全銀ネット障害は「OSアップデートでアプリを直したら銀行間振り込みが数日止まりました」だった

全銀ネットについて「COBOLとメインフレームはもう限界だろう」というようなことを書いた。

今回全銀ネットのエラーの内容がわかったのだが実はそんな難しい問題ではなかったようだ。32ビットOSを64ビットOSに移行するにあたってプログラムを書き直したら「容量不足」が起きてプログラムが止まってしまったようだ。要するにWindowsXPで動いていたものをWindows11に変えたらメモリが足りなくてアプリが止まりましたという程度の話だったようだ。実際にはアプリが止まった訳ではなく中の大切なデータがぐちゃぐちゃになったそうだ。

ちなみに作業を手がけているのはNTTデータだった。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」でおそらくたいして注目されるような話でもないと思うのだが、前回の情報には不確かな点も多かったので最新の情報にアップデートしておきたい。

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岸田総理をトップとする「デジタル行財政改革の新しい会議」が開く新しいパンドラの箱

政府のデジタル化というと「そんなものは実現しないのでは」とあまり期待をしていない人が多いのではないかと思う。だが岸田総理はデジタル改革こそが支持率向上の目玉政策だと考えているようだ。これまでの会議体を束ねる新しい会議体が新設される。岸田総理の力強いリーダーシップの元で地方の事務基盤の強化を狙うが会議体の上に会議体を作ってもさらに混乱するのでは?という冷ややかな見方がある。総理直属だけあって50人ほどの大所帯になるそうである。まさに鳴り物入りだ。

ただこのデジタル改革会議は新しいパンドラの箱を開けることになるだろう。地方側の準備が全く整っていない。この問題は専門誌などでは盛んに報道されているが地上波や新聞の政治報道に反映されることはない。

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マイナンバー健康保険証問題より深刻な医療機関のIT脆弱性問題

マイナンバー健康保険証の懸念点の1つは「医療機関から健診データが漏洩する」というものだった。ただし根拠はかなり脆弱なもので、どちらかといえばあまりITに詳しくないマスコミが騒ぎを大きくしていたような側面がある。

ITメディアニュースに「医療団体、ITベンダーに「サイバー被害の一部を負担するべき」と提言 情報提供不足なら契約になくても責任求める」と言う記事が出ていた。この手のニュースがYahoo!ニュースに出てくることはないのだろうが、Feedlyではよく読まれているようだ。サイバー被害の対策費用を誰が出すかで揉めている。放置すれば情報漏洩やシステムダウンのリスクが高まる。

マイナ健康保険証問題よりもずっと深刻な問題が放置されていると感じた。原因は医療機関とIT業界の意識のズレである。特に医療機関の時代錯誤ぶりは目に余るものがある。ただし医療機関の意識を変えるためには抜本的な政策転換が必要だ。おそらく今の日本にはそれほどの危機感はない。

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マイナ健康保険証プロジェクトの「失敗」をそれほど深刻に考えない方がいい理由

このブログではよくマイナンバー健康保険証の問題を取り上げる。批判的に書くことが多いのでおそらく「日本を卑下する発言だ」と考えて反発する人もいるのだろうなあと思う。そこで今回はそれほど深刻に考えなくてもいいのではないかという意見を書く。キーワードは「事前審査制」である。

つまり特に「日本が没落してITプロジェクトをまともに扱えなくなった」というような深刻な問題ではないのではないかと思う。

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マイナンバーと紐付けが終わっていない健康保険アカウントの総数は36万人分

立憲民主党が協会けんぽに対するヒアリングを行い、結びつけが終わっていないアカウントの総数が36万件程度あると確認した。厚生労働省は「ひも付けを急ぐ」としているが具体的な手段やタイムラインは提示しなかったようだ。

この件に関しては40万人分のアカウントは全て不正利用であるという誤解が広まっている。ニュースを読めないかあるいは読んでいないのに政治議論に参加したがる人が増えていることも浮き彫りになった。いわゆる「情弱」と言われる人たちだがSNSで可視化され無視できない存在になっている。

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河野太郎大臣の「閣僚給与カット」はなぜヤフコメで猛反発されたのか?

