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ダライ・ラマはなぜ中国共産党をイラつかせるのか


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ダライ・ラマについてQuoraで書いたところ中国の人と思われる人たちから「清朝」の歴史的経緯を持ち出した反論がついた。これは面白い記事が書けそうだなと思いChatGPTで調べてみた。

まず中国共産党は何を恐れているのか。

もともと中国共産党は内戦に勝利した勢力に過ぎなかった。もともとは満人支配からの解放者だったわけだが統一後には清の後継者を名乗ることが多くなった。

日本のネット右翼が明治維新で作られた日本人観を2600年の伝統であると主張することが多いように清の伝統=中国の伝統だと思い込んでいるフシがある。これは在中国の人だけの特徴ではないようだ。

中国という一体性を主張しようとすると自分たちが打倒したものを引き合いに出さなければならないというのはきわめて興味深い。

ところが西側は中国に介入するための穴を探している。

例えばアメリカ合衆国は台湾に対する態度を曖昧にすることで中国との議論を避け介入のオプションを保持し続けている。これを曖昧戦略という。またBBCはウイグルが漢民族に同化させられていると言うキャンペーンをやっていた。

つまり西側(と言っても主にアングロ・サクソンだが)は中国共産党が清の後継者であるかという議論をしないことで介入の糸口を残していることになる。中国が軍事的にアメリカのライバルになりつつありカードの重要性は増している。

ではダライ・ラマはどうか。実はダライ・ラマは世俗権威をパトロン(仏教風に言うと施主という)としてチベットの盟主に上り詰めたという歴史がある。その歴史はモンゴルに遡るそうだ。

モンゴルは帝国化するに従って精神的支柱と官僚制度を必要とするようになった。フビライ・ハーンが頼ったのがサキャ派のパクパという高僧だった。この高僧が作ったのがパスパ文字だ。

チベット仏教は一枚岩ではなく、カギュ・サキャ・ニンマ・ゲルクと言う諸派に別れていた。ゲルクは新興派閥ではあるが「教科書」を整備し各地に僧侶を派遣するなどカリキュラムの整備に優れていた。

これに目をつけたのが北元のアルタン・ハンだった。サキャ派ではなく近代化したゲルク派の高僧ソナム(スーナム)・ギャツオに目をつけて、彼をダライ・ラマ3世とし、そのパトロンになった。ダライ・ラマ3世は実質的な初代だが高僧の生まれ変わりの活仏ということになっていた。

ダライ・ラマはゲルク派の首座ではない。実は今でも首座とはなっていないそうだ。

グシ・ハーンの時代になるとダライ・ラマ5世はチベットを統一。1642年にダライ・ラマ政権(ガンデンポタン)が作られる。つまり有力パトロンを得たことでチベットで政治的に勝利したことになる。

ところが雍正帝・乾隆帝の時代になると次第に力関係が変わる。チベットとネパールの間に争い(清・ネパール戦争)が起きると、金のツボによるくじ引き(金瓶掣籤)」制度が導入された。ネパールが清に服属したことでチベットが重要な通商通路となったからだ。

金のツボによるくじ引き(金瓶掣籤)」制度は清が準備した候補者の中から抽選でダライ・ラマが選ばれるという制度だった。事実上清が後継者をコントロールできるようになったのだ。

しかし、清が国内を統治できなくなるとダライ・ラマ政庁「ガンデンポタン」がイギリスと条約(ラサ条約)を結んでしまう。イギリスはこの条約を曖昧にしたままで清との関係も継続した。

これまでの歴史的経緯を見ると漢人系の王朝はチベットには無関心だった。

一方で精神的支柱を必要としたモンゴルはチベット仏教を重要視していた。また清も満人の代表であり、モンゴルのハーン号を持ち、漢人の革命の伝統を踏襲し、チベット仏教のパトロン(仏教風に言えば施主)であるという複雑な構造で現在共産党が「中国」とよんでいる地域を統治していた。結果的にこれが現在の「中国」像に作り変えられてゆく。人工的な脆さがあるからこそ、これを揺さぶられると苛立つ人が多いのかもしれない。

現在の共産党政権はこの清の版図を「中華民族」という新しい概念で統治しようとしている。そのために便宜的に清の後継政権でありこれは世界的に認められていることだと主張することがある。

しかし実際には力づくで現在中国と呼ばれている領域を支配しているに過ぎないわけで、これは誰かに力づくで奪取されかねないと言う恐怖心がある。

実際にチベット政庁は清に内緒で勝手にイギリスと結びついた前科があり、インドを施主にしてチベットの領有権を主張しかねないという気持ちもあるのかもしれない。

あくまでもChatGPT情報ではあるが、ダライ・ラマ14世は「久々に夢で選ばれた=金のツボによるくじ引き(金瓶掣籤)から脱却した」チベット人独立の象徴とみなされているそうだ。中華民族という「ありもしない伝統」を必死で築いてきたと言う気持ちがあり、実際に香港や上海などの租借地を奪われてきたトラウマもあり、アメリカの台湾に対する曖昧さや習近平国家主席に服属しないダライ・ラマの存在は中国共産党をイラつかせるのだろう。