9,000人と考え議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方

ベッセント財務長官とグリアUSTR代表が対中国関税の大幅引き下げを決定し、結果としてアメリカの株価が大幅に上昇したとABCニュースが伝えている。解放の日のトラウマは残るだろうが一度引き下げた関税を引き上げると大きな騒ぎになることは明らかなので米中貿易は一定の落ち着きを取り戻しそうである。

まずは決定事項から。当初の関税が高額だったために「この程度に下がってよかった」という心理学的効果が現れている。合衆国は期間限定をつけることでその後の交渉にはずみをつけたいようだが一度引き下げたものを再び引き上げるのはなかなか難しいのではないかと思う。と同時に10%のベースになる関税を撤回させることは難しそうだ。

それによれば、米国は中国に対する関税率を今月14日までに145%から30%に引き下げる。これには違法薬物フェンタニルの流入に絡む関税も含まれる。中国は米国産品に対する関税率を125%から10%に引き下げる。いずれも期間は90日間。

米中が90日間の関税率の大幅引き下げで合意-貿易協議で共同声明(Bloomberg)

次にわかったことを列記してゆく。

まず、日本のようにディールに飛びつくのは得策でないとわかった。中国は日本などの先行事例から学んでおり「決定権がある人とでないと交渉しない」という姿勢。これがベッセント財務長官らの権限拡大を支援することとなった。中国の外交に比べて石破政権のやり方が稚拙だと言う結論が得られる。赤沢大臣は「特にトランプ大統領の発言が心にしみる」と地元で自慢しており状況が客観的に分析できていないとわかる。その程度の人物なのだろう。

次にアメリカ経済がいかに中国からの製品に依存しているかがわかった。ベッセント財務長官は「一部分野を除きデカップリングは望んでいない」と宣言している。仮に中国からの製品の締め出しに成功したとしても、アメリカ人が細々とした日用品の製造に戻ってくることはないのではないかと感じる。

さらにトランプ大統領、バンス副大統領、ナバロ顧問など「問題を創り出す側」の人たちとベッセント財務長官やルビオ国務長官らの「問題を解決する側」が鮮明に分かれていることもわかった。自国に有利な状況を作り出すためには「問題を解決する側」をエンパワーメントすることが重要だ。

最後にトランプ大統領が専制主義国家に強いあこがれを持っていることもわかった。中国やロシアのような専制主義の国はトランプ政権の要求に対して独裁できるため意思決定が早い。今回の合意を受けてトランプ大統領はEUに対する強い不満を表明しているとAxiosが伝えている。

なお「解放の日」のあと日本の商社の株が大幅に下がっていたが、このところ急速に持ち直している。あのタイミングで商社株を買った人には「おめでとうございました」と言いたい。ドル円はドル高円安の方向に進んだ。

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