この文章は「トランプ大統領にへつらうNATOと何も言えない日本」の要約なので新しいことは書かれていない。前の記事を読んだ人は読む必要がない。
時事通信は同盟国には異議申し立てができないと主張している。しかしながらこの卑屈な態度は却って日本を危険な状態に追いやるだろう。
日本は核兵器のような「鉄槌」は持たないが周囲に核兵器保有国に囲まれている。さらに日本国憲法は国連中心の秩序に基づいて作られている。日本は憲法を巡って長年分裂状態にあるためおそらく新しい憲法がまとまることはない。つまり日本が国益を守り抜くためには、現在の国際秩序を維持するために、同盟国に対してであっても必要な場合には異議申し立てをしなければならない。
トランプ大統領は主権国家体制を理解しておらず、予防的先制攻撃を正当化し、他国の主権プロセスに口を挟み続けている。国際法秩序に対する挑戦者といえる。
更に危険なのは予防的先制攻撃のために「鉄拳」の使用を正当化したことだ。今回使われたのはバンカーバスターだがヨーロッパや日本からの異議申し立てはなかった。
しかしながらバンカーバスターほどの精度を持たなくても核兵器を持っていれば十分だ。ウクライナやイランのように核兵器を持たない国は国体が危険にさらされるが、北朝鮮のように核兵器を持っている国は守られる。
今回の「ヒロシマ・ナガサキを持ち出した正当化」は日本人にとって悔しい限りなのだが、まずはこの感情を乗り越えてゆかなければならないのかもしれない。実際に危険なのは予防的先制攻撃の正当化と主権国家体制の相対化である。
NATOはアメリカ合衆国は世界のお父さんというレトリックを使いトランプ大統領を擁護してみせた。国連が機能不全に陥る中で「お父さんの判断」こそが世界平和を守るという理屈だ。
ところが、このお父さんはいざというときに暴力を振るう危険なお父さんであるばかりか、自分の主張に囚われてそこから外れる事実を次々と排除するという危険で頑固なお父さんであり、とても国際法秩序の代替はできそうにない。アメリカに依存している国は同調するかもしれないが、中国・南米・アフリカなどの国々は同調しないだろう。
むしろ「暴力お父さん」に対抗するためには最終兵器を持つ以外に方法がないと考える国を危険な核武装に走らせかねないという危険な動きになってる。
イランも濃縮ウランを秘匿している可能性があるが、お父さんはイランからは危険性は完全に除去されたと言う自説にこだわっている。