G7からトランプ大統領が逃亡した。その後も不規則な発言を続けており全く意味不明と言った状況だ。
アメリカのメディアを中心に情報を集めると実はアメリカ合衆国がイランへの軍事行動に踏み切る一歩手前だったということがわかる。
タイトルをわかりやすくするために「アメリカの介入=第三次世界大戦」としたがあまりにも現実離れしているため「釣りのタイトル」と思われるかもしれない。報道を詳しく見てゆこう。
ただし危機が過ぎ去ったわけではなさそうだ。先程NSCが開かれイランに対する軍事的オプションについて話し合われた。
G7サミットでは共同声明が採択された。イスラエルを支持しイランを非難する内容だった。トランプ大統領にとって不利な条項はなくしたがって逃亡理由にならない。トランプ大統領も前言を撤回して署名しているそうだ。
だがこのときにトランプ大統領は「全員テヘランから退避せよ」と意味不明の絶叫をしている。このときはイスラエルからまた何か情報が入っているのだと(個人的には)思っていたがイスラエルの攻撃はエスカレートはしているものの決定的な何かが起きたわけではなかった。
このときにトランプ大統領はシチュエーションルームに関連閣僚を集めていた。これもイスラエルの攻撃を注視するわけではなかったようだ。実はイランへの直接攻撃を考えていたようだ。
マクロン大統領は「トランプ大統領は停戦を試みているのだろう」と発言。これを受けたトランプ大統領が「もっと大きなことだ!」とSNSで絶叫。そして、そのもっと大きなことを「真の解決」と呼んでいる。
この時点でタカ派と呼ばれる人たちが「イスラエルが圧倒的にイランを追い詰めているのだからアメリカが後押しをすれば成果だけが手に入る」と売り込んでいた可能性がある。ワシントンDCでは「アメリカ・ファースト主義者」に囲まれているトランプ大統領だが国際会議にまでは同行しない。外交を司る国務省はタカ派好戦主義者であるルビオ国務長官の支配領域だ。軍事に疎いトランプ大統領はこの言葉を信じてしまったのかもしれない。
とはいえ仮にインテリジェンスがしっかりしていればトランプ大統領は状況のダブルチェックができただろう。
トゥルーシー・ギャバード長官は「イランは核兵器の開発などやっていない」と触れ回っている。広島・長崎に触れて核兵器保有を批判する意図不明の発言を行っていた。
だが、トランプ大統領はギャバード氏の発言は信じないと言っている。つまりアメリカ合衆国ではまともなインテリジェンス活動が行われておらずトランプ大統領もアメリカのインテリジェンスを信頼していない。情報担当の高官は「核兵器を持っていないという長官の認識は間違っていない」と弁明したそうだ。理由は「まだ持っていないから」だという。
ではなぜトランプ大統領は攻撃に踏み切らなかったのか。実はポッドキャストなどでタッカー・カールソン氏とスティーブ・バノン氏が反参戦キャンペーンをやっていた。トランプ大統領は一度はカールソン氏を批判するのだが(つまりこのときは好戦派に「洗脳」されていた)バンス副大統領が主導して軌道修正を試みたようである。後に「大統領の態度は一貫している」と軌道修正する声明を出している。外国に連れ出されたトランプ大統領が何を吹き込まれるかわかったものではないと気が気ではなかったのではあるまいか。
そもそもアメリカが参戦したからといってイランがすぐ屈服する保障はないという認識は必ずしも間違っていない。
ドイチェ・ヴェレによるとプーチン大統領はイランを軍事支援するつもりまではないようだが(つまりこれは「第三次世界大戦という当エントリーのタイトルがいささか行き過ぎているものであることを示唆している」)、イランの後ろにつきアメリカ・イスラエル・ヨーロッパとの和平交渉に介入する意思を示している。ウクライナに注目が集まるのを避け、国際的なロシアのプレゼンスを回復するきっかけになる。トランプ大統領はG8であれば(つまりプーチン大統領がいれば)会合は有意義なものになったであろうとの認識を示している。
だが、ヨーロッパはアメリカの手引でロシアが国際社会に復帰することを恐れている。自分たちにとって大きな脅威になるからだ。
状況をまとめると次のようになる。
G7サミットの途上でタカ派が「今イスラエルの援助をすればすぐに結果が出る」と吹き込み、トランプ大統領も一度は乗り気になった。タカ派は一度状況を作ってしまえば後は自分たちが好きなようにできると考えていた。いつものホワイトハウスを離れ外国首脳と「缶詰」になっていた時間は好戦主義者のタカ派にとってはチャンスだったのかもしれない。
ヨーロッパから軍事介入に反対するプレシャーが高まることを恐れて「サインしない」と言ってみたがG7はそこまでの強要はしなかった。
功を焦るトランプ大統領は今そこにある好機を捉えようとワシントンDCに戻るのだが、そこにはアメリカ第一主義者たちがいて「今そんなことをすれば我が陣営はめちゃくちゃになる」と押し留めた。
結果的にアメリカ合衆国の介入は避けられた。
とはいえ何をどうしていいかはわからないので、今はハメネイ師を殺すことは考えていないとか、和平交渉に意欲があるなどと不規則な発言を繰り返しているということになる。おそらくこれは彼の混乱を示唆しているだけであって発言自体には大した意味はないのではないだろうか。