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イランの核施設は破壊されていないはリークだった トランプ大統領は国内に宣戦布告


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イランの核兵器開発の可能性が高まった。きっかけはトランプ大統領の政治的宣伝だ。軍の初期レポートがCNNなどで報道されたが、これは「リーク」によるものだった。トランプ大統領とホワイトハウスはリークした人に対して「戦線を布告」している。

これは単なる政治的ドタバタなのか。

実はイランの濃縮ウランが900ポンド近く行方不明になっているそうだ。加えて、トランプ大統領の宣戦布告により「イランが核兵器開発能力を持っている」とは言いにくい状況が生まれた。イランは大手向きはトランプ大統領に従って国内市場を開放しその裏で核兵器開発を行うという可能性が出てきた。

トランプ大統領は「今回の作戦でイランは核開発能力を完全に喪失した」と宣伝している。ところが軍の初期リポートが報道され「数ヶ月後退しただけ」の可能性が出てきた。

トランプ大統領はCNNなどの報道に厳しく反発している。

例によって例のごとくだが、Axiosがその裏側を細かく描写している。トランプ大統領は今回の件に激怒し議会の情報アクセス権を遮断しようとしている。民主党側の議員たちが自分を貶めるために情報を利用しようとしていると考えているのだろう。

ホワイトハウス高官はこのなかで「We are declaring a war on leakers」と言っているそうだ。リークをしたものに対して宣戦布告したという意味になる。ついに本当のそして文字通りの政治内戦が勃発しそうな勢いだ。

ではこの「宣戦布告」はどのような意味を持つのか。

イランは今でも核技術を諦めていない。これは表向きは平和利用ということになっている。しかし、西側からの圧力が高まる中で次第に核兵器にしか使えない濃度にまでエスカレートしてきた。

今回の混乱で900ポンド近い濃縮ウランが行方不明になっている。BBCは今後イランが核兵器開発に傾斜するかアメリカとの交渉に応じるかについてどちらとも言えないと分析している。900ポンドの濃縮ウランはハメネイ体制にとっては強力な武器(カード)になるだろう。

やすやすと手放すはずはない。

ABCニュースはイランの核施設が破壊された「事実」は今度のトランプ大統領のイランに対する優先順位に影響を与えるかもしれないと言っている。トランプ大統領は今回の和平に気を良くしている。イランの体制にとっても市場を開放しアメリカの投資を呼び込むことで国民生活を豊かにするきっかけが得られる。日本が第二次世界大戦で負け結果的に戦後の繁栄を手に入れたのと同じ図式になる。

トランプ大統領がイランを屈服させたと信じれば信じるほどアメリカ国内やイスラエルで「実はイランは核兵器開発能力を持っているのではないか」と主張するのは難しくなるだろう。ネタニヤフ首相も今回の勝利を大々的に宣伝したいと考えており「イランの危険性は除去された可能性が高い」とするレポートを出している。

イランも「核施設はひどく損傷した」と認める国内報道を行っているという。素直に負けを認めたと言う人もいるだろうしアメリカやイスラエルの追加攻撃の口実を与えないためにわざと痛がっている可能性もある。

ハメネイ政権にはロシアに裏切られたと言う気持ちもあるようだ。イランはロシアの援助を期待してロシアを支援していた。1月には戦略条約が結ばれている。20年の協定だったが「相互防衛義務には触れない」内容だった。今回アラグチ外相がプーチン大統領と面会しているのだが、ロシアからは援助はしてもらえなかった。イランはロシアにはしごを外された形になっており「もうどこにも頼れない」追い詰められた状態にある。

イランは表向きはアメリカに対する市場開放を行いつつ裏で核兵器開発を進めるというオプションを手に入れつつある。

トランプ大統領はイランを屈服させる一方で核兵器の効能を喧伝するような認識も示している。世界に向かって「核兵器があればゲームチェンジができる」と盛んに売り込んでいることになる。

ではハメネイ体制は危険だから「除去」したほうがいいのか。

イランの国土面積は日本の4.4倍になる。地勢は極めて山がちであり地上軍展開が極めて厳しいという地理的制約がある。

アメリカ合衆国が統一した交渉相手を持つことは極めて重要だ。仮にハメネイ体制が崩壊したとしても「次の政権」がイランの国土をすべて掌握できるかどうかは確実とは言えない。各地に反政府勢力が作られれ、その勢力が濃縮ウランを持つと言う可能性も否定はできないだろう。

アメリカ合衆国もこれに気が付きつつあるようで「イランの体制変更は目指さない」と路線変更を進めている。

戦後日本は素直にアメリカの支配を受け入れたうえで「過去を水に流して」体制転換をした。しかし、世界的に見ればこれほどあっさり体制変更が行われることは稀だろう。イランの体制はイスラム教という宗教も絡んでいる。

イランがすべてを水に流しアメリカ合衆国を受け入れるのかあるいは「臥薪嘗胆」で密かに核兵器開発を進めるのかはまだまだ未知数である。

そんななかでトランプ大統領の一連の軽率な発言や国内に向けた宣戦布告は将来に大きな禍根を残すことになるのかもしれない。