということになるのだろう。背景には選択肢の少なさという問題がある。つまり産業が単純化し「一歩間違えば砂漠になる」というところまで来ているのだ。

では最低賃金の引き上げは必ず失敗するのだろうか。デービッド・アトキンソンが全く違うことを言っている。イギリスでは成功したというのである。最低賃金の引き上げが「世界の常識」な理由を読んでみよう。

デービッド・アトキンソンは生産性と最低賃金には正の相関関係があるという。ただ、この記事では「最低賃金をあげたから生産性が上がった」というロジックは書かれていない。つまり、生産性が上がったから最低賃金が上げられたのだということも考えられるし、もともと生産性が高い労働が準備されていて人がそこに移ることができたということなのかもしれない。この文章は途中の議論がスキップされていて(続きは本を読めということなのかもしれないが)問題が多い。

労働政策研究・研修機構がイギリスの最低賃金制度について詳しく分析(PDF)しているのだが、これを展開したウェブ記事は見つからなかった。イギリスではどうやら職種や年齢ごとに細かく最低賃金が規定されているようだ。

つまり、最低賃金保証制度の肝はばらつきを抑えることにあるような印象を受ける。こうすれば日本にあるような歪な二極化はなくなる。一部の終身雇用正社員が非正規雇用を「搾取」するような低賃金労働に依存するというようなことはやりにくくなるだろう。さらに最低賃金は政府保証から企業負担(つまり福祉から就職)という流れに位置付けられているらしい。自立更生を促しているのである。

国は面倒見切れないから自分たちでなんとかやっていって欲しいという方針には反対もあるようだ。最低賃金を引き上げて福祉を削るというような記事もでていて当事者たちが必ずしもこの「福祉切り捨て」に賛同しているわけでもなさそうだということはわかる。

これを踏まえて、アトキンソンの別の記事「企業に「社員教育を強制」するイギリスの思惑」を読んでみる。日本政府は職業教育を国がやりたがるが、これを企業にやらせようとしていると言っている。これらを総合すると、つまりゲームのルールを厳しくして企業を誘導するのがイギリス式で、今の企業(つまり低生産性)を温存しようとしているのが日本式ということになる。

イギリスは産業を一つのアリーナと見立てて企業同士を競わせている。一方日本では護送船団方式方式で一番弱い企業に合わせて生産性の高い企業に競争をさせないというようなことが起こる。そして日本ではそれでも面倒を見切れなくなると「合併」させて大きくして温存しようとするのだ。

労働政策研究・研修機構の資料に戻ると、イギリスがこのような方式を打ち出した背景には保守党と労働等の競い合いがあるようだ。労働党政権は最低賃金を提案して一度負けているので「アイディアのブラッシュアップ」を迫られた結果として、きめ細やかな最低賃金決定の仕組を創案することができたのである。

労働党は当初、最低賃金額を「所得の中央値の 5割」で固定する方式を採用、92 年の総選挙でもこれを主張したが、失業状況が悪化する中で、保守党の「最賃制度の導入は、雇用に対する悪影響を及ぼす」との主張や、広範な企業からの反対に効果的な反駁ができず、選挙にも敗北を喫した。当時、労働党の雇用担当広報官だったトニー・ブレア(94年に党首に選出)はこの結果をうけて、労使などのソーシャル・パートナーで構成される低賃金委員会の提案に基づいて最賃額の決定を行うシステムへの方針転換を決めた。

第 4 章 イギリスの最低賃金制度

最初にこの記事を書いた時「立憲民主党には新しい産業のビジョンがないことが問題だ」という結論で文章を書き終えた。しかし、労働政策研究・研修機構の資料を読んだあとでは「そもそも政府にそんなことがわかるはずはないので、自助努力を促すようにゲームのルールを変える方が実用的である」という感想になった。

「最低賃金1300円」という言葉が一人歩きしているのは大問題だ。年金問題から通しで見るとこれが日本の政策議論の特徴らしいことはわかる。2000万円足りないなどという数字だけが単体で語られてしまい総合政策が作れないのと同じように最低賃金は1300円だいや1500円だという議論がいつまでも続いていて結局誰も何もしない。

