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石破総理がついにフリーズ – イスラエル・イランの戦争を巡り


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アメリカ合衆国がイランに対する攻撃に踏み切った。この受け止めを聞かれた石破総理はついに判断停止状態に追い込まれてしまったようだ。記者たちに受け止めを聞かれたが答えられなかった。

本来なら批判したいところだが「それどころではない」と感じた。どうも様子が変なのだ。

石破総理の表情はどこか疲れており虚ろに見える。

石破総理はルビオ国務長官の「アメリカ合衆国は関与していない」とする声明を真に受けてしまいイスラエルを「到底許容出来ず、強く非難」する声明を出した。この声明はアラブ世界では好意的に受け止められており、ある意味では「正しい」声明だった。

ところがG7サミットに出席するとヨーロッパは核兵器開発の脅威を懸念している事がわかった。すでに核兵器保有国のロシアがウクライナに侵攻している上に新しい核兵器保有国が出現してしまうとアラブも核兵器が持ちたいと言い出しかねない。G7首脳はイスラエルの自衛権を擁護しイランの核兵器保有を厳しく断罪。

石破総理も同調せざるを得なかった。

石破総理が外務省と相談して最初のコメントを出したのかはよくわからないが、外務省が分析能力を失っているか石破総理が国際社会の空気を読めていないことがわかる。

さらにアメリカ合衆国は2週間の外交的猶予をくれてやるとイランに宣言。イランが油断した隙にグアムに囮となるB2爆撃機を出撃させたうえで「深夜の鉄槌(ミッドナイト・ハンマー)」を下した。完全な騙し討ちだった。

アメリカ合衆国は今回の「鉄槌」を次のように整理している。

  • 領土獲得や体制転覆を狙う軍事攻撃は許容されない
  • 危険を取り除くための先制攻撃は許容される

ただしこれを許してしまうと例えば次のようなことが可能になる。

中国とロシアが「在日米軍は中国とロシアに対する潜在的な脅威だ、これを取り除くために2週間の猶予をくれてやる」と一方的に先制しその数日後に在日米軍基地を攻撃する。

これはアメリカやイスラエルが定義するところの「先制的防衛」であり許容されることになってしまう。

日本国憲法は国連による集団安全保障体制とこれを補完する日米安保の集団的自衛権に守られている国ということになっている。ところが2014年のロシアのクリミア併合から続く一連の動きによってこの体制は事実上崩壊している。今回のアメリカによる先制攻撃はこの崩壊を再確認させるものとなった。

安倍政権下で延々と続いてきた不毛で空虚な限定的集団自衛権の議論はもはやなんの意味も持たない。

石破総理は現実的な問題にも対処しなければならない。

フィナンシャル・タイムズの報道によれば日本はGDP比3.5%の防衛予算を要求されていることになっている。またNATO首脳会談ではインド太平洋の問題については議論されず主に防衛費拡大について議論される。この席で日本も何らかの要求を突きつけられる可能性が高い。こうした状況下でトランプ大統領と関税交渉などできるはずもない。

さらに追い込まれたイランがホルムズ海峡を封鎖すると日本の電気代やガソリン価格などは狂乱的に値上がりすることが予想される。

国政レベルではすでに少数与党状態であり東京都議会選挙の結果も芳しくなかった。物価高騰が抑えられなかったとしても野党が責任を持って政権を担う兆候は見られない。

参議院選挙の結果によっても状況は変わってくるのだろうが、トボトボと階段を降り直前にぎゅっと表情を作っている現況を見ると「このまま政権を投げ出してしまうのではないか」と心配になってしまう。

石破総理が政権を投げ出したとしても渦中の栗を拾おうとする人は出てこないかもしれない。