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実は騙し討だった トランプ大統領の一連の行動分析が進む


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アメリカ人は成果を上げるためなら何をやってもいいと考えることがあり、これをむしろ戦略的賢さだと考えるところがある。特にトランプ大統領はその傾向が強い。

次第に今回の軍事介入でトランプ大統領が「騙し討ち」を画策してきたことがわかってきた。

AxiosとCNNがそれぞれ分析している。ヘッドフェイクとはある方向に頭を動かして敵に錯覚を与えることを意味するそうだ。

イランとの交渉が決裂しエルドアン大統領の仲介の最終承認が降りなかった時点ですでにイランに対する攻撃を決めていた。これをうまく運ぶためにわざと「二週間の余裕がある」と宣伝させ相手が油断した隙をみて攻撃を仕掛けたというわけだ。

いわば騙し討ちだが、アメリカ第一主義者は「アメリカ合衆国の国益を考えた賢い選択」と捉えるかもしれない。

構造はかなり複雑だ。

アメリカ合衆国は7月4日に独立記念日を迎える。このときに合わせて予算を成立させたいが共和党の中にも抵抗勢力は多い。このためアメリカの軍事作戦はすべて成功し「イランの脅威は完全に取り除かれた!」と宣伝したい。

ところが軍事的には「今回の作戦はわざと限定的に抑えていた」とするメッセージングが進行している。2つのねらいがありそうだ。

まず、アメリカ第一主義の人々に対して「アメリカ合衆国は戦争をするつもりはなく行動は抑制的だった」と主張したい。

次にアメリカ合衆国は軍事的に大成功を収めたと言う印象を与えつつも、将来それが嘘だったとわかるときに備えている。このため「初期の見立てでは大成功だが評価には時間がかかる」という言い回しが用いられている。BBCもトランプ大統領が喧伝するほどのダメージはなく濃縮ウランも行方不明だと分析している。イランの国土面積は日本の4.4倍だ。

おそらく今回の騙し討は「アメリカ合衆国(少なくともトランプ政権)は信頼できる交渉者ではない」という印象を世界各国に与えるだろう。アメリカ合衆国はずるい国であり信頼ができないというわけだ。

NATO首脳会談に石破総理は出席しない。韓国の大統領も出席を見合わせることになっている。各国とも面倒な要求を一方的に突きつけかねないアメリカ合衆国から微妙に距離を置き始めていると言える。

アメリカ合衆国は様々な意味で行き詰まりつつあり、その中で「うまく行っている」と主張するためには、もはやフェイクに頼るしかない。つまり実はトランプ大統領の性格によるものではなくアメリカの弱さの現れと見るべきなのかもしれない。