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エルドアン大統領がイランとアメリカの間を仲介しようとしたが失敗


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AxiosがScoop: Trump’s backchannel to Iran failed after supreme leader went darkという記事を出している。

G7サミットの最中にエルドアン大統領がイランとアメリカ合衆国の間を仲介しようとしたがハメネイ師が行方不明となり最終承認が得られなかったという内容。トランプ大統領は外交的に行き詰まっているが軍事行動の最終承認も出せずにいる。

この一連の流れはトランプ大統領の混乱する心情を知るうえで非常に貴重な情報だろう。もはや戦略的思考ができなくなっており交渉可能な相手ではないことがわかる。

Axiosによれば、エルドアン大統領がG7サミットの最中に「イランとの交渉を取り持つ」と持ちかけた。ところがイスラエルの攻撃が激化しており体制転覆の恐れもあることからハメネイ師が消息不明になってしまい最終承認が得られなかったという。

いずれにせよこのあたりからトランプ大統領のSNS発信はいつもに増して混乱したものになっている。最新情報ではイスラエルが勝っているのに攻撃を止めろとは言えないと主張していることになっている。またヨーロッパとイランの間の交渉はうまくいくはずはないとも主張する。トランプ大統領によれば、イランはアメリカ合衆国と話したがっているからだ。

イランのアラグチ外相はヨーロッパの首脳たちと会合を開いた。

CNNによれば最初は怒っていたそうだが次第に沈静化し対話の継続を求めたという。しかしながら、ネタニヤフ首相に攻撃をやめさせるまでアメリカ合衆国とは交渉はしないとも明言した。またこの戦争はイランとイスラエルの戦争であってアメリカ合衆国の出る幕はないとも牽制している。

理性的に考えるならばイランには核兵器放棄しか道は残されていない。ただ、イスラエルとアメリカの攻撃はハメネイ師から徐々に理性を奪っている。

ハメネイ師が信頼を寄せる革命防衛隊の幹部たちが次々と殺されており、ネタニヤフ首相はイランの民衆に蜂起を呼びかけている。ハメネイ師の言動は日に日に追い詰められた過激なものになっている。

ウクライナがロシアに侵略されたのは核兵器を放棄していたからである。一方で北朝鮮は核兵器開発に成功し体制が維持されている。体制維持を求めるイランも核兵器を開発すべきだということになる。

CNNは改めてイスラエルが核兵器を保有していると伝えている。実はフランスの協力を得てディモナで核開発を行っており南極に近い地点で実験も済ませている(ヴェラ事件)と考えられている。外形的事実としてはイスラエルは核不拡散条約に加盟しておらず、なおかつIAEAの査察も拒み続けている。

イスラエルは黙認されるのにイランはなぜダメなのかということになってしまうのだ。

トランプ大統領はホワイトハウスでかなり苛立ちをつのらせていて、ノーベル平和賞について意味不明な情報を発信している。何度もNobel Peace Priceが連呼されている文面を見ればトランプ大統領の心情を察することは難しくない。

トランプ大統領は平和の使者であると見られたい。しかし彼の政権にはサポートしてくれる有能な実務家はいない。このためすでに手打ちが終わっているコンゴ民主共和国とルワンダの和平について改めてなんらかのセレモニーを行うと宣言した。

イランは理性的な判断ができないほど追い詰められているがトランプ大統領もノーベル平和賞が取れないことに苛立ちを募らせている。この他にトランプ大統領はウクライナ問題、移民問題、予算問題などを抱えており、支持者の中でもMAGA、タカ派、親イスラエル派などまとまりのない意見の相違にさらされる。

心理的に追い詰められたトランプ大統領がNATOの首脳会談でどんな振る舞いを見せるのかに注目が集まる。インド太平洋戦略については語られず防衛費増額が主に話し合われる予定。関税交渉妥結で功を焦る石破総理も何らかのコミットを迫られることになるかもしれないが、いまのところ国益を損なうような判断はしないと言っている。