河野太郎大臣が給与返納を申し出た。閣僚給与3ヶ月分の自主返納だった。ご本人は反省のつもりだったのだろうがヤフコメには多数の投稿が寄せられ、一時はコメントランキングでトップになっていた。炎上とは言わないまでも否定的なコメントが多かったようだ。なぜ反発されたのかについて考える。

ただこれを書いてから新しい問題が見つかった。今後は既に「問題は解決していないのに閣僚給与カットで逃げるのか」という批判も高まるのかもしれない。問題を共有できない組織文化を作ったツケはあまりにも大きかった。組織のリーダーの落とし前の付け方の難しさを感じる。

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「マイナポイントは給付されたのに」推定40万人のマイナ健康保険証ひも付け作業はなぜ未了のまま放置されたのか

今度はテレビ朝日の独自取材だった。マイナポイントが支給されているにもかかわらず健保側のひも付け作業が終わっていないという人が推定で40万人程度いることがわかった。各媒体は政府に忖度して「未了・遅延」と書いているが実際には「申し込み放置」が近い。岸田総理の強い意向で点検作業は原則11月に終わることになっているのだが「新たな問題」が浮上した事になる。だが、色々調べてみるとおそらく厚生労働省はこのことを知っていたのではないかと思える。知っていたのになぜ誰も指摘しなかったのかも気になるところだ。今わかっている報道をもとに状況を整理した。

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アメリカのDARPAは29億円を出してサイバーセキュリティ人材コンテストを実施 専門家を戦略的に育成

興味深い共同通信の記事を見つけた。「米AI活用でサイバー防衛 保護技術創出へ競技会開催」というタイトルになっている。ヘッドラインとしては毎日新聞の「米国防当局、AIの技術力競うコンテスト開催 賞金26億円超」の方がわかりやすい。お金を出してインフラ拠点のサイバー防衛のための企業と人材を育成しようとしている。先日ワシントンポストが「防衛省のサイバーセキュリティはお話にならないほど杜撰だから情報提供はできない」と指摘する記事を読んだ後だったので「ああ、アメリカはそこまでやっているのか」と思った。

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防衛省の最高機密情報が中国軍にハッキングされるも防衛省は「スルー」の考え

どうやら防衛省のサーバーが中国軍ハッカーに侵入されたようだ。時事通信が報道しX(旧Twitter)でも話題になっていた。この件について聞かれた日本政府は「機密情報が盗まれた形跡はない」と言っている。おそらく盗まれたことに気がついていないのだろう。このままではアメリカ軍は日本に情報提供ができない。日米韓が連携して北朝鮮のミサイルに対応するといった高度なスキームの構築は難しくなりそうだ。

ワシントンポストには「問題解決の最初の一歩は問題の存在を認めることである」という指摘がある。日本政府はそれに応えなかった。

IT技術の不足が国土防衛に大きな影響を与えようとしている。

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岸田総理が記者会見を開き「デジタル敗戦」を訴えるもマスコミはスルー

マイナ健康保険証の問題で総理大臣が記者会見を開きデジタル化への自身の思いを熱く語った。政調会長時代の失敗を自分の調整力不足と認めず「デジタル敗戦だ」と記憶を改竄したことが前のめりの原点になっているようだ。このままでは「デジタル玉砕」になるのでは?と思った。

だが、デジタル敗戦という言葉は記事からは抜かれてしまった。単に「先送り」とまとめているところもある。Yahoo!ニュースでも大して注目されなかった。8月には終戦記念日がやってくる。言葉が一人歩きし炎上しかねないというメディアの親切心だったのかもしれない。具体的な対策も提示されなかったため「何を言っているのだ」と思った人もいただろう。

今回はまず会見を見た個人の所感を書き、発言概要についてまとめ、各社の報道について整理する。

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