最近、ニュースでは盛んにイスラエルとイランの問題が取り上げられている。MAGAは内部分裂状態にあり意見がまとまらない。このため移民問題が停滞・沈静化しているように見えるのだが実際には泥沼化しており解決の糸口は見えない。
日本では不法移民と言われアメリカではアン・ドキュメンテッド(文書化されていない移民)と言われる。しかしこれは住民登録・市民権が曖昧な労働者を記述するための党派的な表現にすぎない。福利厚生の必要がなく面倒な労働運動も起こさない便利な労働者にアメリカ合衆国は長く依存し続けてきた。
トランプ政権もまた便利な労働者の処理に行き詰まりつつある。そもそもアメリカの資本主義・民主主義が破綻しかけているのだ。
ニューヨークで民主党系の市長候補がICEに拘束された。同僚たちは政治家やアメリカ人に対する政権の攻撃であると反発を強めている。
だがこの問題はちょっと変だ。
一時拘束されたブラッド・ランダー氏は民主党系の市長候補だ。しかし現在の筆頭候補は元州知事のクオモ氏。ランダー氏はなんとかして知名度を上げる必要があった。つまり彼は見出しを飾る必要があったのである。
ノーム国土安全保障長官と渡りをつけようとして拘束されたパディーヤ上院議員も議会で「感情的な」演説を行い、ICEの暴力は移民に向かっているだけでなく、アメリカ市民にも向かっているというメッセージを国民に伝えようとしている。
このように反移民キャンペーンは徐々に政治的な闘争に姿を変えつつある。トランプ政権がいかに危険な政権であるかを証明する根拠になるからである。
ではこれは単なる政争なのだろうか。
先日カリフォルニア州ヴェンチュラ郡オックスナードにあるいちご畑でICEが農夫を追いかけ回す映像が出回った。
ICEに拘束されることを恐れた農夫たちは農作業に出てこなくなり地域の農業に大きな影響が出ている。
移民に大きく依存しているのは農業・ホテル・レストラン・食肉加工業などだ。皮肉なことに共和党州のほうがこうした産業に依存する傾向が強い。 上院で予算案の審議が難航しているため、身内からの反発を恐れたトランプ政権は農業、ホテル、レストラン、食肉加工業での法執行を制限するようにと命令を変更した。ところがこの政策変更はアメリカ第一主義者の反発を呼んだ。この妥協策としてトランプ大統領は「民主党諸州での取締を強化しろ」と更に命令を変えている。
彼らをどう呼ぶのかは別にしてアメリカ人の日々の暮らしはこうした便利な労働者に支えられている。声高に権利を主張することなく低賃金でアメリカの産業を支えてくれる人たちである。こうした人々がいなくなって最も困るのはトランプ政権支持していた人々である。
ICEは当初想定されたより多くの予算を消費しておりこのままでは資金切れになることが予想されている。資金切れの場合他のプロジェクトを中止してICEに予算を充てるのではないかなどとも噂されており、場当たり的な政策は破綻寸前になっている。
イランに対する関与を見ればトランプ政権の場当たりぶりは明らかだが、実は移民問題でも混乱を呼んでいることがわかる。
成功した資本主義と成熟した民主主義は域外からの資源搾取や労働力搾取から成り立っている。グローバル化はこうした構造を壊しつつある。すると域内で「社会保障や待遇についてうるさく言わない便利な労働者」が必要になる。ところがこうした労働者の一部は生活困窮から治安問題を引き起こす。この問題を解決しようとして彼らを追放すると、結果的にやすい労働力がいなくなるという問題に直面せざるを得なくなり「詰んだ」状況が生まれてしまうのだ。