その背景にあるのは対論のなさだろう。つまり一度批判され「言い返せないな」と思った時に諦めずに次の案を作れるかが重要なのだ。さらにそのためには「意味のある反論をしてくれる人」を探さなければならない。党首討論のあり方を見ていると、日本の政治家は単に甘えているのかそれとも資質がないのかはわからないが、いずれにせよ対論というものが存在しないということだけはわかる。

もっとも、政権を取るつもりのない立憲民主党が真剣に最低賃金を議論しているとは思えない。彼らは「最低賃金を1300円に上げたいが自民党が邪魔をしている」と言い続けるだけで一定の得票ができるからだ。れいわ新撰組はさらに過激で「政府保証により1500円を目指す」と言っている。つまり賃金を国が保証しろと言っている。つまり、イギリスと違ってすべて国がまる抱えしろと言っていることになる。ただ日本には政治的対論者はいないので、彼らがここから脱却することは多分できないのだろう。

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とにかく戦争がしたいアメリカは戦争10分前まで行った

アメリカがイランと戦争状態に突入する10分前だったというニュースが入ってきた。散発的にいくつか情報が出てきていたが一番ショックだったのがブルームバーグだった。






トランプ大統領は21日に「われわれは昨夜、3カ所への報復攻撃を準備していた。私は何人死ぬことになるのかと質問した。150人というのが将軍の答えだった」とツイート。「攻撃の10分前に私が止めた」と説明した。

トランプ大統領:イラン攻撃は10分前に中止-「相応」でないと判断

トランプ大統領の心理状態がどのようなものなのかというのはTweetをみるとよくわかる。ほぼ選挙キャンペーンの話で埋め尽くされていた。2020年の大統領選挙キャンペーンのキックオフミーティングの高揚感に包まれていたのだろう。そんな中でとにかく戦争がしたいる部下からの一方的な情報を聞き「なんとなく」攻撃を決定したのかもしれない。だが、そのあと「念のために」確認したところ、150人くらい死にますねと言われたらしい。それでそれを止めたのだ。

だが、それほど悪気はなかったのだろう。だからTweetしてしまったということだ。一番恐ろしいのは「もうちょっとで戦争だったんだよね」と気軽に世界に発信してしまったところにあるのかもしれない。

このことから戦争など簡単に起こるものなのだということがわかる。問題はそれが継続できるかである。

日本の新聞を読んでいる人は、世界はイラン包囲網を形成していて国際的にイランを攻撃する空気ができていると思い込んでいるかもしれない。イギリスのようにそう考えている国はあるのだが、実際にはアメリカの言い分に懐疑的な国も多い。

また、民主党もアメリカはイランと戦争をする気がないと言っている。コトバンクで調べたところ、宣戦布告はもともと大統領の権限とされていたようだが「事後でもよいので議会の承認を得るように」と変わっているようだ。さらに予算措置は議会が行う。つまり、攻撃してイランを怒らせても戦争ができない可能性があるのだ。この基本的構造はアメリカが全ての戦争を泥沼化させる要因になっている。大統領が先走り議会が反発すると根本的解決ができず事態が長期化する。被害を受けるのは現地の住人と周辺の国際社会である。シリアの場合は難民の流出がヨーロッパに広がりヨーロッパの民主主義が大きく動揺した。

「大統領の気まぐれで戦争が回避された」というニュースは日本のマスコミではほとんど取り上げられていない。ご存知のように参議院選挙が近くなり「総理大臣が議会を解散するのか」というようなことばかりが話題になっているからである。内政の問題は選挙になれば休戦だが国際状況はその間も刻々と変わり続ける。

しかし、アメリカが単独で戦争を維持できずヨーロッパも協力者がいないとなったとき、これまでトランプ大統領に最大限「いい顔」をしてきた安倍晋三さんがトランプ大統領の要請を断れるかどうかはよくわからない。日本だけが頼みの綱になってしまう上に、石油をホルムズ海峡に依存する日本の方が当事者度合いが高い。

これまでこうした要請を断るのに便利に使われてきたツールがある。それが憲法第9条だった。賛成派も反対派もいろいろなことを言っているが実は自民党はこれを隠れ蓑にしてアメリカの要請を断り続けていたという経緯がある。最近デイリー新潮に「ベトナム戦争の派兵は憲法第9条があるから断ればいい」と田中角栄が言っていたという記事が出たばかりだ。

