戦後はじめて財務金融委員長の不信任決議案が可決されたとニュースが伝えている。
このニュースからわかることを考えてみた。そもそもそんな事があったとは知らなかったと言う人もいるのではないか。
そもそも意味を深く考える国民は多くない
まずQuoraで質問してみた。案の定まともな回答はつかなかった。そんなことがあったと知らない人や意味がわからないという人が多かったのではないか。
一般有権者が国会の情勢に興味を持たず持ったとしても意味までは深く考えないということがわかる。国民の無関心ぶりが明らかになった。
「戦後初」と言う割には「だからそれが何なんだ?」という感想しか残らない。
オールド・メディアは無気力
メディアは戦後初であることと議案が審議されることになるが法律にはならないということは伝えている。しかし「儀式である」とは伝えない。
オールドメディアの政治部が政治報道に意欲をなくしていることがわかる。ちなみに本当に野党が法案を成立させたければ会期延長というオプションはある。
先日玉川徹氏の千々岩森生氏に対する公開パワハラ(と受け止められかねない発言)が話題になった。千々岩氏が会社の先輩である(とは言え退職している)玉川氏に口答えしたことが問題になった。
千々岩氏は要するに「総理大臣が言っていることが嘘だとわかっていてもお付き合いすることがある」と言っている。日々の政局を伝えてもなんの手応えもなく「オールドメディア」と叩かれるだけの存在に成り果てたテレビ局の無気力ぶりがよく伝わる認識である。
とはいえ千々岩氏も先輩に対して「単なる反体制ジャーナリスト気取りなのでは?」という気分もあったかもしれない。結局、彼らも日本の状況を変えることはできていない。
無気力化したテレビはなんの見込みもない石破総理の関税交渉になにか進展があるかもしれないというありもしない希望を振りまき続けている。
トランプ政権はアメリカ第一主義者と強硬派が分裂状態にある。混乱するトランプ大統領は日々どっちつかずの不規則発言を繰り返しておりとても日本の関税にまで頭が回っているとは考えにくい。
石破総理は「何もしていない」と言われたくないためNATOの首脳会談でトランプ大統領に会えるかもしれないと言っているが、そもそもG7を途中退席したトランプ大統領はNATO首脳会談には来ないかもしれない。ABCニュースなどはトランプ大統領が国際協調主義をどのように考えているのかについて様々な分析を行っており、日本のテレビ局も当然こうした事情は知っているだろう。
石破総理は当初イスラエルを批判する声明を出したがG7ではイスラエルの自衛権を擁護する共同声明にサインしている。本来ならば石破総理の見識を問うのがマスコミの役割だが、無気力化したメディアは「戦争はいけないことだが、G7で浮くのはイヤ」と物分かりよく理解してしまっている。いまさら事を荒立てても……ということなのだろう。
そもそも日本の国民は意識高い系のジャーナリズムを支持していないのだろうが、テレビ局には民主党的な立ち位置を踏襲してさえいれば「なんとなく形のある報道が作れる」という認識があった。アメリカ合衆国ではこうした価値観が崩壊しつつあり、従ってテレビ局も何を模倣していいかわからなくなりつつあるのかもしれない。
批判政党慣れした野党の堕落
野党もすっかり堕落してしまったことがわかる。堕落と言って悪ければ無気力化したといって良いかもしれない。
安倍政権がそれなりに安定していたため「安倍政権を批判すればそこそこの議席が取れる」という状態が続いていた。内閣不信任決議案は儀式的に乱発されていたが、実際に内閣不信任案が選挙に繋がる可能性が出てくると「政治に空白を作ってはいけないから総合的に判断する」と言い出している。
要するに逃げたのだ。
小沢一郎氏は「それでも内閣不信任案を出すべき」と言い続けており、これは却って野田佳彦代表のチキンぶりを際立たせることになる。
この代わりとして財政金融委員会の委員長が狙い撃ちにされた。解任された委員長は暴力だと言っている。石破総理を殴るのが怖いから代わりに殴られた。理不尽の極みだ。
では法案は成立するのかということになるのだが、そもそも参議院を通るはずはない。さらに「7月1日からガソリン暫定税率廃止」と書き込まれているため通常国会が予定通りに終了すれば法案は流れてしまうのだとTBSは伝えている。
野党の狙いは通常国会の最終段階に自民党は減税に後ろ向きであると示すためだけに残りの会期を使いたい。つまり単なる吊し上げ劇場を作りたいだけ。
とはいえこれが無党派層に注目されているとは考えにくい。審議が進んでも法律にはならない。単なる選挙運動におつきあいしても国民は白けるだけだ。
ばらまきにしがみつく自民党
最後に自民党が「ばらまき」に固執していることがわかった。関税交渉に行き詰ることで日本の最後の望みだった自動車・部品産業に大きな影響が出ることはわかっているが、石破政権には「交渉を途切れされない」以上の戦略はなく、自動車・部品産業に代わる新しい産業も提唱できない。
石破総裁が選出された時点で自民党は終わっていた。今後は日米同盟の基盤が解けるようになくなってゆき、自民党が終わった政党であると言う事実から目を背けるのは難しくなってゆくだろう。
ガソリン暫定税率は地方にばらまき続ける(恩恵を受ける自民党の支持基盤にしてみれば「配慮し続ける」)ための重要な財源であり決してこれを手放すことは出来ない。日経新聞によると地方に大きな打撃になるそうだ。愛知県と北海道では300億円の減収になる。自民党だけでなく立憲民主党も地方に基盤がある議員がいる。
総論すると日本の政治は「このままでは破綻することがわかっているがとはいえ変化も怖い」といった入り混じった状況下にあるということになる。