タイトルを見て「あれ?今日は月曜日じゃないの」と感じた方も多いだろう。日曜日は現地時間である。日本でもアメリカでも一般の人達がテレビで政治ニュースを見る時間帯だ。
トランプ大統領が「日本の自動車輸出は不公平なので一方的に関税を通知する」と宣言した。FOXニュースの日曜日のインタビュー番組での出来事のようだ。日本の報道は断片的なので「一体何があったのか?」と感じた人も多く現れるのではないかと思う。詳しく状況を見てゆこう。
赤澤経済再生担当大臣は現在渡米中。ラトニック商務長官には会ってもらえたがベッセント財務長官には会えなかった。再度会おうとしたのだが電話で時間をもらえただけに終わっている。実はアメリカ合衆国では予算審議が大詰めを迎えていてそれどころではなかった。赤澤さんは知らなかったののかもしれないが外務省の駐米組はわかっていたはずだ。
赤澤大臣は「実りある議論ができた」と強がってみせた。
だが、その直後でトランプ大統領がテレビ(時事通信は番組名は伝えていない)で「日本の自動車輸出は不公平なので25%の関税を通告する」と仄めかした。その後出てきた読売新聞はFOXニュースの発言であると伝えている。
このニュースだけを見ると「赤澤さんは何をしでかしたのだろう?」と思ってしまう。実は何もしでかしていないし、そもそも何も始まっていなかったのかもしれない。
だが、ニュースだけを見ると「ああ、終わった」という感覚になる。
日本の自動車産業終了のお知らせであり石破政権の対米交渉終了のお知らせだ。
ちなみにEV補助金も打ち切りが決まりつつありイーロン・マスクCEOが怒り狂っている。自動車部品はカナダやメキシコの国境をなんども往復しているが、トランプ大統領は対カナダ関税交渉も打ち切っており近日中に詳細をまとめて発表するとしている。
一体何があったのか。アメリカでは包括予算案の審議が大詰めを迎えている。どうやら負債が更に増えるようだ。これを埋め合わせるために1180万人が無保険になる方向で話が進んでいるのだがこの程度の予算削減では到底間に合わない。
トランプ大統領は日曜日のFOXニュースのインタビュー番組に出演し関税についての持論を述べた。
Axiosの記事によるとアメリカに対する貿易は許可制。このためトランプ大統領は一方的に関税を通告し「アメリカとの貿易を許可すること」ができる。その例として日本を挙げ「日本の自動車産業は不公平だから25%にします」というと25%にできるのだ。
まるで江戸時代の関所のような考え方だが、トランプ大統領がそう言っているのだからアメリカはそうなんだろうと理解するしかない。いくら日本の貢献を訴えても無駄というもの。背景にあるのはアメリカ連邦政府の財源不足だからだ。トランプ大統領は予算権限を持たない。唯一「自由に」決められるのが関税だ勝手に理解している。
このように冷静に考えると赤澤再生担当大臣は包括予算案審議に巻き込まれた格好になっている。まともな議論など行えるはずはない忙しい状況にわざわざ出かけていった。Bloombergは「日本にはそれについて説明していて、彼ら(おそらく赤澤さんのことだろう)も理解している」との大統領の発言を伝えている。
ショーの中でトランプ大統領は「親愛なる日本、つまりはこうなりました。あなたは自動車に25%の関税を払うことになります。」と手紙を送ればよくわざわざ会って話す必要はないと言っている。Here is the storyは「かくかくしかじか」という意味でつまり細かい根拠は必要がないと言う表現だ。
“Dear Mr. Japan, here’s the story. You’re going to pay a 25% tariff on your cars,” he said.
U.S. will send tariffs letters in coming days, deals not needed, Trump says(Axios)
石破総理はNATO首脳会談で最後の話をつけようとしていたがトランプ大統領はもう石破総理に会うつもりはなかったのである。石破総理と赤澤担当大臣はアメリカ側の空気を読みきれなかった。それにしても……と疑問に思うのだが外務省は一体何をしていたのだろう。