「角栄は『そういう時には、憲法9条を使えばいい』と返したそうです。アメリカが日本に押し付けた憲法を逆手に取って、日本が派兵しない理由に使うというのは、リアリストの角栄らしい理論だと思います」

田中角栄が「憲法9条」を盾にベトナム戦争への派兵要請を断っていた

安倍首相は周囲の反対を押し切ってまでこのカードを放棄してしまった。その際にわざわざ焦げた肉のような模型まで使ってホルムズ海峡の話をしていたことを記憶している人も多いはずだ。野党が騒いでいた巻き込まれ不安が現実的な問題になりつつある。

さらに、アメリカとイランが国家間の戦争をしたくない場合、イランは革命防衛隊やそのシンパを使って「ゲリラ的に」ホルムズ海峡を封鎖するこができる。ホルムズ海峡は日本にとっては重要な航路だが、アメリカにとってはそれほど重要ではない。

2020年に向けて対立を「演出したい」アメリカ議会はトランプ大統領に戦争をする権限は与えてくれないかもしれないのだ。結局、戦争にもならずに緊張だけが高まった時一番被害を受けるのは日本かもしれない。

そうなればすべてのアジェンダが中止されてイラン対応一色になることは想像に難くない。

日本はとても厄介な問題を抱えたのではないかと思う。「世界で一番トランプと仲が良い」と自認しているのなら安倍首相はテヘランなどに行かずトランプ大統領が軽率な動きを取らないように止めるべきだった。

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大変だ!年金が7兆円足りなくなる!!

今日は国会議論がなぜかみ合わないのかという話を書きたい。日本人が本質的に議会議論ができず党派対立に夢中になってしまう様子が嫌という程よくわかる。






実際に録画してあった党首討論を聞いてみた。確かに安倍首相は何回も7兆円と口にしているので言い間違いではなさそうである。共産党は「高額所得者からとれば1兆円くらいはなんとかなる」と言っている。それを7兆円足りないからダメだと答えているのである。予算の話なので1兆円は1年間に捻出できる額と考えてよいだろう。

ところが何回聞いてみても「どういう算出根拠で出てきた7兆円なのか」という説明はない。そこにどうとでも解釈できる余地が生まれる。折しも2,000万円足りないとかいや3,000万円だというような話が飛び交っていて国民は年金に不安を持っている。そんななか7兆円足りなくなるのではないかというのはインパクトのある話である。他にも新聞では年金資金が14兆円溶けたというような見出しが飛び交っている。知れば知るほど不安になってしまうのである。

さらに、安倍首相は今後の年金支給額の判断を選挙の後に発表しようとしている。選挙期間中は何も説明しないだろう。これも「安倍首相は何か隠しているに違いない」と国民を不安に陥れる効果がある。

問題は不安を煽るだけ煽っても解決策に全く結びつかないところである。そこで与党を信じたい人は「野党は不安を煽って対案を出さないから、そんな話は聞かなくていいのだ」と言ってすべて耳をふさいでしまう。一方野党支持者たちは大変だ大変だと騒ぎ続ける。

ではこの7兆円という話はどこから出てきたのだろうか。新聞などを検索してみたが記事は見つからない。唯一見つかったのはWikipediaだった。

2004年の導入以来、物価上昇率の低迷が続いたことから、マクロ経済スライドによる年金額(780,900円×改定率)のほうが、物価スライド特例措置による額(2012年度は786,500円)よりも低くなっているので、実際の年金額は、物価スライド特例措置による額が続き、結局マクロ経済スライドは2014年度まで一度も実施されなかった。このため、当初からマクロ経済スライドが実施された場合の想定よりも約7兆円も多く年金給付を行っていて、厚生労働省の想定を上回るスピードで積立金の取り崩しが進んでいる。

マクロ経済スライド

どうやらマクロ経済スライドを導入する前に7兆円払い過ぎていたという計算があったようだ。これが、安倍首相の言っている7兆円なのかはわからないのだが、これならつじつまは合いそうである。ただ、この7兆円は単年度の話ではない。

小学校で「何かを比べる時には単位を揃えましょう」と習う。安倍首相はお手伝いさんに宿題をやらせたためなのか小学校の算数が習得できていないようだ。「ああ、共産党か面倒だな」という気持ちも透けて見える。

