8,900人と考え議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方

To Be or not To Be…… トランプ大統領の心境はまさにそんな感じのようだ。

トランプ大統領はイランに対して不規則な発言を繰り返しかなり混乱した状況にあることがわかる。記者たちにイランを攻撃するかどうかわからないと主張しているそうだ。

狂人理論からこう言っているのではない。おそらくトランプ大統領は本当にどうしていいかわからなくなりつつある。

報道を見る限り、G7から帰国するときにはイランに対する攻撃にかなり前のめりだった。軍事に詳しい人達によると直前の兵力結集は「即断ができる規模ではない」そうである。イスラエルとコミュニケーションを取り何らかの準備を進めていた可能性が高い。

しかしながら、アメリカ合衆国に戻りアメリカ・ファースト論者から猛烈に反対されるとトランプ大統領の決意は揺らぎ始めた。

バンス副大統領はあらゆる選択肢は排除しないとしてはいるがかなり強硬にトランプ大統領に意見したのではないかと思う。

反戦論者の筆頭はタッカー・カールソン氏だ。イランを今すぐ攻撃すべきだと主張するテッド・クルーズ上院議員に対して「議員はイランについて何も知らない」と罵っている。クルーズ氏は「カールソン氏は反ユダヤ主義者だ」と罵り返した。

トランプ大統領はMAGAの気分をFOXニュースで知ることが多いようだ。しかしこの問題に関してはMAGAが好戦派と非戦派に分かれておりお互いに罵り合っている。トランプ大統領を支持する人たちはこうした「議論」を車の中のラジオやポッドキャストなどで聞いている。彼らは気に入らない人々を「反アメリカ主義者、社会主義者、専制主義者、マルスク主義者、反ユダヤ主義者」など思い思いのラベリングで罵るが理解度は極めて浅い。

ABCニュースは「Diplomatic breakthrough or military action? Trump’s choice on Iran: ANALYSIS (外交ブレークスルーか軍事アクションか)」という記事の中でトランプ大統領の逡巡ぶりを記述している。今後24〜48時間が極めて重要になりそうだとしておりトランプ大統領がまだ迷っていることがわかる。

トランプ大統領の交渉術は極めて稚拙。相手に強いプレッシャーをかけて妥協を引き出すというもの。

ところがハメネイ師は側近をほとんど失った孤立状態にあり誰を信じていいかわからなくなっている。徹底抗戦を主張する声明を出しており、とても外交交渉に引っ張り出せる状況にない。

トランプ大統領はロシアのプーチン大統領に期待したがヨーロッパは強硬に反対した。このため現在はパキスタンの軍幹部に接近している

トランプ政権には、外交を担当するルビオ国務長官が実は好戦派でヘグセス国防長官はアメリカ第一主義者で非戦論者というねじれがある。

展開した米軍が地域の米軍防衛のための部隊なのかイランの攻撃を意図しているのかはよくわかっていないようだ。ヘグセス国防長官は議会に対する情報提供を拒否している。ヘグセス国防長官はおそらくイランを攻撃しても決定的な打撃を与えることはないと報告する可能性が高い。アメリカが「イスラエルの戦争」に巻き込まれるのを恐れているからだ。

とはいえ、好戦主義者のルビオ国務長官が積極的に外交努力に協力するとは思えない。残るウィトコフ特使などは言ってみれば外交素人でありルビオ国務長官の協力なしに独自で外交を推進することは出来ないだろう。

すでに詰んでいる。

日本の国内事情についての記事で少し触れたがトランプ政権は「NATO首脳会談を欠席するかもしれない」と仄めかし始めた。国際社会から言質を取られ選択肢を制限されることを恐れているのだろう。

アメリカの議会では超党派で「トランプ大統領のイラン攻撃の選択肢を制限すべきだ」という動きも出ているようだ。しかし、共和党は世論の動向を読みかねており、いまのところ目立った動きになっていない。

トランプ政権に入ってからのアメリカ合衆国はむしろ国際問題を創り出す側に回っている。またアメリカ第一主義者は国内ではアメリカの民主主義を破壊しつつある。しかし皮肉なことにこと国際問題に関しては戦争(第三次世界大戦と呼ぶか中東戦争と呼ぶかは人それぞれなのだろうが)を抑止する側に立っている。

この宙ぶらりんな状況が温存されると、おそらくイランは核兵器廃絶どころか開発を更に加速させることになるだろう。これはウクライナ問題から世論飲目を逸らせたいプーチン大統領に格好の機会を与える。

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