9,000人と考え議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方

Amazonのような透明化されたコメ小売市場を期待したのだがやはり三木谷社長はそれほどの戦略家ではなかったようである。自分たちで精米設備を整えるわけではなく「精米機もつけてコメを売っては」と言い出した。これでは落胆(らくたん)市場だ。

当ブログでは、今回のコメ騒動の原因は市場の欠陥であると考えている。日本全体が成長できない中で生産性が低い流通関係者が参入障壁の低い分野に参入している。生活必需品であるコメは価格が上がっても買わざるを得ないという価格弾力性の低い商品だったため逼迫感から価格が上昇してもそれが容易に下がることはなく今もその状態が続いている。

一度上がったコメの価格がなかなか下がらないのは「市場全体にどれくらいコメがあるのかがよくわからない」からだ。つまりこれが透明化されればコメの価格は落ち着くところに落ち着くはずであるという期待がある。

そのためには流通がIT化・省力化を進める必要がある。仮に日本の市場がそれをやらなければ結果的に効率化が進んだ外資に食われることになる。その事例がAmazonだった。デジタル赤字の要因の一つになっている。

ここで楽天が手を上げたことで、三木谷社長は「これはコメ市場の問題に気がつき、非効率な食料市場にチャンスを見出したのか?」と感じた。

しかし三木谷さんはこのように言っている。

随意契約した備蓄米については玄米のままで販売することや、備蓄米と精米機をセットで売る可能性もあるとした。取引先に精米を依頼してから販売することも想定している。

楽天G・三木谷氏、備蓄米の随意契約に意欲 ネット販売活用(日経新聞)

わざわざ精米機まで買って古古米を好んで食べる消費者がどれだけいるだろうか。

おそらく、今のユーザーが求めているものは2つある。

既存のコメ消費者が求めているのはいつも食べているあのおコメの価格が値下がりすることだ。これは農水トライアングルの受動的攻撃を受けており実現する兆しがない。日本人は議論や自己主張は苦手だが粘着質の抵抗は極めて得意である。表面では大臣に従うふりをしてリーダーシップごっこに付き合ってやり、背後で既得権を守る。

もう一つは新規顧客の開拓だが彼らが求めているのは利便性だろう。ところが三木谷さんは今のところ「精米機も買ってもらってユーザーにやってもらおう」と考えているようだ。

三木谷社長は取引先に精米を求める可能性も示唆しているが、おそらくは楽天市場に期待されているものがよくわかっていないのではないか。

と同時に今の消費者というものがかなりわがままになっていることもわかる。お気に入りのブランド米がいつまでも安く食べられると安易に考える人と毎度まいどの食事にそこまでの手間をかけたくない人に二極化している。

ただどちらも要求水準と対価が見合っていない。これがデフレマインドだ。

お気に入りのコメに対して生産者が食べていけるだけの対価を支払おうと考える人は多くないし、付加価値としての利便性をサービス(カタカナ語のサービスは無料と言う意味だ)と考える人も対価を支払いたくない。

こうしたわがままな消費者の期待に応え続けるのはなかなか大変なのだろうという気もするが消費者の気持ちを国が無理やり変えることはできない。

このままでは精米機を買う人よりは炊飯器を捨ててしまう人のほうが多いのではないかと思う。

ただしイオンなどの流通大手が備蓄米の流通を決めたようだ。すでに流通はかなり合理化が進んでいるはずだ。彼らがどのようなブランディングでコメを売るかに期待したい。おそらく精米業者の手配は難しくないだろうから、あとは消費者をどう説得するかに流通大手の手腕が問われることになる。

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