新聞にはぜひ「7兆円の根拠は?」とか「実際にいくらい減るのか?」聞いてみてほしいのだが、官邸の御用機関になっている記者クラブにそれができるかはわからない。「今は言いたくないらしいから聞かないでおこう」と忖度しているのだろう。

ところが、共産党も負けてはいない。そもそも相手が議論を面倒臭がっているということもわかっているし、新聞社が「ファクトチェック」をやらずひたすら永田町という村の事情ばかりを追いかけていることもわかっているのだろう。さらに有権者も議論の中身には興味がない。つまり日本人はそもそも議論には興味がない。興味があるのは議論に勝つことだけである。であれば「思い切り騒ぎましょう」「不安を煽ってやりましょう」というのは共産党として取り得る唯一の選択肢なのかもしれない。

7兆円足りませんよといえば誰か振り向いてくれるかもしれないと考えてこういうTweetを流しそれが支持者たちに広がるという仕組みになっている。共産党は試算を出しているのだから、この7兆円が単年度のものでないということは知っているはずだ。なので注意深く読むと「1年で7兆円足りなくなる」というような書き方はしていない。

この食い違いの元は安倍首相だ。大学レベルの議論だけではなく、多分小学校レベルの算数も苦手だったはずである。彼が政治家としてやって行けているのは「岸信介」と「安倍晋太郎」の孫であり子供であるからにすぎない。世襲というものの恐ろしさを感じる。ただし、こうした人がのうのうと政治家を続けられるのは日本人が小学校の算数レベルの間違いも「おかしい」と思わないからである。我々普通の有権者がそれに気がつかないのはまだ仕方ないのかもしれないのだが、実は新聞社ですらそれを問題だとは思わないところに根深さがある。今、新聞社が関心を持っているのは解散だけである。

日本では政策ベースのマニフェストが全く根付かなかった。だから、この先も漠然とした不安が払拭されない。だから、閉塞した不安な政治状況に向き合うかなかったことにして無視することになるだろう。そんな中でできるのは自己防衛だけなので、ますます誰も消費をしなくなるだろう。結局政治がデフレマインドを作っているのだ。

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Facebookのリブラが壊す?通貨と銀行

Facebookがリブラという仮想通貨を始めるそうだ。2020年発行を目指すという。






日本語では概ね好意的な報道が流れている。日経ビジネスが伝えるように「あのFacebookが安心できる通貨を始めるらしい」という論調だ。別の記事はリブラはステーブルコインであり投機目的の仮想通貨とは違っていると言っている。背後に実体通貨バスケットの裏打ちがあり、乱高下しないという。

このニュースを聞いたときに「日本円が崩れた時の逃避先に使えたらいいな」と思った。アメリカの銀行口座を持っていたのだが、横行するマネーロンダリングの規制が厳しくなり外国在住の人は口座が持ちにくくなりつつある。

MMT理論なども平然と主張されるようになり、どうやら日本が財政破綻する可能性は高まっているようだ。しかし、これまで大企業でなければ資金逃避(分散投資)はできなかった。都市銀は国債から逃避しているようだが地銀はまだ国債を保有している。このことから規模の小さい企業と個人は否応なく円に縛り付けられてしまうということがわかる。リブラがどれくらいの資金を蓄積できるかはわからないのだが、逃避先としては使えそうである。

ところが、これに水をさす動きもある。アメリカの下院では早くも反対意見が出ているそうである。表向きの反対理由は「Facebookは個人情報保護が信頼できない」というものが。だが、この「個人情報云々」は単なる口実に過ぎない可能性もある。

アメリカには銀行口座を持てない人たちが大勢いる。彼らはUnderbankedとかUnbankedなどと言われる。アメリカでは25%程度がこのカテゴリーに当たるという記事もある。彼らは口座に入れるお金がなく、彼ら貧困層が住んでいる地域には支店すらない。Facebookはあくまでも途上国対策としているのだが、実際にはUnderbankedの人たちもターゲットになる可能性があることになる。

アメリカの銀行が困窮者を無視できるのは銀行などの既存金融機関に代わる手段がなく独占状態にあるからである。もし、中間層がFacebookに流れれば、今度は非効率的な金融機関が打撃を受けることになるだろう。このほかに、現行の国際送金のネットワークが影響を受けるかもしれないという観測もある。

