8,900人と考え議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方

読者動向調査へのご参加ありがとうございました。結果はこちらです。投票もしばらくは受け付けています。


坂道を転がり落ちるように 玉木雄一郎代表が「助成には難しい」発言で炎上


イイネと思ったら、Xでこの投稿をシェアしてください

玉木雄一郎国民民主党代表がまたまた舌禍事件を起こした。今回は国民民主党の政策は女性には難しいという女性蔑視と取られかねない発言だ。このところ玉木雄一郎氏は坂道を転がり落ちるように転落しつつあり「玉木個人商店」の国民民主党の支持率も低迷している。

失敗の原因はおそらく意外と単純なものだ。誰もが参加できるような簡単なしくみを作らなかった。おそらく失敗の原因はこれだけだろう。

今回の問題についてすべてをエビデンスで固めるのは難しい。そこでQuoraの政治フォーラムでの経験を踏まえて間を埋めることにした。先日、フォロワーが8888人に到達したばかり。なぜか最近急激にフォロワー数が伸びていて、執筆現在のフォロワーは8,972人である。コメントに関わる人が増えるとサーキュレーションが増えるというQuora独特の仕掛けが影響しているようだ。投稿は出来ないがコメントはできるという人が多い。ここで「参加している感」が得られると継続的なコミットにつながる。

SNS分析をする前に、玉木雄一郎氏の発言の何が問題になったのかを分析してゆこう。

玉木雄一郎氏は国会で備蓄米に対して「1年たったら動物の餌に出すようなもの」と発言し国民を家畜呼ばわりするとは何事か!と反発されている。今回の発言は英語で行われ、その趣旨は「国民民主党の政策は女性にはわかりにくい」とするものだった。

この2つの発言には共通点がある。上から目線なのだ。

玉木雄一郎氏はもともと大蔵官僚でハーバード大学に留学経験がある。このため税の仕組みなどについて緻密で論理的な発言をすることが多い。同じ系列に古川元久氏がいる。こちらも大蔵官僚でコロンビア大学院に留学している。

しかし国民は「結果的に手取り額」が増えるか減るかやいつものお買い物で「いくら高くなるのか安くなるのか」の結果の絶対額にこだわる。その意味では男性も女性も「玉木氏や古川氏の発言はおそらく理解していない」ものと考えられる。

その意味で玉木氏の発言の趣旨には大きな間違いはない。さらにおそらくどんなに説明を尽くしても一般有権者が「仕組み」に付いて理解することはないだろう。

では男性と女性でどこに大きく差が開いたのか。

玉木雄一郎氏のYouTubeチャンネルは男性勤労世代と交流する中で彼らのニーズを掴み取ってゆく。彼らが気にしているのは手取りだけではない。

一生懸命に社会で働いているのに自分たちに光が当たらず他の人達ばかりが優遇されているという不満を持っている。「他人に優しくすること」で「相対的に自分たちが貶められている」と感じてしまうのだ。関係性に注目する日本人ならではの心情と言えるだろう。

整理すると次のようになる。

  • コトに関しては絶対的で荒っぽい評価をする
  • 人間関係については相対的で緻密な評価をする

ということだ。さらに大枠がつかめなくなり細かい「事実」をドリルダウンする傾向もある。平原や砂漠の民は星の位置などを見ながら自分の進む方向を見極めるが、森の民はそもそも動かない。そのあたりにある木などから常に自分たちの位置を相対的に把握している。

玉木雄一郎氏の男性支持者も「理解したから支持したわけではない」のではないか。おそらく理解できないからこそ「この人は自分たちの味方なのかどうか」で政治家の発言を見極めようとしている。つまり仕組みではなく関係性に着目している。

おそらく女性たちの中にも「相対的に自分たちは報われていない」と考える人はいるのだろうが男性からいくら説得されても自分たちの事とは思えないのではないかと思う。

具体的に考えてみよう。

子育てで社会から切り離されたと考えている女性がいたとする。彼女たちはキラキラと外で活躍する華やかな女性を応援することはない。アメリカではハリス大統領候補が嫌われ日本では蓮舫都知事候補が嫌われた。こうした人達を見ると普通の女性は惨めな思いをしてイライラすると考えるかもしれない。

女性獲得に成功したのが小池百合子都知事代表だった。そのやり方は極めて独特。支持者たちの困りごとについて語りかけるのと同時に「緑のもの(誰でも1つや2つは持っているだろう)を持って応援しよう」として連帯を可視化して見せている。過程や地域社会で漠然とした孤立を感じている女性たちに簡単な社会参加の方法を作った。

こうした手法は市民運動でもよく用いられる。選挙のときに手弁当で集まり「オシゴト」を作って連帯を確認する。ところがこの市民運動は専業主婦がいることを前提にしている。現在の主婦は市民運動に参加できない。ワンオペで忙しいからである。市民運動は高齢化しつつあり先が見えない。

参加を呼びかけるだけではダメで「誰でも参加できるような仕組み」を作らなければならないということになる。

この基本構図にさえ気がつけば玉木雄一郎氏が凋落した理由がよく分かる。

玉木雄一郎氏はYouTubeで現役世代の男性を誘引することには成功した。しかし、彼らが継続的に応援できるような「誰でも参加できるような仕組み」を作らなかった。

玉木雄一郎氏はもともと「大平家とのつながり」を喧伝するブランド志向を持っている。また自分はハーバード大学に留学し側近の1人もコロンビア大学だ。

今回の件で極めて重要なのは「失言」ではなく「今回の一件で玉木氏を応援する人が出てこなかった」という点にある。オレタチのユウイチロウではないからだ。

むしろ彼らは検事出身の山尾志桜里氏に攻撃の矛先を向ける。女性だから嫌われたと思われがちだが、おそらくは玉木雄一郎氏が持っている鼻持ちならないブランド志向を嫌っている。

今回の「所詮俺達の主張はキミタチには難しいよね」発言もその流れで反発されているのではないか。つまり女性蔑視だから炎上しているわけではないのだ。

では、玉木雄一郎氏はシンパを増やしてゆくべきだったのだろうか。

必ずしもそうではない。これで失敗しつつあるのが石丸伸二氏だ。石丸伸二氏には熱心な信者が多い。「俺達のイシマル」がある程度認知されている。石丸氏を攻撃するとシンパの攻撃を受けることもあるようだ。ところが、この熱心すぎる支援者たちが新人候補の一挙手一投足に注文をつけたことでうんざりした候補が政党を離脱した。ネットでよく見かける「古参の新人イビリ」である。

SNSは天体に似ている。結束力という引力が強すぎると重力故に天体が潰れてブラックホール化してしまう。参議院議員選挙に出馬した蓮舫氏を支援する市民団体も結束力が強すぎればおそらく「キラキラ系意識高い系ブラックホール」を形成することになるだろう。

一方の岸田文雄総理大臣は「元総理系YouTuber」として銀の盾獲得に成功している。キラーコンテンツは「今日のふみお」だ。あえて国民のおもちゃになることで18.5万人のフォロワーを獲得しているのだがきちんとした政策提言も行っている。

国民民主党の榛葉幹事長もヤギのケビンファミリーというキラーコンテンツを持っているのだが、最近更新されていないようだ。おそらく国民民主党が今一番力を入れるべきはケビンファミリーコンテンツの充実ではないか。