トランプ政権は南アフリカのラマポーザ大統領を呼びつけて白人虐殺の証拠を突きつけた。のちになって抗議活動のための装飾だったことがわかっているそうだがその場で勝てさえすれば嘘をついても定義を曲げてもいいという今のアメリカの風潮をよく表している。
議論のための議論はすでに国民生活に悪い影響を与えている。ホワイトハウスがロバート・ケネディJr氏主導で「慢性疾患の原因」とされるレポートを提出した。しかしお金がないために対策は行わないかもしれないと主張しているそうだ。
ノーム国土安全保障長官はありもしない憲法の定義を持ち出し陶酔気味に大統領をたたえてみせた。またトランプ大統領が突きつけた白人虐殺の証拠は文脈を無視した引用だったことがわかっている。
トランプ政権ではその場の議論に勝ちさえすれば真実などどうでもいいという風潮が蔓延している。
「意識高い系」との議論に負け続けてきた人たちが議論に勝つことに夢中になっていることがわかる。ウクライナや南アフリカの大統領との会談などでは嘲笑や軽蔑的無表情が蔓延している。これを見るたびに「意識高い系」との議論で被害者意識をつのらせていたのだろうなあという気がする。同じように「笑われている」と恥ずかしい思いをしてきた人がいるのではないか。
しかしながら、こうした議論の歪みはアメリカ合衆国の公衆衛生に深刻な懸念を生じさせている。ロバート・ケネディJr.保健福祉長官は議会公聴会において「自分から健康のアドバイスを受けないほうがいい」と主張した。つまり「信じるほうが悪い」というのだ。
そんな長官が主導する委員会が慢性疾患に関するレポートを発出している。一部に抜き出して和訳した。
Chiefly, the report blames many chronic illnesses on ultra-processed foods(超加工食品), chemicals in the environment(環境に漂う化学物質), sedentary behavior(運動不足) and over-reliance on digital devices among children(子どもたちのデジタル危機への依存). It also suggests childhood vaccines need to be studied further.
White House releases RFK Jr.-led report on chronic disease(ABC News)
その一方でお金がないから何も出来ないかもしれないなどと主張しているそうだ。正確には今のところ予算措置は講じられていないと発表している。
つまり総合すると「自分のアドバイスに従うほうが悪い」と言っている長官のいる役所が根拠不明の「原因」を流布し「原因はわかっているが、とはいえ自分たちはなんの対策も講じないかもしれない」と主張していることになる。結果的に名指しされた「原因」に責任転嫁していることになる。これを真に受けた人々は様々な抗議運動を展開するかもしれないが長官は責任を取らない。真に受けた人が悪いからである。
日本でも言論の自由について語られることがある。言論が問題解決を志向するならば言論の自由は極めて有益だ。しかし一旦議論のための議論や責任転嫁の議論に転じるとたちまち言論の自由は敵意を持って我々の社会を蝕み始める。
アメリカ合衆国の言論状況を見るとアメリカはすでに「議論のための議論」という状況に陥りつつあり、言論の自由が国民の幸福に寄与していないことがわかる。議論においてはどんな問題を解決したいのかを意識することが重要だ。
Comments
“「しらんけど」 ホワイトハウスが慢性疾患に関するレポートを発表” への2件のフィードバック
あの人達の憎悪は恥をかかされた以上の感情から来てる気はします。自分達を蔑ろにされた・自分達の価値観を全否定されたぐらいは確実に思ってるでしょう。
だからこそ相手にあの様な態度が平気で行えるんです、自分達がやられてきた事を全部…いや何倍にもして返して屈服させて我々の気持ちを分からせてやると。
その為ならどんな手段でも使うでしょうね。元々自分達の願望こそが真実で
あってほしいと思ってる所もあるでしょうし。
これについてはQuoraで意見を募ったのですがかなり多様な意見が寄せられました。確かに過去のポリティカル・コレクトネス運動の反動はあるんだろうなあという気がします。