Facebookには別の懸念もある。とにかく信頼されていないのである。

例えばPaypalは決済・移動サービスだがブロックチェーンは使っていないしその必要もない。ギズモードの記事は同じようなサービスはどこもブロックチェーンを使っていないのに、なぜFacebookはブロックチェーンを強調するのかが疑問だと言っている。

さらに「あまり儲かりそうにないものにザックが手を出すはずはない」という懸念もある。トランザクションデータを手に入れればそれを加工して売ることもできるわけで「形としては会社を切り離しているがそれは嘘なのでは?」という疑念がどうしてもついて回るのだ。

イアン・ブレマーは、リブラによってFacebookがますます政府から狙われやすくなるというリスクがあるが、うまく行けば銀行にアクセスできない人に手軽な支払いの代替手段を提供できるようになるかもしれないと言っている。

アフリカのように既存の資本主義インフラが使えない地域では同じようなスマホベースのサービスが爆発的に伸びており、Facebookがここに参入したいと考えてもなんら不思議ではないし、Facebookはこれをうまくこなすだろう。その一方でFacebookが単なる慈善事業としてリブラを始めるとも思えない。

いずれにせよ、「銀行」や「通貨」というかつて我々が当たり前だと思っていたものが崩れつつある。好むと好まざるに関わらず我々は急激な変化に直面しているのである。

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ポピュリストとしての山本太郎

AERAに載っていたという山本太郎のインタビューを2本読んだ。れいわ新選組「消費税廃止」を掲げる本当の狙い 山本太郎議員に聞く山本太郎議員、誘われたら安倍内閣の財務相に? 自民と組む条件は… この人「ポピュリストだな」と思った。






これまで「ポピュリズム」について散漫に見てきた。ポピュリズムには決まった定義はなく、それぞれが好き勝手なレッテル貼りに使っている側面がある。なので「山本太郎はポピュリスト」と言っても根拠のない悪口にしかならない。

まずAERAでの山本太郎の主張をまとめてみた。

  • 党名は適当に決めた。特にこだわりはないがキャッチーで覚えやすい。肉球を入れたのはかわいいから。
  • 野党が支持されないのは増税ありきの財政再建路線だから。それでは魅力がない。
  • 財源は国債でも「応分の負担」でもとにかくなんとでもなるから心配するな。
  • 減税してくれるなら自民党と組んでバラマキをやっても良い。原発と憲法の問題が合わなくても別に構わない。その代わり俺は暴れる。
  • 経済対策費用の50兆円くらいなんとでもなる。とにかく緊縮財政が悪いのだからズベコベ言わずにそれをやめたら経済成長してなんとかなるはずだ。

ここからわかるのは山本太郎が経済や政治には門外漢で、特に経済を「極めて単純に」見ている点だ。国粋主義や民族主義由来ではないのでその意味では「左派ポピュリスト」であるといえる。だがここまで来ると右とか左というラベルにはそれほど意味がない。

だが、山本を見ていると「ポピュリストの何が悪いんだろう」という気持ちにもなる。アメリカではトランプ大統領が台頭し、イギリスでもボリス・ジョンソンさんが首相候補ナンバーワンなのだそうだ。どちらも乱暴な物言いで知られる人である。世の中が複雑になるとテレビ映えする暴れん坊が人気者になる。人はテレビを見て政治を知るからである。

山本が「政党の名前なんか覚えにくいからなんでも良いから覚えやすいものにすれば良いんだ」と言っているように「徹底した無党派目線」である。立憲民主党のキャンペーンサイトには「おしゃれ民主主義」で気取ったところがある。もともと立憲主義という庶民にはよくわからないものを党名に掲げていることから、立憲民主党には「インテリで気取った」ところがある。一方、山本の主張はわかりやすい。つまり、ポピュリストは「大衆が言っていることを同じ目線に立ってダイレクトに伝える」才能があるということもできるのだ。

山本の「財源はなんとかなる」はまぐれあたりする可能性が出てきている。日本の状況を冷静に分析する海外の専門家の中にも消費税延期を言い出す人が出てきた。朝日新聞によるとオリビエ・ブランシャール氏は「私なら期限を定めず延期して、『引き上げられる時期が来たら直ちに引き上げる』と言うだろう」と言っている。山本の「2%になるまでバラマキ続ける」と同じことを言っているのだ。これが非専門家の恐ろしいところだが、一回当たったからと言ってそれが再現するとは限らない。ただ、人々は一回当たれば次を期待するだろう。

