このところトランプ大統領の日本に対する発言が波紋を広げている。
問題を解決するためには原爆のような兵器は肯定されると発言していたが、今度は日本は甘やかされていると発言した。オリジナルの表現はhas been spoiledで腐ったみかんなどにも使われる表現。これまで「間違った扱いでダメになった」というニュアンスがある。
日本の戦略は相手の要求をかわし「でもね、だってね」とダラダラと自説を説明し続けるというもの。これを「丁寧な説明」と呼び国内でも多くの人をイラつかせているが辛抱のないトランプ大統領には特に逆効果だったようだ。
トランプ大統領がモデルにしているのはベトナムだ。ベースの関税が20%でアメリカが指定すれば40%にできる。しかしベトナムはアメリカから関税を取ってはいけない。アメリカ合衆国は特別に選ばれた国なのでこれくらいの不公平があって初めて「フェア」になる。
日本が守ろうとしている「国益」とはコメのようだ。自民党にとっては文字通りの票田。これを石破総理は国益と表現しているが実際には自民党の利益を考えてのものだろう。
日本にも保守を中心にトランプ信者が多い。トランプ大統領は日本にコメを買わせようと戦略的に動いているのだろうと主張する人がいる。
しかしコメといえばカリフォルニア。カリフォルニアといえば民主党。おそらくトランプ大統領はどうでもいいと考えているはずである。
論より証拠。
カリフォルニアでは収穫時期の野菜や果物が腐り始めている。収穫に必要な非文書化移民(不法移民と表現する人もいる)が確保できないためだ。
REUTERSはアメリカの物価が上がると合理的に説明しようとしているが日本人の感覚から見れば「もったいない・バチが当たる」という気になる。AxiosもREUTERSの報道を引用しアメリカの経済に打撃が出そうになっていると言っている。
それでもトランプ大統領にはそれなりの作戦があり関税を武器にしているのではないかと考える人がいるかも知れない。
パウエル議長がポルトガルで他の中央銀行総裁たちと一緒に「トランプ関税がなければ利下げをしていた」と表明している。
借金に頼って消費する傾向があるアメリカ人にとって金利高止まりの影響は非常に大きい。パウエル議長としても利下げの必要性は十分わかっている。Axiosによるとアメリカ経済は不法移民問題で逆回転しつつある。そこでトランプ大統領に対して「関税政策をクリアにしてもらえなければ要求には応じられませんよ」とのメッセージを送ったものと考えることもできるだろう。
しかしトランプ大統領はこの対話要求を理解しなかった。自分がアポイントした人は自分の言う事を聞くのが当たり前で自分はSNSで要求を突きつければいいと考えている。
ところがパウエル議長はなかなか自分の言う事を聞いてくれない。
そこで関税ボードに手書きの手紙を書きつけてパウエル議長に送りつけたそうである。衝撃的な手紙はぜひCNNで見ていただきたい。トランプ大統領はおそらく本気で「伝え方の問題なのだ」と考えている。
日本の総理大臣の名前を覚えていないトランプ大統領はDear Mr. Japanと言うメールを送ると主張しているが、パウエル議長のファーストネームはきちんと記憶していたようだ。
先日のエントリーで「日本人にとって保守とは単なるファッション」と書いた。今回の一連のトランプ大統領の日本を軽視する発言に反発している保守の人たちは多くない。あくまでも自分を大きく見せるための道具であって、トランプ大統領はアメリカといった自分たちより力が強いものには矛先が向かわないのだろう。