どの国にも「大本営発表」というコンセプトはあるようだ。イランがカタールの米軍基地にミサイルを撃ち込み「作戦は成功した」と発表した。実際は事前通告の後にカタールとアメリカに迎撃させており国内向けの演出だったものと見られる。事前通告してやるからわかったな、ちゃんと迎撃しろよということだ。
イスラエルやアメリカ合衆国に軍事力で勝てないイランは全面戦争を回避する傾向がある。しかしながらハメネイ体制を支えるためには増長傾向のある国内の徹底抗戦勢力をなだめる必要に迫られる。
今回の攻撃は事前に通告が行われており迎撃体制が整っていた。カタールも自衛のためにあらゆる選択肢が許容されると宣言しておりイランからのミサイルを迎撃したと発表しているようだ。
一方のイラン側は「今回の作戦は成功した」と報道している。作戦名は勝利の喜び作戦というそうだ。アメリカ合衆国にこれ以上のエスカレーションは行わないと示し「おあいこ」にしたうえで国内向けに勝利を強調する。いわゆる大本営発表になっている。
アメリカ合衆国はこれから7月4日に向けて予算案を成立させる必要がある。国内では「イランに対する戦争ではなく核兵器の開発能力を除去しただけ」と宣伝しているため地上部隊派遣を含めたこれ以上のエスカレーションは起こらない可能性が高い。
中東戦争は起こらない、ああ良かったと思いたいところだ。もちろんそうではない。
イランの核兵器開発能力は完全に除去されたわけではないとBBCは分析している。詳細は地上部隊を派遣しなければわからない。
IAEAは核施設が激しく損傷しており心配だから一度査察する必要があるとしているが、おそらくこれが受け入れられることはないだろう。イランはアメリカが核拡散防止条約に打撃を与えたと激しく非難している。濃縮されたウランの行方はわからなくなりむしろ核兵器開発の不透明度が増したと考えられている。
プーチン大統領はイランのアラグチ外務大臣と面会した。メドベージェフ氏は「いくつもの国がイランに核兵器を渡す用意がある」といっている。イランが独自に核兵器を開発しなくてもロシアがイランに核兵器を渡す可能性があるということになる。今のところロシアの協力は限定的でありイランも自分たちでなんとかすると言っている。
ハメネイ師はこれまでイランは平和利用のために核技術を使うと表明してきた。つまり核兵器開発を抑えてきた側面がある。ところが体制が不安定化すると国内の反発を抑えるためにも核兵器開発に舵を切らざるを得なくなる可能性がある。現在、イランがIAEAの査察受け入れ停止やNPT脱退が起こるかに注目が集まっている。
トランプ大統領はアメリカは体制転換を求めないとしつつもイラン国民に体制転覆をそそのかすような発言を行っており、むしろイランが核兵器を開発するように仕向けているところがある。
情報を整理する。今回のイランの攻撃は「国内向けの儀式」の色彩が強いが、それよりも数段悪い事が起こる可能性が高い。イランが核兵器を配備すれば、おそらくサウジアラビアなども核兵器の配備を求めることになるだろう。独自開発かアメリカの核の傘の提供ということだ。つまりトランプ大統領は次の永遠の戦争につながるパンドラの箱を開けてしまったということになる。