このように、専門性のなさと単純化は危険に満ちている。山本はトンデモ法と名付けたいくつかの法律を廃止するらしい。TPP協定、PFI法、水道法、カジノ法、漁業法、入管法、種子法、特定秘密保護法、国家戦略特別区域法、所得税法等の一部を改正する法律、派遣法、安全保障関連法、刑訴法、テロ等準備罪などがそれにあたるそうだ。理解できないものは全て廃止すると言っているのである。これはポピュリストの極めて危険な一面である。つまり、わからないからなんでも反対なのだから、政権に取り込まれてしまえば(彼のファンも含めて)なんでも賛成になってしまう可能性がある。

実際にイタリアでは左右ポピュリストの政権があり内部でバラマキ政策を競っている。日本ではこうしたことは起こりそうにないが、自民党の中の公共事業推進派(MMTを主張するような勢力)と山本太郎が連合して自民党の既存勢力を置き換えてしまう可能性はある。百家争鳴のイタリアと違い権威志向の強い日本では「政権政党自民党」というのは利用できる看板だろう。中から改変する方が簡単なのだ。

その意味では日本会議が徐々に影響力を強め精神的に自民党の一部を「改変」してしまったのに似ている。山本も「自民党と組んでいい」と言っていることからわかるように第二の日本会議になれる素質があるということだ。こうした動きはアメリカでも起きている。共和党は今やトランプ党である。つまり、いったん下野して「精神的な改変」を繰り返す中で山本らの勢力と組んでしまう可能性もあるということになる。

ただ、山本の主張にはポピュリズムに当てはまらないものもある。ポピュリストは内外に敵を作り脅威を煽るものと相場が決まっているのだが、山本の主張にはあまりそれがない。またトランプ大統領のように「あなたたちはすばらしいものの中にいるのだ」という一体感を強調したりはしない。

日本には欧米のような外からの脅威がない。これまで移民を受け入れてこなかったし、EUのように上から国家を抑えつけるような機関もない。唯一脅威として使われているのは「放射能」である。大きな敵を設定しない山本はまだポピュリストの有資格者とは言えない。

山本がまだ組織を持っておらず「運動体を維持する必要」がないというのも重要な点である。運動体を維持するためには革命は進行中だがまだ道半ばであると主張する必要があり、そのためには敵の設定が必要になる。山本にはまだその必要がない。

この「外敵がいない」ということが、山本の勢いが全国規模で広がらない原因にもなっている。自民党を支持する人も野党を支持する人も「これまでの仕組みを継続していってもまだなんとかなる」と感じているのだろうし、選挙に行かない人も多分そう思っているはずだ。唯一騒いでいるのが安倍政権を敵設定している人たちだ。Twitterでは一部「自民党を倒してくれると思ったから寄付をしたのに金を返して欲しい」と言っている人がいるようだ。

山本の運動の核にある動機は「とにかく政治的権力を握るまでは無党派目線にたってなんでもやる」という意欲のようだ。小沢一郎となぜコンパチブルであったのかがわかるとともに、特にやりたいことがなかった小沢一郎のように政界をふらふらとさまよう存在になるのかもしれないとも思う。

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香港のデモは民主主義のモデルになり得るのか?

香港の100万人デモが一定の成果を挙げた。逃亡犯条例の改正が延期されたのである。勢いに乗った香港市民は200万人デモを行い行政長官が謝罪に追い込まれた。これは民主主義の勝利と言えるのだろうか。






まず事実関係を整理したい。逃亡犯条例の改正延期、香港政府トップが記者会見で語ったこと。「決定は私が下した」【会見詳報】を参考にした。

  • 法令の目的は、香港が犯罪者の逃げ込み先にならないようにするためのものだった。
  • 中国の直接的な指示はなかった

ところがこの条例案が反発をうむ。中国と香港政庁への累積した不信感が爆発し「一国二制度が潰される」という感情的なレスポンスを生んだわけだ。こうしたことが起こるのは、香港の民主主義が限定的だからである。行政長官の選挙権を持っている人は1200名しかおらず、立法会も直接選挙枠35に対して30名の「補正」が入る。

こうした補正が入るのは「香港の民主主義」に枠がはめられているからだろう。自治権の拡大が「中国分裂」に向けて作用しかねないという事情がある。ところがこの枠が却って反発を生む。

こうしたことは日本でも起きている。日本の議会制民主主義は限定選挙権の時代が長かった。天皇が主権者であることから国民主権は危険思想とされており、加えて社会主義共産主義が現実的な脅威だったという事情がある。このため、徐々に選挙権を拡大せざるをえなくなり、最終的に男子普通選挙が実施されることになる。

戦前には何回かデモによって倒された内閣があるそうだ。桂内閣が日比谷焼き討ち事件をきっかけにして倒され、寺内内閣は米騒動をきっかけに倒れた。日比谷焼き討ち事件は日露戦争の賠償金を取れなかったことが原因になっている。また米騒動はきっかけこそは米価高騰に対する抗議運動だったが、次第に社会主義者の抗議運動に利用されるようになった。無産階級(プロレタリアート)は選挙からは排除されていたのだから当時の民主主義に責任を持つ必要はなかったのだ。

さらに、戦後に普通選挙が実施された後にもデモは起きている。こちらは日本人が関与できない日米同盟が原因になっており岸内閣が倒された。日本人は国政には関与できても日米体制という大枠を変えられなかったということだ。

あらかじめ枠が決められているとデモがおこりそれが沈静化しなくなる可能性がある。これをいいか悪いかで判断することはできない。「参加していない」と思う人はこうした手段に訴える可能性があるという単純な事実があるだけなのである。

ところが面白いことに選挙権を与えて「ご自由にどうぞ」というと却って選挙に参加しない人が増えてしまう。労働組合や各種利権団体に属している人は選挙に行くが組織されていない人は自ら放棄する。その上に年金受給者が既得権益者になっていて彼らも「補正効果」を生み出している。実は香港の政治が「親中派の既得権保持者」に握られているのと同じ状況になっている。

日本で政治から締め出されていると感じている人たちは反原発デモや集団的自衛権反対デモなどを実施してきたがどれも世論の同調を得ることはできなかった。最近では年金返せデモをやろうとしているようだが、もはやニュースバリューを見出すことは難しい。この人たちが締め出されているのは政治ではなく既得権を持った利権集団であり、実は香港とそれほど違いはないのかもしれない。

香港と日本の一番の違いは「一般の人たちも選挙に参加しようと思えば参加できるようになっている」という点である。つまり平時の普通選挙や民主主義には民衆の懐柔策という側面がある。

このように条件が違うのに多くの人たちが香港のデモを支持しているようだ。ある人は民主主義の勝利といい、ある人は経済的に成功しつつある中国共産党に対するアンチテーゼだという。このような投影は日本の民主主義や経済成長が機能していれば起こらないはずである。多くの人が行き詰まりを感じているがそれを認めることを拒否しているのであろう。

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外交火遊びの末に戦争を起こしかけた「外交のアベ」

安倍首相が危うく戦争を起こしかねない状況を引き起こしていると言っても良いのではないか。原因は前宣伝のしすぎである。選挙にイランを利用しようとして、逆に誰かに利用されてしまったのだ。






安倍首相は大した見込みもなく、250万ドルの無償資金援助を持ってイランに会いに行った。ロウハニ大統領とはそれなりの話ができたがハメネイ師との会談は不調に終わった。「アメリカは信頼していないから」という理由で親書も見てもらえなかったようである。

ところが訪問時に思いがけないことが起きた。日本の所有するタンカーが襲われたのだ。世耕経産大臣は「何の問題もない」と会見したが、アメリカのニュースではタンカーの腹に穴が空いている様子がニュースで流れた。日米のニュースを同時に見ていると世耕さんがいかに間抜けなのかがよくわかる。「ちっとも大丈夫ではない」のだ。

だが、そのあとのアメリカ側の手回しがよすぎた。なぜかアメリカがイランの仕業だというビデオを持っているというのだ。ポンペオ国務長官が手回し良く会見をし、トランプ大統領もとにかくイランのせいだと声明を出した。NHKはアメリカの言い分をそのまま流した。NHKの忖度もここまできたら芸術である。

もちろん「ただの偶然」かもしれないのだが、安倍首相は利用された可能性が高い。つまり、戦争のきっかけに利用されかけたのである。

このあと、各方面が非難合戦を始めた。アメリカはイランが国家ぐるみでやっているといいイラン革命防衛隊が暴走したという人もいる。イラン側はアメリカの謀略だと言っている。さらにはBチームと呼ばれる人たち(イスラエル首相・ボルトン補佐官・サウジアラビアの皇太子)が仕掛けていると指摘する人も出てきた。黒井文太郎さんが指摘するだけでもこれだけ容疑者がいる。少なくとも誰かが中東で騒ぎが起こることを期待しているのだ。

イランとの関係が良好とはいえないアラブ諸国からも懸念の声があがった。アラブ連盟のアブルゲイト事務局長は「危険な展開だ」とし「中東の混乱を狙う勢力がいる。このことを知る必要がある」と強調し、国連安保理に対処を求めた。

米、タンカー攻撃「イランに責任」 イランは関与否定 

アメリカの手回しの良すぎる主張とは裏腹につじつまが会わないことが多い。まずアメリカのビデオの件だが、国華産業は機雷説を否定している。識者の中にも喫水線より上に機雷を仕掛けるのは不自然だという人がいる。わざざわ水面に穴を出してわざわざ取りに戻るのは「これを写してください」と言っているようなものである。

国連は「第三者機関による検証が必要」と言っている。

一方、国連のグテレス事務総長は14日の記者会見で、攻撃について、「真実と責任の所在を明らかにする必要がある」とした上で、「独立した団体による調査が必要だ」と述べ、第三者による調査の必要性を訴えた。

「イラン関与」裏付け、米が機密開示を検討

トランプ大統領は「とにかくイランの可能性が高い」と言っており要領をえないので本当のことは知らないのかもしれないと思える。実はアメリカの政府も踊らされれている側なのかもしれない。当初トランプ大統領は「世界の警察はやめる」と言っていたわけでその考えは今でも変わっていないようだ。であれば軍の方は「トランプ大統領の私的な関心事を守るためには軍隊が必要」と説得し続ける必要があるわけだ。

菅官房長官はアメリカと緊密に連携すると言っているが、これは「アメリカの指示を待つ」ということなのだろう。集団的自衛権の時にやけにホルムズ海峡に執心していたので今の状況と恐ろしくリンクする。しかし、2014年はオバマ政権時代だったので政権とは関係がない人たちの意向があるのかもしれない。そう考えると安倍政権もトランプ政権も「踊らされる側」なのかもしれない。

日本に関係がないタンカーが襲われたとしても日本が集団的自衛に協力してくれるかどうかはわからない。しかし「日本のタンカーが襲われた」とすれば関与はさせやすくなるだろう。CNNには次のような分析が出ている。つまり、中東もヨーロッパも軍事作戦には参加しないだろうというのだ。そうなるとアメリカが「国際行動」を主張して中東に展開するためには日本を道連れにするのが一番簡単なのである。

The US might be able to count on Israel, Saudi Arabia and the United Arab Emirates if push comes to shove, but that’s not going to come near to the firepower and political support George W. Bush was able to muster in his “coalition of the willing.” The Europeans, particularly the French and the Germans, are unlikely to back military action. The United Kingdom, consumed by Brexit, probably doesn’t have the appetite either.

US policy toward Iran is all stick and no carrot

誰が何を意図しているのかはわからないのだが「初動」によって印象は全く違っているというのは確かなようだし、緊張を高めたい誰かがいるのも確かなようだ。

日本はそもそもカモにされやすい立場にあるわけだが、安倍首相は選挙を有利に運ぶために、日本人の命と財産を危険にさらしたといえるのではないか。トランプ大統領が全てを仕込んだとも思えないので「このチャンスに日本の世論に火をつけてやろう」とした可能性がある。さらに外務省も危険が察知できなかった。日本の情報収集能力と「躍らされる」という立場は特定機密法を作ってもなんら変わらなかったのだ。

いずれにせよG20の前に「安倍外交」は世界の笑い者になった。BBCは冷静にこの件を伝えているのだが、内向きで世間知らずな有権者には受けるだろうという論調である。イランは最初から日本の仲介などあてにしておらず、ロシア・中国側に接近している。

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